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俯瞰人 松島克守
オリンピック・パラリンピックが終われば、そこはコロナ後の世界そのものです。コロナは世界を、国際社会をさらに混迷そして分断させました。見えてくるのは強引ともいえる中国のリーダーシップ、没落する西欧、悲劇的な混乱が予想される中近東、跋扈する独裁者と、あまりいい世界が浮かんできません。その辺をニュース等の情報を構造化してコロナ後を俯瞰して行きましょう.
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◆時候のご挨拶◆
梅雨が明けて夏です。今年も猛暑が始まりました。明らかに気候変動の影響でしょう。アメリカの一部の人を除けば、各地で起こる災害は気候変動が原因の一つとして認知されています。最近のドイツ大洪水もメルケル首相は明言しています。
森の中に避暑に来ました。まだ 25度くらいで肌寒い感じです。盛夏になれば27-8度にはなります。午後になるとヒグラシが2つのグループに分かれて合唱します。なんとも言えない爽やかな合唱です。これは東京ではなかなか聞けません。
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◆目次◆
1.コロナ後の世界
既に見えてきたコロナ後の世界の分断、米軍のアフガン撤兵の後、世界経済は急回復
2.中国を注視する
巨大テック企業を抑え込む中国共産党、実験進むデジタル人民元、中国のワクチン外交のほころび
3.コロナ後の日本
選択なき総選挙、オリンピックの金の流れ、次々と出てくる大企業の不正
4.第87回俯瞰サロン 8/26(木)18:30~
テーマ:スーパーコンピュータ、富岳
5.俯瞰学の体系
6.シンプルで美味しい料理
7.私感・雑感
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◆1.コロナ後の世界◆
<既に見えてきたコロナ後の世界の分断>
東南アジアやアフリカ、そして中南米はコロナ感染の拡大が急加速しています。東南アジアの大国のインドネシアはすでに医療崩壊してます。その他の東南アジアでもデルタ株の感染が猛威をふるっています。悲惨なことに、インドネシアに在住する日本人はこの感染があっても治療が受けられず、既に14名の方が亡くなったとか。清水建設は駐在員全員を特別機で日本に脱出させました。なぜか日本政府は救出の行動を起こしていません。せめて大使館でワクチン接種を、という求めにも未だ対応していません。外遊もいいが、茂木外相はジャカルタに飛び救出の指揮が取れないのか、もどかしいです。
また、東南アジアや中南米では中国製のワクチンがデルタ株に対して効果が薄いようで、接種した医療従事者も新たに感染する有様です。中国のワクチン外交もメンツを失っています。一方イスラエルでは、ファイザーのワクチンを接種済の人も感染していますが、幸い重症化のリスクに対して効果はほとんど落ちていないようです。ですから、 3回目の追加接種が各国で検討されています。
問題は、ワクチン接種が進んでいる欧米と、ワクチンの入手困難で接種が進んでいない途上国との分断が目につくことです。パンデミックですから、一部の国だけ収束する話ではありません。しかし、現実はワクチン接種によって経済の再開を進める欧米に対し、途上国は全く先の見通しが見えないでしょう。
イギリスのジョンソン首相の賭けが注目されています。今現在も感染を拡大し、 1日の感染者が4万人を超えるという水準ですが、 7月19日には基本的な規制はすべて撤廃しました。今後は個人の自覚と責任で感染を管理することになりました。むろん国内では時期尚早という意見も多数ありますが、ジョンソン首相の決心の背景はワクチン接種で先行し、感染者数は多いものの重症化して死亡する人数が極めて少数に抑え込まれていると言う現実です。いわばインフルエンザと同じ状態になっている、ということでしょうか。私はこの決断を評価しています。日本の政治家が決してできない決断です。思いつきではありません。論理もしっかりしています。
ワクチン接種が進み、経済活動が復旧する先進国と、ワクチン接種が進まずに経済活動が抑え込まれたままの途上国の矛盾を突いて、中国やロシアが国際秩序を変えるべく動いてきました。しかし両国のワクチンの信用度が急速に世界で下落しました。しかし分断の状態は継続します。本格的な世界経済の復旧にはほど遠いです。
