◆俯瞰メール第2世代006号◆

ご意見、ご感想を頂けると励みになります。また読者の投稿歓迎です。約6000人に配信しています。熱心に読んで頂いている方もかなりいらっしゃいます。

                                                          3月16日 俯瞰人 松島克守

 

 

◆時候のご挨拶◆

ほんのこの前、枯葉が落ちたばかりの気がする庭木の先がほんのり赤く色づき、芽吹きの気配です。コロナ、コロナで花見、若葉、紅葉などをめでる余裕なく時が過ぎ、出口の見えない圧迫感に気がめいりましたが、今年の夏はワクチンを接種した老人組で会食が楽しめそうだと思うと、夏が早く来ないかなと勝手に楽しみにしています。

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◆目次◆
1.コロナ後の世界・社会・ビジネス

発足50日でバイデン政権は・変異型コロナで苦しむヨーロッパ

2.コロナ後の経済・企業・産業

急速に復興する兆しの世界経済・コロナ後の経済

3.Gゼロの世界の地経学

強硬路線を推し進める習近平・習近平は国内も強硬路線・周辺国連携で対抗する日米豪印

4.コロナ後の日本 どう変わる、どう変える

感染増加に転じて立ち往生の菅政権・ワクチン確保に出遅れて世界経済復旧に乗り遅れる日本

5.第82回俯瞰サロンのご案内(3/18オンライン開催)◆

新しい行政の仕組みを提案する注目のGovTech

グラファー代表取締取締役CEOの石井大地さんに聞く 、「こうすればうまくいく 行政のデジタル化」

詳細およびお申込サイト:https://fukansalon82.peatix.com

6.俯瞰の書棚

7.俯瞰人の料理あれこれ 

なんでも美味しくするパン粉

8.私感・雑感

まだコロナを政治でもてあそぶ小池百合子・二流官庁であることをさらけ出した総務省

 

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◆1.コロナ後の世界・社会・ビジネス◆

発足50日でバイデン政権は>

バイデン政権は発足して約50日ですが、かなり動きがいいですね。

まずコロナ対策で目に見える結果を出しつつあります。 200兆円にも及ぶ大盤振る舞いの経済政策の議会通過を成し遂げました。一部にはこの後始末をどうするのかという懸念もあるようですが、民主党と共和党の一般党員は歓迎しているようです。確実にアメリカ経済は活性化するでしょう。

その内容は、

1400ドルの直接給付(一部高所得層を除く)

 ・週300ドルの失業保険給付上乗せの9月までの延長

 ・新たな医療保険料補助

 ・子供に関する税額控除

 ・3600億ドルの州・地方自治体支援

です。

 

そして、ファイザー社の競争相手であるメルク社にワクチンの生産を大統領令で命令して、供給を一気に増やしました。その結果5月1日には全ての国民にワクチン接種を始め、 7月4日の独立記念日はマスクなしでBBQを楽しもうと、元気がいいです。 また7月4日はコロナウイルスからの独立記念日だとも言っています。打つ手がないと愚痴っている日本政府とは大違いです。既に3000万人を超える国民がワクチン接種を受け、感染者数も減少し、経済復活が見えてきました。経済も息を吹き返しつつあるようです。トランプ政権のワクチン開発への巨額の投資が、結果として何とか間に合ったという幸運もあります。運も力のうちです。

 

外交政策では中国との厳しい対峙を打ち出しました。中国を「最も深刻な競争相手 most serious competitor」と明確に位置付け、トランプ政権のような付け焼き刃的な対処ではなく、長期的な視点に立ち、2035年にもアメリカを追い越し世界第1位のGDP大国となると予想される中国と真剣に立ち向かうことの重要性を強調しました。中国にとっては、トランプ政権より厄介な政権かもしれません。

 

そして中国に対しては、単独ではなく同盟国と連携して中国に対抗することを宣言し、早速クワッドすなわち日米豪印の首脳会談を主宰し、インド太平洋における中国の進出に対抗する姿勢を世界に示しました。ただインドは他の参加国と異なり中国との関係は微妙なものがあるため、今回の首脳会議では中国に対する安全保障の議論はできずに、単にコロナワクチンの国際協調に議論が止まってしまいましたが。

 

この中国包囲網の構築に障害になっている日韓関係について積極的に関与する姿勢をみせ、国務長官と国防長官を日本と韓国に派遣して、云わば膝詰め談判で関係修復を迫る構えです。

