時代と同期する情報装備を

   2011年1月早々に、インテル社が新型CPUを発売開始した。新コアCPUである。私の書斎のパソコンは旧世代(Core2QuadQ9550)であるが十分高速で、不満はないがこのまま2008年の先端技術に満足していては時代に同期できない。この間、インターフェースメモリーの技術革新も著しい。ということで十数年ぶりに最先端テクノロジーを実装するパソコンを自作することにした。自作のほうが割高になるが敢えて自作したのは、最先端の部品の組み合わせが可能になるばかりでなく、その部品の選択のために、かなり技術情報を収集して理解しなければならないからである。このプロセスが重要でコンピュータに関する技術知識がバージョンアップされる。機会ある毎に言っているが、CPUという小宇宙で継続的に起きてきたイノベーションは、例える形容詞を思いつかないほど急峻である。

   今やコンピュータという言葉も稀にしか見かけなくなってしまったが、人生の時間経過とコンピュータの発展過程が、奇しくも並行していた世代であったので、その驚異的なイノベーションを体感してきた。この形容しがたい程のイノベーションの凄まじさを、数字で追ってみよう。世界最初のコンピュータは有名なENIAC であるが、世界最初のスーパーコンピュータは1976年米国ロスアラモス国立研究所に納入されたCRY-1であった(160MFLOPS )。その価格は約800万ドル言われている。その後 Cray-2が登場した(1.9GFLOPS)。このCRYは世界各地の博物館で見ることが出来る。このCRY-1を見るために核兵器で名高いローレンスリバモア国立研究所にツアーで行った。前来が円筒形で周囲に丸いベンチが付いているユニークなデザインが印象的だった。時は経ち凄まじいイノベーションの結果、現在のスパーコンピュータは2.5PFLOPSであり、ペタの世界に到達した結果、CRYより10の6乗倍速い? 因みに旧世代の書斎のCore2Quadは約45GFLOPSである。CRY-1の20倍以上の演算能力である。初代のIBM―PCに比べると約60万倍の演算速度である。この間約40年弱である。MIPSという演算性能の指標で見ると、40年で60万倍という性能進歩、これほどのイノベーションを私は知らない。

   クラウドという最近のデーターセンターはこれがなんと一箇所に何万個、何十万個連結されたものだ。まさに雲霞の如き集合体で、クラウドという命名も理解できる。しかもそれが世界中にありネットワークを形成している。そして、このイノベーションの事実を認識出来ればば,マイクロソフトやグーグルその他のITベンチャー企業の急成長に違和感はない筈だ。しかし、この間日本のIT企業は何をしていたのだろう。私も過ぎた人生の時間に、言いような無い寂寥感を感じる時もある。

   イノベーションの話が長くなってしまったが、未だ続くITのイノベーションを体感する自作パソコンの為に選び出した部品は、まず最速のCPU(i7-2600K)、そしてHDDではなくSSDと呼ばれる半導体ディスク(C300-256G)、メモリーはDDR3-8G、これを最新のチップセット搭載のマザーボード(ASUS H67-M)という部品の構成に落ち着いた。グラフィックボードはCPUに内蔵されている。実はこの高性能グラッフィクス機能のGPU内蔵がこの新コアCPUの最大の目玉である。3DTV等を意識している。これまでもインテルのCPUは、これまで半導体技術の進化、即ち集積密度を活かして、CPU周辺の半導体を次々と本体に吸収してきた。また、最新のマザーボードでは、HDD等との高速インターフェースのATA2がATA3になり、転送速度が2倍になっている。お馴染みのUSB2もUSB3になって10倍速くなっている。この結果、初期のスーパーコンピュータの数十倍の高速パソコンは、主要モジュールが4部品に集約されてしまった。これは革命だと思う。この部品をマザーボードに装着してケースに入れ、電源を入れれば、動き始める。パソコン自作は、実は単純な作業である。そしてOS(Windows7 64bit)を導入すれば出来上りで,インターネットは始められる。

   こにインターネットも無限と思われたアドレスが枯渇してしまった。という事は社会が物凄くネットワーク化された事を意味している。フェースブックの5億人の友人ネットワークがその象徴である。

   ところで、ひとつも日本製の部品が無い! いやいやボードの上にある。コンデンサーという部品は、高級なマザーボードでは日本製であることを付加価値としてアッピールしている。隠れた素材などにはまだ日本製もあるだろう。しかし主要モジュールに日本製品がないという事実を、最先端のパソコン、ITの産業構造であると認識するしか無い。実は、DVDBDを読む光学ドライブは数千円のアジアモノではなく、3倍以上する日本製(?)のパイオニア製品(BDR-S06J)を購入した。無論性能も一段上のはずだ。まだ福音音響という社名の時代からの付き合いだ。しかし、日本の電子産業は寂しいですね!