日本は国内生産のアストラゼネカのワクチンを台湾や東南アジアに細々供与していますが、もっと大量に生産してこの期に国際社会の分断を少しでも埋め、貢献をできないかともどかしいです。
日本の感染対策についてはここでは言及しません。ほとんどドタバタの大根役者の芝居のような状況ですから。すべてはオリンピックの終了後です。
<米軍のアフガン撤兵の後>
20年に渡ってアフガニスタンに駐留して、なんとか弱体のアフガニスタン政府を支えてきたアメリカ軍も完全撤退をバイデン大統領が決断し、ほぼ完了しました。予想されたように、タリバンはその空白を埋め、既に国の80%以上を支配しているとも言われています。もともとこのアメリカ軍の撤退は、タリバンとの休戦合意という茶番から始まっています。休戦する意思がないタリバン、それが分かった上で合意という撤退への道筋をつけ、実行されたわけです。
かつては大英帝国が挫折し、そしてソ連が挫折したアフガニスタンへの軍隊の派遣ですが、アメリカも同じ轍を踏むことになりました。
この後のアフガニスタンの状況は、想像がつかないような悲劇的な状態になることは間違いありません。特に女性です。ロシアと中国はイスラム過激派の温床になっては困るので、アフガニスタン政府の支援を申し出ています。軍事的にはトルコが一部カバーするかもしれません。先は全く予想出来ません。
私が個人的に危惧したのは、ベトナムに侵攻したアメリカ軍が結局敗退して、撤退した結果、アメリカとともに北ベトナムと戦った人々は置いてきぼりになり、脱出できなかった多くのアメリカへの協力者が殺害の憂き目に遭ったことです。そしてボートピープルという形での悲惨な脱出の記憶が、今でも鮮やかに思い浮かぶからです。
そのボートピープルの一団をインドネシアは一時的に受け入れました。その一つがバタム島にあります。行きました。小さいながらも国の形を作り、留置場までありました。そこからアメリカに移住して立派にアメリカで生活を再建したようです。機会があったらぜひ行ってください。人間の強さを感動的に伝える場所です。聖地と考えてもいいと思います。今思い出しても背筋が伸びます。
米軍サイゴン脱出の最後の大統領官邸(今は博物館)にも行きました。最後のヘリコプターに人が鎖のようにぶら下がり、バラバラと落ちていく映像をニュースとして見たと思います。北ベトナムによるサイゴンの侵攻については、「サイゴンから来た妻と娘」という産経新聞記者 近藤紘一のノンフィクションに生々しく書かれています。そこにはあまり刺激的な事は書かれていません。
さすがに今回は、5万人とも言われるアメリカ軍のために働いた通訳や警備員などの人々をアメリカは見捨てることなく、アメリカに受け入れることになったようです。グアムなどに一旦空輸し、そこで入国処理を行って、アメリカの市民として受け入れるようです。ほっとしました。中国などに上から目線で人権問題を非難しているアメリカ自身の人権意識を、世界は注視しています。
<世界経済は急回復>
コロナ感染は収まっていませんが、先進国の経済は急回復しているようです。特にアメリカは爆発的に消費が伸びて、景気の過熱が真面目に議論されています。中国も世界の先頭を切って経済成長を取り戻しました。イギリスなどは労働力不足が深刻とも伝えられています。ただ、あくまでワクチン接種が一定程度進んで、重症者や死者が許容範囲に抑えこまれている一部の先進国だけです。東南アジア、中南米、アフリカではロックダウンでそれどころではありません。日本は、ここでは中進国です。なにしろ盛り上がったワクチン接種、も突然の供給不安定で勢いが止まりました。担当大臣の責任は極めて重大ですが、あまり本人の自覚が感じられません。
一部の先進国が一時的な個人消費の好景気を謳歌しても、本格的な世界経済の成長には繋がるはずはありません。先進国は身を切って途上国のワクチン接種を支援しなければ、自身の経済成長もありませんが、それができていません。ですから、先進国の間で長期にわたって抑えられてきた個人消費をビジネスとして交換する程度の世界経済が、とりあえずのコロナ後の世界でしょう。