もともとバイデン大統領は先の慰安婦問題に関する日韓の最終合意を仲介した経緯もあり、日韓両国とりわけ韓国はアメリカからの要求を受け入れざるを得ないため、文在寅大統領は独立記念日に意味不明な対日融和のメッセージを発していました。日本政府も何らかの動きが求められます。

 

北朝鮮については、メッセージ送っているが返事がないということですが、先のオバマ政権が「戦略的忍耐」という意味不明な融和策で、結果として核開発と大陸間弾道ミサイルの開発を許してしまった「轍(てつ)」がありますから厳しく対応するでしょう。北朝鮮に対する制裁には、ヨーロッパの国も積極的な関与を見せ、北朝鮮「瀬取り」監視に鑑定、哨戒機を派遣しています。国際的な連携による圧力の継続が重要です。

 

気候温暖化政策に対しても元国務長官のケリー上院議員を大統領特使に任命し、ケリー特使は全力を尽くすと抱負を述べています。そして、すでにヨーロッパ歴訪の行動を起こしています。11月の第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)では積極的にリーダーシップをとるでしょう。

 

この情勢で日本が認識を新たにしなくてはならない事は、アメリカはこれまで以上の実質的な軍事協力を日本に求めてくるということでしょう。繰り返して尖閣列島は日米安保の対象であると宣言していますが、日本の自衛隊が米軍と実質的な連携作戦を行うことを前提にしているはずです。バイデン大統領との対面会談の最初ということは、それだけ日本に対する期待値が高いということで、しっかり請求書が来るということです。

 

同盟国との連携で中国に対抗するという外交政策は、すでに米軍が単独で中国に軍事力で対抗できないという認識から来ていると思います。確かに軍事力の全体としては、いまだにアメリカが中国を凌駕しているとしても、ヨーロッパや中近東そして中南米にも展開していますから、東アジアに展開できる米軍の戦力は限られています。

 

アジア・西太平洋に展開する海軍艦船をめぐる米中の戦力差は、空母で1隻対3隻、ミサイル駆逐艦などの戦闘艦で12隻対108隻、潜水艦は10隻対64隻まで差が開いているといわれています。この差分をアジアの同盟国で補完する必要があります。海軍力でこの補完ができるのは日本の海上自衛隊だけです。

 

日本ではあまり知られていないかもしれませんが、海上自衛隊の戦力は核戦力をのぞけば世界第3位の海軍力です。加えて戦闘員の練度に於いては、海上自衛隊はアメリカ海軍を凌駕しているともいわれています。日本も艦艇の増強を進めていますが、さらにその増強を求められるでしょう。またすべきだと思います。空母に関しては、英国が最新鋭の空母クイーン・エリザベスを西太平洋に長期派遣すると発表していますし、フランスも空母「シャルル・ド・ゴール」をインド洋に訓練で派遣しています。ただ空母の展開という戦略は、対艦ミサイルの進歩で既に終わっているともいわれていますが。

 

バイデン氏、追加経済対策法案に署名-個人給付は今週末にも開始

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-03-11/QPTK1RDWRGG001 

バイデン大統領「7月4日までに米国をコロナから解放」…接種対象を全成人に拡大へ

https://www.yomiuri.co.jp/world/20210312-OYT1T50152/ 

バイデン氏、5月1日までにワクチン接種対象を全成人に拡大を

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-03-12/QPTVXPDWLU6A01 

「中国は最も深刻な競争相手」 バイデン大統領、同盟関係を重視

https://www.tokyo-np.co.jp/article/84216 

「日韓関係修復」の仲介に乗り出したバイデン外交

https://wedge.ismedia.jp/articles/-/22449 

米、パリ協定復帰 ケリー大統領特使「全力を尽くす」

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN19EEP0Z10C21A2000000/ 

米国が対中戦略で日本の役割拡大を期待 接近阻止に強い危機感

https://www.sankei.com/world/news/210315/wor2103150014-n1.html 

仏海軍が北朝鮮の「瀬取り」監視へ 東シナ海周辺

https://www.sankeibiz.jp/macro/news/210219/mcb2102190826003-n1.htm 

北朝鮮「瀬取り」 豪哨戒機監視へ 嘉手納拠点に来月

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/712389 

 

変異型コロナで苦しむヨーロッパ>

ヨーロッパは、変異型コロナによる感染が拡大し苦しんでいます。英国を除けばワクチン接種もなかなか進んでいません。供給量に問題があるので、ワクチンのEUからの輸出制限を6月まで延長するとしていますが、幸い日本向けはこれまで止められていないようです。

 