   新パソコンの結果はどうかというと、これは素晴らしい。多分、体感速度に効いているのは、機械的な可動部のあるHDDから、半導体ディスクのSSDに変えたことが大きいと思う。演算性能は動画のフォーマート変換をしてみると明らかに数倍になっている。また、今、流行り始めた、PCオーディオと呼ばれる分野のリッピング、即ち手持ちのCDやDVD-audioを電子ファイルとして読み込ませる作業、これも数倍早い。また、お世話になっているマイクロソフト社のOffice2007、これは立ち上がりが遅くていらついていたが、この際Office2010にバージョンアップした。これはキビキビ動くように改良されていた。この原稿は以上の情報処理環境で書いているが、最終的な原稿作成速度の拘束条件は自分のキータッチのスピードである事は変わらない。従って、本の原稿執筆のような大量の原稿はずっと以前から音声認識を使っている。Windowsに付属する音声認識で十分である。意外とこの機能を活用している人は少ないようであるが、このチュートリアルをやるだけで時代に同期出来るかもしれない。高価なwindows7の価格に含まれる重要な機能である。

   このパソコン自作作業で、ともかくITの知識のバージョンアップは出来た。この知識であと2-3年は時代に同期していけるだろう。

この目も眩むような情報通信技術の進歩に対して、同期出来ていない社会や企業経営そして行政、そして何よりも変化と進歩に無頓着で社会や経済を論じている指導者層、ここが日本と米国の差異である。産業を時代に少しで同期させて、日本経済を再生したい。

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コメント: 4
  • #1

    小宮山宏 (火曜日, 15 2月 2011 10:36)

    感覚だけ、少し同期できました。最後の3行は、完全にわかります。

  • #2

    小宮山宏 (火曜日, 15 2月 2011 10:42)

    追加。動きが速くなってきたのは、20世紀後半です。日本のキャッチアップは、動かない目標「坂之上の雲」を追いかけたのでしょう。動きがある中で、自分で前に進むことが身についていないのじゃないかな。

  • #3

    見學 悟 (木曜日, 17 2月 2011 10:08)

    私は、少々古く Core i7 860 w/ Win7 64bitの自作PCを 2009/11 から使っておりますが、最大の敵は「熱」です。負荷が少し上がるとアッという間に CPU が90℃をこえてしまいました。2010年の春 到来の前にThermaltake Silent 1156 というデッカイ CPU クーラーに替えて、その後夏でも 40℃前後で乗り切りました。釈迦に説法かもしれませんが、春到来の前に CPU 温度を是非ご確認下さい。
    もちろん Boot Drive は SSDで、Digital x 2 の Dual Display で仕事をしております。

    ちなみに、当社の本番ERPはAmazon EC2 で 2010/12 に稼働を始めました。クラウドを使ってみて、ソフトウェアの研修ビジネスは設備投資の軛から解放されると確信しました。会計士(事務所)・税理士(事務所)は地理的な軛から解放されます。Public Cloud, Virtual Private Cloud,,,,,

    私の次PCは、
    a) 液冷で自宅にハードウェアを持つ
    b) ネット接続の Device Interface の箱だけ自宅にあり、本体はクラウド上

    のいずれになるか微妙だと思います。

    P.S. Linux Desktop の実力にもご興味がわいて来た場合は、Native にインストールせず VMWare 上で Ubuntu をお試し下さい。MS Virtual PC は Linux には不向きです。

  • #4

    ハードディスク 交換 丸ごとガイド (土曜日, 27 4月 2013 07:29)

    記事を拝読しました。同感すべきところが有りますね。

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