以上は一般論ですが、インドの生情報では不動産市場は異常な活況のようです。先進国のIT企業を中心にDXの推進のためインドでオフィスを積極的に拡張しています。また在宅勤務で個人の住宅需要も増加しています。スマートフォンも売れています。今のところは債権も焦げ付いていません。インドの感染の数字は凄いですが、ワクチン接種で重症者、死者を急速に抑え込もうとしています。コロナ後の世界経済の牽引車の一つになるでしょう。
タイ・ベトナム、最大都市を封鎖 ビジネスに打撃
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGS092KT0Z00C21A7000000/
東南アで中国製ワクチンに疑いの目、欧米製追加も検討
https://jp.reuters.com/article/indonesia-thailand-vaccine-idJPKCN2EF0FD?rpc=1
コロナ感染増でも規制全面解除、英首相の「賭け」
https://www.asahi.com/international/reuters/CRWKCN2EF0A9.html
世界のコロナ感染状況
https://graphics.reuters.com/world-coronavirus-tracker-and-maps/ja/
貧しい国々へワクチン 先進国にとって最高の投資
https://www.asahi.com/articles/ASP634TS5P61UPQJ007.html
米軍アフガン撤退、不合理でも進める理由
https://jp.wsj.com/articles/u-s-exit-from-afghanistan-seems-illogical-why-its-happening-anyway-11625534665
米軍の撤退と共に壊走するアフガン軍部隊 支配地域広げるタリバン
https://news.yahoo.co.jp/articles/95091297c2107ce3127fd986c85f862dfa122744
米軍協力者の国外退避計画急ぐ、アフガン、イラクで報復の懸念
https://news.yahoo.co.jp/articles/f9e7de91b4836d23be9779effea79c407c126dcd?page=1
タリバーン、投降兵士22人を射殺か アフガン北部
https://www.cnn.co.jp/world/35173833.html
サイゴン陥落の写真
https://www.gettyimages.co.jp/%E5%86%99%E7%9C%9F/%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%82%B4%E3%83%B3%E9%99%A5%E8%90%BD
消費に飢えた米国人、世界経済回復のけん引役に
https://jp.wsj.com/articles/americans-hunger-for-the-worlds-goods-drives-global-recovery-11625041044
世界銀行、2021年の世界経済見通しを上方修正
https://www.jetro.go.jp/biznews/2021/06/6f3e57780c93aedc.html
中国、世界経済回復で6月の輸出は32%増
https://www.sankei.com/article/20210713-FWADWOIDO5NQDI2PGCW3XI6SNU/
世界の景気回復、失望もたらす公算も
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-07-18/QWGL3CDWLU6901
ポスト・コロナの世界経済はこうなる──著名エコノミスト9人が語る
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/04/9-37.php
2020 年度の税収実績60.8兆円と過去最高を更新
https://www.dlri.co.jp/report/macro/157516.html
消費税収、所得税を抜き最大 20年度、初の20兆円超
https://news.yahoo.co.jp/articles/a41e0a2e875fecc8f62c9abce21e204e568fd941
◆2.中国を注視する◆
<巨大テック企業を抑え込む中国共産党>