日本に比べるとロックダウンとか、罰金とか相当厳しい規制ですが、依然として変異型コロナが猛威をふるっています。さらにアストラジェネカのワクチンが副反応で問題があるということになり、一部の国ではその接種を中止しています。

 

当然EUの政治はガタガタになっていて、 EUのリーダーであったメルケル首相のドイツでも州レベルの選挙で与党が大敗して、リベラルな緑の党が躍進しています。リベラルというと一見進歩的なイメージがありますが、価値観が異なりますから、ドイツの政治も不安定になる可能性があります。

 

各国とも経済復興のために規制を緩和しようとしていますが、現状の感染拡大では景気回復はアメリカや中国に比べるとかなり遅れそうです。

 

英国型の変異ウイルス、イタリアやフランスで猛威

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR10DYZ0Q1A310C2000000/ 

欧州経済、変異ウイルスが脅威=ECBは金利動向注視―11日に理事会

http://www.newsdigest.de/newsde/news/news/11798-2021-03-08/ 

EU、ワクチン輸出制限を延長 6月まで

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR11C8P0R10C21A3000000/ 

メルケル与党大敗、総選挙へ痛手 独で2州議選、緑の党伸長

https://www.jiji.com/jc/article?k=2021031500179&g=int 

 

2.コロナ後の経済・企業・産業◆

<急速に復興する兆しの世界経済>

OECD21年の世界成長率見通しを5.6%と従来の4.2%から上方修正しました。中国の7.8%には及びませんが、米国は6.5%と前回予想から2倍以上に引き上げ、ユーロ圏は3.9%、日本は2.7%の見通しです。中国は目標必達の政治環境ですから、公式には6%としていますが。別情報ではインドは製造業、建設業、および金融サービスが成長に転じ、前年比12.4%の拡大が予想されるともいわれています。インドのワクチン接種は国産ワクチンを含めて急加速しています。

 

ただ大きな不確実性は今後の変異型コロナウイルスの感染拡大です。こうしてみると、コロナワクチン接種のスピードが経済回復の大きな差異として現れてきます。ワクチン確保に出遅れた日本は、確実に中国と米国そしてヨーロッパに経済回復で遅れをとることになるでしょう。     

 

<コロナ後の経済>

コロナ後の経済や産業も少し見えてきました。個人的にはGEの縮小がショックです。コアビジネスの航空機エンジン関連の航空機リース事業を売却するという発表です。航空機エンジンについては、リース事業ばかりではなくデジタルによるメンテナンスサービスでも先陣を切ってきましたが、航空産業の縮小と旧式の航空機の退役によって大きくビジネスが棄損したのでしょう。これはひとつの象徴で、既に起きていた、かつてのビックビジネスが時代の流れに沿って縮小していくことがコロナ後の世界でしょうか。

 

無制限に市場から株式を買い上げていた日銀も、このところ手控える姿勢を見せています。多くの企業で日本銀行が筆頭株主であるなど、いつまでも続くわけありません。この株式市場は多分誰も経験したことのない世界ですから全く先が見えません。

 

世界経済は21年に急回復へ、米国が主導-OECDが予想上方修正

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-03-09/QPP1Y4DWRGG301 

OECD、世界の経済成長見通し上げ 「ワクチン接種急いで」

https://jp.reuters.com/article/oecd-economic-forcast-idJPKBN2B113K 

中国鉱工業生産、1─2月は前年比+35.1% 予想上回る伸び

https://jp.reuters.com/article/china-industrial-output-idJPKBN2B706K 

全人代開幕、2021年の実質GDP成長率目標は6.0%以上に

https://www.jetro.go.jp/biznews/2021/03/63cdb79a287f20e0.html 

中国の不公正な貿易慣行に対応強化を、独産業界がEUに要請

https://jp.reuters.com/article/china-parliament-germany-industry-idJPKBN2B40CM 

GE航空機リース事業の売却、行き過ぎか

https://jp.wsj.com/articles/selling-jet-leasing-could-be-a-breakup-too-far-for-ge-11615269644 

やっぱり今のアメリカの株価は「ヤバイデン」だ

https://toyokeizai.net/articles/-/412705 

日銀ETF購入3分の1に縮小? 19日に政策修正

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGH125WX0S1A310C2000000/ 

 