中国共産党によるテック企業の締め付けが異様に厳しくなりました。最初は、アリババのマー会長が、習近平に対する批判がましい発言があったということで一時消息不明になりました。そして、アリババ傘下の巨大金融企業アントンの香港上場を直前で止めました。加えて矢継ぎ早に巨大テック企業に対する規制の政策を次々と施行しつつあります。
これまでアメリカが中国押さえ込みの政策として、中国企業の米国上場の制限を厳しくしてきましたが、現在では、むしろ中国政府そのものが米国上場をさせないようなことになりました。
中国政府が巨大テック企業を強引に抑え込もうとしている最大の理由は、中国共産党が管理統率できないものは存続を許さない、ということでしょう。全てが中国共産党の管理指揮下になければ、中国共産党の独裁体制が維持できないということです。
特に中国共産党が恐怖にも似た危機を感じたのは、国内流通する通貨が管理不能になりつつあると認識したことです。巨大テック企業の電子マネーが小売りを中心とした決済としてほぼ定着し、巨大な経済圏が出来上がったことです。通貨の発行管理は世界的にも中央銀行が独占的に管理する国家権力です。それが脅かされていたわけです。
そしてその決済に紐付いた個人情報すべてを巨大テック企業が所有し、中国共産党の預かり知らぬ世界となっているという現実です。さらにこの情報が米国上場により米国の管理当局の影響下に入ることを極端に恐れたのでしょう。中国企業、国営企業の金の流れはもとより、共産党幹部の個人的な金融流通情報も米国に抜けるという恐れです。不都合な真実がさらけ出されるという恐怖でしょう。
巨大テック企業のこの電子マネーの自由な流通を制限するのと同時に、中国共産党は、人民元そのものをデジタルにし、現在の金融システムを根幹から作り替えるという野心的な金融政策を始めています。デジタル人民元の発行には様々な思惑があります。
<実験進むデジタル人民元>
中国人民銀行は、かなり以前からデジタル人民元の実証実験をいろんな形で進めてきました。来年予定されている北京オリンピックでは、全面的にデジタル人民元を流通させる意気込みです。最近その現状について白書を発表しました。
“中国人民銀行は7月16日、デジタル人民元に関する白書を公表した。6月末までに飲食店や交通機関など132万カ所で実験し、試用した金額は345億元(約5800億円)に達した”(日本経済新聞2021年7月17日)
中央銀行が発行するデジタル貨幣にはいくつかの形式がありますが、デジタル人民元は直接発行ではなく、金融機関を通しての間接発行になります。技術的にはトークン形と呼ばれるものです。そしてその特徴は、
・データ自体に現金と同等の価値があり 即時に支払いが完了する
・店舗等は即座に仕入れなど次の支払いが可能、 資金繰りの問題がなく流動性が高い
・決済システムが大幅に簡素化、決済コストが低減
です。民間金融機関がデジタル貨幣を発行するといっても、発行の残高は中央銀行が管理します。すなわち、人民元の流通の総額は中央銀行が管理するわけです。
デジタル人民元の真の狙いは、巨大化しすぎたAlipayやWeChat Payなどの力を削ぐことにあるとの見方がありますが、中国の経済圏において国外での流通を目指していて、現在の世界に基軸通貨であるドルの支配に風穴を開ける事を意図していると言う見方も以前から有力です。すなわち、現在経済制裁ということがよく言われますが、実態はドル決済をさせないことです。現在、世界中のドルはスイフトと呼ばれる決済システムで一元的に管理運営されています。これをアメリカは支配しています。
この外で人民元での決済が可能になれば、例えば経済制裁を受けているイランとの貿易、あるいはロシアとの交易がドル決済なしに可能になります。また一帯一路の国々においてもデジタル人民元による国際決済が可能になれば、現在のドル支配力は著しく弱まります。 そして、デジタル人民元が広く国内で利用されれば、現在のAlipayやWeChat Payなどの電子マネーと同じように詳細な取引データが、中国人民銀行(および中国共産党)の手に入ります。国民の消費、家計、収入、脱税など完全に一元的に管理することになり、国民支配の強力な支配システムになります。
日本人は中国の銀行に口座を開設しないといけませんから、当分使うことはできません。現在もAlipayやWeChat Payが使えず不便です。すでにクレジットカード決済しない小売店が大半ですので。
<中国のワクチン外交のほころび>
「中国ワクチン外交にブレーキ」という7月19日のBS-TBSの「報道1930」が興味深かったです。キャスターは松原耕二で、コメンテーターは何人かいましたが、東京外国語大学教授の興梠一郎氏と東洋学園大学教授の朱建栄氏の激しい論戦が時間の大半で、今まで知らなかった中国ワクチン外交の実態を識ることになりました。朱建栄氏はもともと中国よりの発言を繰り返すコメンテーターでしたが、帰国時に6か月間中国当局に拘束されて関係者は驚きました。
朱教授が、中国ワクチンは効かないといっても途上国にワクチンを5億回分提供しているのは中国だけで欧米は口約束だけではないか、という発言に興梠教授は「提供」という言葉は不適切だと反論しました。「提供というが輸出、売却しているということだ、国際的なCOVAX(コバックス)にも提供というが売却するということだ」と反論しました。朱教授は「どこも提供しないので中国は安く売却しているのだ」と反論しました。この論争で改めてわかったことは、アメリカは提供すると発表しているだけで実際にはワクチンそのものをまだ何も供与していないということです。欧米はワクチン生産国で備蓄が十分ありながらも供与は発表だけで、ワクチンは実際には供与されていないとのことです。なんと日本は台湾、ベトナムなどに実際に届けている、むろん贈与です、ということを知りました。朱教授がアメリカ批判の中でこれを指摘しました。日本の実直さが評価されるでしょう。欧米の深層心理の嫌な面を見せられました。
ただ、中国ワクチンは提供(売却)の場合でも露骨に対価を要求しているので、効果の問題と合わせて各国の中国ワクチン離れは進んでいるようです。日本はアストラゼネカの生産をしていますが、この生産量が多ければ、今本当に各国から尊敬される国になります。オリンピックの何倍もの国際的な評価です。
怖いのは中国ワクチンで抑え込んだとされている中国そのものです。東南アジアや南米のデルタ株感染の爆発的な増加を見ると、中国国内のデルタ株感染がどうなっているのかです。全く情報がありません。コロナは抑え込んだことになっていますが、同じく抑え込んだといった、ベトナムがいま爆増している現状が気になります。
中国テク企業に迫る冬の時代、規制リスク鮮明に
https://jp.wsj.com/articles/didi-and-the-big-chill-on-chinas-big-data-11625511972
中国、海外上場の規制強化 データ越境を警戒
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB06B800W1A700C2000000/
中国共産党・習近平のジャック・マー叩きがもたらす"ある誤算"
https://president.jp/articles/-/47531?page=3
中国のテック企業取り締まり、理由をめぐるもう1つの仮説
https://news.yahoo.co.jp/articles/ad04c24aa284e391309257a3e2e8898f62827366
ソラミツの宮沢和正社長に聞く 日本発のブロックチェーンで世界を変える
https://www.fukan.jp/%E4%BF%AF%E7%9E%B0%E3%82%B5%E3%83%AD%E3%83%B3/%E4%BF%AF%E7%9E%B0%E3%82%B5%E3%83%AD%E3%83%B3%E3%81%AE%E8%BB%8C%E8%B7%A1/
◆3.コロナ後の日本◆
<選択なき総選挙>
オリンピック後は総選挙です。かなりの国民のオリンピックに対する反感もあり、数々の汚職疑惑、ワクチン接種のドタバタもあり、自民党はかなり厳しい状況にあると思います。先行指標としての都議会選挙も負けました。
それにしても、国民から見ると政権交代の受け皿がまったくみえません。野党第一党の立憲民主党はオリンピック、コロナ対策でも建設的な議論が全くできずに、ただ些少なことをついて非難しているばかりです。 一時流行ったマニフェストのようなものも全く発表されていません。唯一政権構想で、共産党と組む組まないというどうでもいい議論をしてました。