◆3.Gゼロの世界の地経学◆

<強硬路線を推し進める習近平>

今やアメリカ、ヨーロッパそして日本を含めた民主主義国家は、「今日の習近平体制は、全体主義的な脅威である」という共通認識で強い警戒感と危機意識を共有しています。中国はこれを承知の上でリベラルな国際秩序に反する強硬路線を内外で進めています。特に香港の民主勢力の押さえ込みは、英国が中国に香港を返還するにあたって合意した12制度を完全に反故にする勢です。選挙制度を変え、中国共産党に反対する勢力を香港の政治から完全に排除する構えです。また人権問題で欧米から厳しい批判を浴びているウイグル族への弾圧も、国際社会の非難をものともせずに強行しています。

 

また対外的には台湾に対する圧力を強め、尖閣列島の領海侵入も頻度を増しています。特に今年は中国共産党創立100周年ということで、習近平のテンションも上がっている感じです。国内事情で弱腰とみられることを意識しているのかもしれません。

 

そしてマスク外交に続くワクチン外交で一帯一路の戦略を強く推進しています。バイデン政権の中国対抗戦略にはさらに強硬な姿勢で対抗する構えです。その中国が隣国の日本です。気を引き締めていく必要があります。

 

<習近平は国内も強硬路線>

国内でも中国共産党による独裁体制をさらに一段と強化する情勢です。

「共産党こそが中国の唯一最高の存在であり、中国共産党がコントロールしないものは何もなく、その軌道から外れているように見えるものは何であれつぶす」といった強硬な行動が目につきます。

 

特に注目すべきはアリババグループに対する強硬な弾圧です。アリババグループの金融子会社であるアントの上場を阻止し、巨額の罰金や資産売却の強要、 CEOの交代圧力など、異様とも見える強硬策です。

またアントが所有する個人信用データを、より広い活用を目指す規制当局の試みに抵抗してきたことへの報復でもあるとみられています。

 

フィンテック大手アント・グループが消費者から収集している大量の信用データを、共有させようとする当局に馬(マー)氏は長らく抵抗してきたためともいわれています。一時はアリババグループの創始者である馬氏も失踪が報じられ心配されました。馬氏が会議で、急成長分野を抑え込もうとする当局の試みは近視眼的かつ時代遅れだと非難したことが、習近平の逆鱗に触れたともいわれています。

 

このような中国共産党の民間企業への介入とコントロールの強化は結果として中国経済の成長の足かせになります。

 

“地経学とは、地政学の一分野で経済や資源の時間的、空間的そして政治的側面の研究をする学問である。”

“地政学とは地理的な環境が国家に与える政治的、軍事的、経済的な影響を巨視的な視点で研究する学問のことである。”

 

香港選挙制度変更「重大な懸念」 G7外相声明

https://www.jiji.com/jc/article?k=2021031300441&g=int 

中国 香港の選挙制度変更 民主派排除進む見通し 米英強く非難

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210312/k10012910801000.html 

バイデン政権の「対中国政策」、不満高める米国民

https://news.yahoo.co.jp/articles/22bb562f9480299b4ff1a788c341506f7ed9270b?page=1

中国独禁当局、アリババに過去最大の罰金検討-DJ

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-03-11/QPTC3YDWRGG501 

中国「アリペイ」CEOが辞任 アリババへの当局圧力影響か

https://www.sankei.com/world/news/210313/wor2103130014-n1.html 

中国、アリババグループにメディア資産の売却を要求-DJ

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-03-15/QQ0FZ2T1UM1401 

習政権が「アリババ王国」を許さぬ理由

https://www.jiji.com/jc/article?k=2021011500337&g=int 

急転する中国アントの命運、世界の投資家に「悪夢」のシナリオも

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-12-28/QM0818T1UM1101 

アント上場延期に見た中国政府の強烈な危機感

https://toyokeizai.net/articles/-/391685 

 

<周辺国連携で対抗する日米豪印>

バイデン政権は、同盟国との連携で膨張する中国に対抗する外交政策を宣言し、首脳会談を行ったカナダ、メキシコ、英国、ドイツ、フランス、日本、韓国、オーストラリアなどの首脳を「最も近い友人」と呼び、「民主的な同盟の力を再構築する」とのことです。

 

早速、日米豪印による首脳会議を主宰しました。ただ今回は、中国に対する連携した安保体制に関する声明を出す事はできずに、単に新型コロナワクチンについて、インド太平洋地域の途上国への供給などで協力していくことで合意しただけでした。

 

ただ今後、この枠組みにイギリスが参画し、さらにEUもこの列に加われば、中国にとって極めて大きな圧力となります。中国には同盟国はある意味存在しません。最近ちょろちょろと寄り添ってくるロシアもあまり力にはなりませんから。

 

日本もこのインド太平洋地域の国際連携の中で、主体的な立ち位置と行動で中国に対する安全保障体制を維持し強化していくしかありません。ただ日本とインドは、直接的な隣国という地理的な条件がありますから、そして中国の巨大な市場抜きには経済が成り立ちませんから極めて賢い判断が必要です。また日本国内には親中国派、親台湾派などの政治勢力もありますから国策の取りまとめは簡単ではありません。中国は親中国派などのチャネルを使って積極的に日本外交に影響を与えようとするでしょう。

 

このような東アジアの国際情勢の中で、アメリカにとって頭が痛いのは韓国でしょう。韓国は長い歴史の中で中国を宗主国として交流してきましたし、北朝鮮との関係もあり、中国との立ち位置と関係は特別な事情を加味しないといけない事はわかりますが、現政権は完全に北朝鮮の精神的な影響下にあり、日本を仮想敵国として空母建造するなど、バイデン政権が考えているアジア戦略の中に位置づける事は、多分出来ないでしょう。私も韓国に関してどう言及したらよいか、迷います。

 

バイデン政権の対中戦略は「同盟国重視」

https://www.news24.jp/articles/2021/03/08/10835720.html 

「中国包囲網」に温度差 日米豪印、安保色薄く

https://www.jiji.com/jc/article?k=2021031201242&g=pol 

英国が日米豪印4カ国の枠組み「クアッド」に参加の意向 英メディア報道

https://www.sankei.com/world/news/210131/wor2101310002-n1.html 

 

4.コロナ後の日本 どう変わる、どう変える◆

<感染増加に転じて立ち往生の菅政権>

日本政府のコロナ政策、これは今や世界の七不思議の1つになるでしょう。何の追加対策のないまま緊急事態宣言を延長しましたがコロナ感染は下げ止まるどころか増加に転じています。長期にわたる日本政府のダッチロールでコロナウイルスに対して日本人には「精神的な抗体」ができてしまったのでしょう。

素人判断ですが明らかに感染モデルが変化しているのでしょう。すなわち従来のコロナウイルスから英国型を始めとする変異ウイルスの感染に移行しているのでしょう。

驚いたことに「もう打つ手がない」などというとんでもない弱音が 政権内部で出たということですが呆れてものが言えません。打つべき対策は幾つも提言されていますがやっていません。特に感染の検査体制については当初から拡大が求められていましたがいまだに取れていません。変異ウイルスの拡大の予兆を捕まえて先手で対策を打たなければなりませんが、街頭で少数のサンプリングの検査をするにとどまっています。さすがに与党の自民党も変異型検査を全陽性者にと、政府に求めています。

 

<ワクチン確保に出遅れて世界経済復旧に乗り遅れる日本>

アメリカは7月には国民全員がワクチン接種を受けて、独立記念日はマスクなしでパーティーをしようとバイデン大統領は宣言しています。という事は、7月からはアメリカ経済はフル回転になるということです。中国はすでに一部で怪しいところはありますが、経済もフル回転近く、急回復しています。

 

イギリスも新型ウイルスの感染拡大で苦しんでいますが、ワクチン接種は進んでいますから、夏には経済がフル回転近くなる可能性があります。ヨーロッパはあれこれ問題があるようですが、多分秋にはワクチン接種がほぼ終わり、経済が再開され急回復することでしょう。

 

一方、日本は経済再開する状態にワクチン接種が普及するのは年末近くになる可能性があります。という事は、中国や欧米に対し半年近い経済の遅れが懸念されます。

 

経済、経済と言って専門家の忠告を無視する形でGOTOトラベルやGOTOイーツを年末に強行してきた菅首相のコロナ対策は、結果として国際的な経済回復に大きく遅れをとる結果となります。

これを含めて今後のコロナ対策、コロナ感染状況で菅内閣の命運は決まります。唯一の苦境脱出の決め手は、ワクチン接種の想定外の進捗しかありません。4月5月と選挙が続き衆議院選挙までの時間も残り僅かになりつつあります。

 

オリンピック開催?議論の切り口が思いつきません。中国ワクチンで開催強行?既に迷走状態では。

 

政府、21日で緊急事態宣言解除へ 1都3県

https://www.sankeibiz.jp/macro/news/210314/mca2103140919003-n1.htm 

「もう打つ手がない」から21日に緊急事態宣言解除 舛添要一氏「呆れるほど無責任」

https://news.yahoo.co.jp/articles/79eabd3893e963ca5813b10e886e297635028a4a 

変異ウイルス検査 13県で感染発表の1割にとどまる 理由は?