現在と同じように自民党がどうしようもない状態のときに、国民は「麗わしい幻想」から民主党に政権を渡しました。そして3·11もありましたが、結果は無残な、ある意味悲劇的な結果となりました。ですから、その時の官房長官である枝野氏に信頼があるわけはありません。
本来この状況での受け皿を作るために希望の党の創立がありましたが、いつものように小池百合子氏はさっさと見限って逃げてしまいました。そして残されたのは国民民主党ですが、ほとんど存在感はありません。
アメリカの共和党と民主党の選択ということもとんでもない状態でしたが、それでも国民にある種の選択肢が与えられました。 9月の総選挙で政権交代が噂されるドイツでは、中道派の与党と革新の緑の党という明快な選択肢が用意されています。結果は連立内閣の構成にかかりますが。
なぜ日本国民には政権の選択肢がないか、これが問題ですが、これを作っているのはシニアという国民の集団でしょう。年金など結構深刻な問題がありますが、なんとなく人生をそこそこに終えたと思っている、今や無責任な集団です。自戒。
この日本の政治と状況を変えるのはミレニアム世代しかありません。もっとこの世代が発言して行動していって欲しいと思います。政治家そのものもあまりにも二世が多すぎます。現在の菅内閣にしても菅首相以外はほとんど世襲の政治家のように見えます。当然世襲の政治家は、現在の利権を維持するためには、現状の延長を考えます。人間関係でその人たちに投票しているシニア世代、諦めそしてしらけて選挙に行かないミレニアム世代、この現状を変えるべきだと思っても、主張しても行動する体力が残っていないことに愕然とします。
<オリンピックの金の流れ>
9月にはオリンピックもパラリンピックも終わります。宴の後という虚脱感が日本を覆う不可能性もあります。しかし、ここでオリンピックに関するカネの流れが問題になるでしょう。問題にすべきです。なにしろ無観客で開催したわけですから、オリンピックそのものは巨額の赤字となる事は自然です。 IOCは放送権料をもらって財務的には潤うことがあっても損失はないでしょう。ですから、巨額の赤字は結局日本国民にツケが回されます。どのようにお金が流れたのか、大きいものから、小さな利権まできちっと精査すべきです。
最後の最後にオリンピック開会式の音楽の作曲者が過去のいじめのトラブルで辞任しましたが、以前からよく知られた事実だったようですから、なぜ彼を選んだのか。初期の段階でもデザイナーの選任について極めて不適切であったことが指摘され、デザインを一からやり直すことになりましたが、その時、作曲者は決まっていなかったのでしょうか。決まっていたが頬かむりしたのか。大きな利権も出てくるでしょう。この手の追求は立憲民主党が得意ですから、きちっとやってもらいたいですね。少しは選挙にプラスになるかもしれません。文春の支援が要りますか?
ひたむきにオリンピックを走り抜けたアスリートには気の毒ですが、祝福なきオリンピックとして歴史に残ることになるでしょう。
<次々と出てくる大企業の不正>
前回の俯瞰Mailでは日立製作所の品質不正について書きましたが、結果として毎回日本企業、とりわけ伝統的な大企業の不正を書くことになってしまいました。なぜか次から次へと出てきます。
今回は、三菱電機です。 30年以上にわたって不正が行われてきたということですが、驚きません。これまでの事件もほとんどが長期にわたる不正が組織の中で共有されながら温存されてきていましたから。
決められた検査をしない、検査しなかったことが目に付かないようにコンピュータプログラムで数字を適度に散らして、らしい数字を作る、こんなことが日本の技術者の手で行われいたとは絶句というか、絶望を感じます。あえて言わせていただくと、三菱という名前を聞いて、次にやっぱり、と思ってしまうのは私の妄想ですが、長年にわたるマイナスの情報が脳の中に蓄積されて無意識に「やっぱり」を想起させてしまうのでしょう。三菱電機の社員には「廉恥」という言葉がないのでしょうか。消しゴムでこの文字を消してしまった?日本文化の源流は「恥の文化」です。「菊と刀」を学生時代に読みました。
三菱電機の不祥事については下記に一覧表がありますが、一覧表ができるほどの華々しい不正の歴史です。今回、やっと社長が辞任したということですが、この会社のガバナンスが全く効いていなかったという証左になります。
まさかESGなどとアピールしてないでしょうね。ESGのGはガバナンスです。しています!