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210308/k10012903191000.html?utm_int=news-new_contents_latest_with-image 

変異型検査 全陽性者に 自民、政府に提言へ

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO69996180V10C21A3PP8000/ 

菅政権半年 衆院選へ浮沈にぎるワクチン

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODE11BFS0R10C21A3000000/ 

 

◆5.82回俯瞰サロンのご案内(オンライン開催318日)◆

新しい行政の仕組みを提案する注目のGovTech

グラファー代表取締取締役CEOの石井大地さんに聞く 、

「こうすればうまくいく 行政のデジタル化」
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新進気鋭のGov Techとして行政の業務効率化に取り組む、株式会社グラファーの代表取締役CEOの石井大地さんをお招きします。

 

コロナ禍によりDX(デジタルトランスフォーメーション)に拍車がかかり、行政・自治体も急速な変革が求められています。
グラファーは、行政の当事者を私たち市民と捉えた仕組みづくりを提案し、2017年の設立という新しい事業者でありながら、東京都、滋賀県、神戸市、鎌倉市、広島市、北九州市、品川区、豊島区など、多くの自治体にサービスを提供しています。
創立のビジョンは「テクノロジーの力で民主主義を拡張する」。自らの在り様を「スタートアップの形を取った市民運動体」と表されています。

市民の一人として、これからの行政の在り方を考え、行動する機会にしたいと思います。

また石井さんは、東大医学部から文学部に転じ、在学中に文藝賞を受賞されるという異色の経歴もお持ちです。その原動力にも触れてみたいと思います。

・株式会社グラファー:https://graffer.jp/

・講師プロフィール
東京大学医学部に進学後、文学部に転じ卒業。2011年に第48回文藝賞(河出書房新社主催)を受賞し、小説家としてプロデビュー。複数社の起業・経営、スタートアップ企業での事業立ち上げ等に関わったのち、株式会社リクルートホールディングス メディア&ソリューションSBUにて、事業戦略の策定及び国内外のテクノロジー企業への事業開発投資を手掛けたのち、2017年に株式会社グラファーを創業。

 

<記>
・日時:2021318日(木) 

18:3020:30 (開場:18:20
・参加費用:500円(税込)   

・詳細およびお申込サイト:https://fukansalon82.peatix.com

・ご参考
(FastGrow
インタビューから)
2020.7.20 https://www.fastgrow.jp/articles/graffer-ishii
未来に取り憑かれてこそ、スタートアップ。
グラファーはコロナ禍で緊急時体制を敷き、行政機能を補完する

2019.1.28 https://www.fastgrow.jp/articles/graffer-ishii-murata

ユーザーは全国民。
“GovTech”
の可能性に、元メドレー役員とインキュベイトファンド村田氏が開眼した理由

(TechCrunch Japanから)
2020.1.22 
https://jp.techcrunch.com/2019/01/21/graffer-fundraising/
面倒な行政手続きITでスマートにするグラファーが1.8億円を調達

 

◆6.俯瞰の書棚◆

今回のご紹介は、「リベラル vs. 力の政治反転する世界秩序」 ニーアル・ファーガソン、ファリード・ザカリア、酒井 泰介 東洋経済新社 2018です。

 

本書は歴史学者のニーアル・ファーガソンとジャーナリストのファリード・ザカリアのディベートの記録という特殊な書籍です。比較的短いのですぐに読めます。中身は興味深く、現在の世界を俯瞰的に認識するにはいい本だと思いますのでご一読をお勧めします。

ディベートの論題は「リベラルな国際秩序は終わったのか?」で、これに対してファーガソンは「イエス」でザカリアは「ノー」という設定です。

 

そのディベートの内容は下記の目次がいい要約になっています。これで議論の概要が把握できるでしょう。

巻末の酒井泰介の「解説」の内容がいいので、まずこれを読んでから、本文を読むといいかもしれません。

 

【討論内容】

リベラルな国際秩序は終わったのか?

リベラルな国際秩序の勝者はアメリカから中国に

グローバリゼーションの弊害をもはや見逃すことはできない

リベラルな国際秩序はやがて無秩序に陥る

ルーズベルト大統領が描いた戦後の崇高なビジョン

高度経済成長はリベラルな国際秩序の最大の果実

アメリカは1000% も成長し、寿命も延び、女性の解放も進んだ

国連や安保理は万年麻痺状態にある

中国の変貌ぶりはリベラルな国際秩序の賜物

グローバリゼーションの負の面を直視しないのは「偽の歴史」

移民、格差、ポピュリズムの問題は良き政策で解決できる

欧州の迷走はリベラルな国際秩序の機能不全を象徴している

欧州連合の成立で「戦争の恐怖」は消え去った

英国は常に欧州を嫌っている

欧州連合は中央集権的で連邦主義的な失敗した政府

若者の多くはリベラルな国際秩序を望んでいる

米国の若者はサンダースを、仏国の若者はメランションを支持

貿易の縮小、テロの増大は体制の終焉を象徴している

新興国、途上国の多くはリベラルな体制への加入を望んでいる

シリコンバレーの技術革新は世界平和に貢献していない

歴史の弧はゆっくり正義の実現へと向かっている

排外主義を唱えても現実は何も変わらない

中国の膨張、イスラムの脅威はリベラルな楽観主義が招いたもの

歴史の教訓にならえばリベラルな国際秩序は終わっている

 

【解説】

両者の議論をどう読むべきか 「リベラルな国際秩序」終焉論の背景

議論の対立軸は「中道 vs. 左右両極」

二度目のグローバリゼーションと中国 リベラル派は人類史を、反リベラル派は近代史を見ている

米中関係とリベラルな国際秩序

日本が取るべき選択とは

 

このディベートの事前の投票結果は「リベラルな国際秩序は終わったのか?」に対し「イエス」が34%「ノー」が66%でしたがディベート後は「イエス」が29%「ノー」が71%でした。

またこの議論では、「リベラルな国際秩序」と「グローバリゼーション」は同意義です。

 

「リベラルな国際秩序は終わっている」というニーアル・ファーガソンの主張は、「リベラルな国際秩序」はブレトン・ウッズ体制の時代だけで、ベトナム戦争で疲弊しドルの金本位制からの離脱を宣言したいわゆるニクソン・ショックで「リベラルな国際秩序」は終わったという認識です。

 

第2次世界大戦後の世界経済の繁栄を支えたブレトン・ウッズ体制とは、1オンス35USドルと金兌換によってアメリカのドルと各国の通貨の交換比率(為替相場)を一定に保つことによって自由貿易を発展させ、世界経済を安定させる仕組みで、この体制は1971年のニクソン・ショックまで続き、この時代はパックス・アメリカーナともいわれ、アメリカの圧倒的かつ突出した軍事力により国際秩序が維持された時代でもありました。日本も、この体制の下で戦後復興と高度成長を実現できたわけです。

 

一方のファリード・ザカリアは、「リベラルな国際秩序」とは我々が今暮らしている世界だとし、いろいろ問題があるが、このグローバリゼーションは今後も続くという立場です。そしてその将来は、若者と中国が鍵を握っているという立場です。

 

この議論の「影の主題」は、中国の台頭への対応です。台頭する中国といかに対峙するかが両者の議論の基層にあると思います。パックス・アメリカーナでアメリカは空前の繁栄と経済成長の受益者だったが、今や「リベラルな国際秩序」の勝者はアメリカから中国に移り、これをまだ続けるのかが、ニーアル・ファーガソンの主張でもあります。中国の膨張、イスラムの脅威は、リベラルな楽観主義が招いたものとも言っています。

 

そして、宥和政策でナチスの増長を許したイギリスのチェンバレン首相と同じ過ちをくり返していいのかという発言に、欧米の対中国観が垣間見えます。そして中国と距離を置くことはあっても、中国を蚊帳の外に置くことはできないというジレンマです。

 

日本については、解説記事にあるように、「主体的な判断というよりも、状況に逆らわずに安心と安全を享受する知恵としてリベラルな国際秩序に居心地の良い場所を見出していたに過ぎないとも言えます」ですから、今暮らしている「リベラルな国際秩序」の中で主体的な判断が求められています。そして突き付けられている米中対立構造の中で、欧米とは異なる立ち位置を決められるかです。どうしていいか迷うだけで済まされる状況ではありません。この難しい局面を仕切ることができる政治家が日本にいるか?