三菱電機、止まらない不祥事「不正検査問題まとめ読み」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC103KF0Q1A710C2000000/
三菱電機の不正・不祥事一覧
https://metoree.com/articles/19254/
三菱電機SDGsへの取組
https://www.mitsubishielectric.co.jp/corporate/csr/management/sdgs/index.html
三菱電機、引き下げられた「ESG評価」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54366020U0A110C2000000/
◆4.第87回俯瞰サロン 2021年8月26日(木)18時30分~オンライン開催
理化学研究所計算科学研究センター 副センター長で、スーパーコンピュータ 富岳の副プロジェクトリーダーの佐藤三久さんにお話を伺います。
テーマ:スーパーコンピューター、富岳
お申込サイトが準備でき次第ご案内申し上げます。ご参加お待ちしております。
俯瞰サロン申込サイト(準備中): https://fukan.peatix.com/
◆5.俯瞰学の体系◆
このメールのタイトルも俯瞰Mailですが、俯瞰、俯瞰と連呼していますので、ある時「産業新潮」という雑誌に「俯瞰学とは何か」を連載しました。読んだ方は限られていると思いますから、アーカイブを含めてネットに少し修正しながら、連載の形でアップしていきます。私が考えている「俯瞰学」の不完全な体系です。ご興味あればお読みください。noteのマガジンに、俯瞰人(ProFukan)として「俯瞰学のすすめ」を掲載しています。
note:https://note.com/fukanfukan/m/m04d974919571
◆6.シンプルで美味しい料理◆
今回はインド料理のビリヤニの紹介です。肉の炊き込みご飯というか、インド風パエリアというか、そんな感じの料理です。インドで何回か食べたことがありますが、これまでかなりハードルが高い感じがしていて作ったことがありませんでした。一つの理由はインド米バスティマライスにあります。これまで入手が難しかったのですが今はネットで簡単に入手できます。Amazonで買いました。
今回はネットでたまたま簡単で失敗しないと思われるレシピが見つかったので、それで作ってみました。炊き込みご飯は、水加減と火加減は結構難しいです。とりわけ日本人にとってはアルデンテと言われても、シンのあるご飯となってしまいますから、おいしく感じられません。やはりきちっと炊き上がってないと。
下記にあるレシピはある意味画期的です。なにしろジップロックのケースに入れて電子レンジで加熱するだけです。まず600wで10分。そして解凍で8分とありますが、解凍というメニューがうちのオーブンレンジにはありません。そこでいつも解凍に使っている150w10分にしました。
詳しいレシピは、下記を見ていただくことにして簡単にまとめると。
鶏肉、生姜とニンニクのみじん切り、玉ねぎの薄切り、シシトウかピーマンの小口切りに香料を混ぜ込みます。香料はここではカイエンペッパー、コリアンダーパウダー、クミンパウダー、ターメリックパウダー、ガラムマサラです。これはすなわち、カレー粉の原料です。ですから、カレー粉でいいかもしれませんね。ポイントの1つはお米です。
下記の材料の分量は守った方がいいと思って作りました。具は適当でも。インドではラム肉だった記憶が有ります。野菜のビリヤリも多いです。ベジタリアンが多い国ですから。
・バスティマライス……150g(カップ1)
・トマト缶(カットトマトまたはあらごしタイプ)……60g
・水……220cc
・塩……小さじ2/3杯・バター……30g
レシピは本当に簡単で、バスティマライスを20分以上水につけ、トマトとバターを上に置き、具をのせます。ジップロックのふたを閉め、600wで10分加熱したら、ジップロックをひっくり返して上下逆にして150wで10分加熱しました。8分間でもいいと思いますが、芯が残るのが怖かったので10分にしました。レンジから取り出し、容器をひっくり返して元に戻して5分蒸らします。
で出来上がりです。本格的です。牛肉で作ると美味しいでしょう。インドではありえませんが。
プロ級ビリヤニをレンチンで!イナダシュンスケさんに教わる超簡単レシピ
https://www.excite.co.jp/news/article/Macaroni_102487/
◆7.私感・雑感◆
オリンピックも目前にせまりましたが、私としては、海外から来る選手、スタッフ、メディアの感染状況と行動が想定外でした。まずウガンダですが、本国で本当に検査をして来たのかという疑問すら湧きます。そして脱走とは。オリンピック会場では外国人スタッフが女性に暴行とは、外国から人を入れるということは、改めてこういう事だと認識しました。
といっても無観客試合の中でアスリートは全力を尽くして世界中の人々に感動と勇気を与えてくれること間違いありません。ここまで来たら、オリンピックをテレビで楽しみましょう。
バタバタ、ドタバタの菅政権のコロナ対策、組織委員会の混乱も想定以上の状態です。国中からブーイングを受けたコロナワクチンの供給ですが、来年度にはなんとか追加で入手すると発表がありました。できれば11月の末ないし、 遅くとも12月に国民の大半が2回目のワクチン接種を終えことができれば、日本経済はロケットのような急回復もありうると思います。確かに、観光や飲食を中心とした業界では当分厳しい状態が続きますが、日本経済ははかなり好況を呈しています。現状、よく理解しないまま景気が悪いなどと言っていてはいけません。
コロナ後は見えています。希望をもって進みましょう。