 

いわばリベラルの旗手であるEUについては、ニーアル・ファーガソンは厳しい認識です。「欧州の迷走はリベラルな国際秩序の 機能不全を象徴している」、「EUは国家のような安定性と正統性を持ちえません。英国人は、ただそれを最初に見抜いただけです」、「EUは金融危機への対処をそっくり誤り、膨大な移民問題への対応にも大失敗しました」と現状のEU全面否定です。

 

この書籍を読んでいて、改めてベトナム戦争がアメリカに与えた重い負の遺産、そして2001年の9.11テロ、2008年のリーマンショックがパックス・アメリカーナの崩壊の残照であったと再認識させられました。生まれて社会に出るまで、どっぷりとパックス・アメリカーナの世界で屈託なく希望に満ち、アメリカを目指してきた私たちの世代です。

 

これから先は、本書を読んで今自分の生きている世界を再確認してはいかがでしょうか。

 

◆7.俯瞰人の料理あれこれ◆ 

なんでも美味しくするパン粉

最近、我が家で出番が多いのは「何でも美味しくするパン粉」です。

 

パン粉とすり下ろしたパルメザンチーズと、ニンニクの顆粒、そしてハーブのみじん切りを混ぜたものです。これまでは生のニンニクのみじん切りを使っていましたが、結構これが面倒です。最近市販のニンニクの顆粒を使い始めました。これは便利です。ハーブのみじん切りは、この季節は市販の乾燥したスイートバジル、オレガノ、イタリアンパセリなどです。塩胡椒も入れてこれをよく混ぜて使います。

 

まずイワシのグリル焼きですが、これは絶品です。イワシを開いて軽く塩をしておきます。紙タオルで水分を吸い取り、このパン粉を丁寧に表面にムラなく振ります。オリーブオイルを軽く振りかけます。そしてグリルで約15分から20分焼くだけです。ともかく美味しいです。アジやサンマでも同じです。ただイワシは年中安くありますから、そしてDHAが豊富です。カジキマグロの切り身でもいけます。

 

ブロッコリーやカリフラワーをさっと電子レンジで火を通し、オーブン皿に並べてこのパン粉を振って、その上からオリーブ油を振ってグリルで15分程度いい感じに焼き色をつければできあがりです。

 

夏野菜で作るラタテューユは好物ですが、ラタテューユをオーブン皿に入れてこのパン粉をかけて、オリーブ油を振って15分程度グリルで良い感じの焼き色をつけます。美味しいです。

 

ヤリイカの胴に足を細かく刻んだのと一緒に詰めてオーブンで焼くと、これも美味しいです。

というようにこのパン粉をかけてグリルで焼くと何でもおいしい料理になります。顆粒のニンニクは最近使い始めましたが、ともかくおいしくて便利です。鶏のから揚げの衣に混ぜれば、ニンニク風味のから揚げになります。

 

◆8.私感・雑感◆

まだコロナを政治でもてあそぶ小池百合子

東京都の小池知事は酷いです。先日、変異型ウイルスの感染者数の報道がありましたが、周辺の三県は数十件あるのに対し、東京都の14 件という発表です。こんなあり得ない数字を発表するとは、小池知事には廉恥の意識が全くないのでしょう。これも変な話ですが、神奈川県の黒岩知事が小池知事の浅ましい舞台裏の言動をバラしましたが、分かったのは両人とも県民や都民の健康は二の次で、自分の「見せ方、見え方」で頭がいっぱいということでしょうか。

 

当時の数字で、黒岩知事が非常事態宣言を延長しないことを考えることも、どこを見ているのか。いつものように三県の知事を従えて、菅首相にパンチを出すという小池知事の「目論み」を反故にしたかったのでしょうか。これに対する小池知事の釈明も全く廉恥がありません、破廉恥です。「普通のこと」だそうです。ご両人とも元の職業はニュースキャスターですから「見せ方、見え方」で生きてきたのでしょう。

 

二流官庁であることをさらけ出した総務省

最近の総務省に関する接待疑惑の状況見ていると、失礼ですが、総務省はやっぱり二流官庁だなと思わざるをえません。官僚の質も、担当大臣の質もある意味、二流だったといわれても仕方がありません。たまたま通信という分野が時代のスポットライトを浴びて、結果として担当官僚や大臣もスポットライトを浴びることになったわけですが、スポットライトを浴びた結果、周辺の汚れが見えてしまったのでしょう。

 

割り勘で5,000円置いてきた、 1万円払ってきた、こんなことを国会という場でよく話せますね。

官僚と業界の非公式な情報交換は必要です。会食もいいでしょう。やり方が稚拙です。指導してあげたいとは言えませんが。とりあえず、ランチなどは割り勘しやすいのでは。

 

そして最近気になるのは、答弁に立つ官僚がすぐわかる嘘を平気でつくことです。いつからこんなことになったのでしょうか。野党の質問者のレベルも低下しています。国民は見ていますから、スキャンダルをいくら国会で追及しても、政党支持率は全く上がりません。国民は見ています。見放しています。

 

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◆俯瞰MAIL2世代006号(2021年316日)

編集:俯瞰人(松島克守)

発行:

配信:石川公子

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