一連のトヨタ関連の報道から学ぶべき多くの事があると思う。まず、あの国でビジネスをする事のリスクを改めて認識させてくれる。豊田社長の涙の会見は胸を突かれるが、日本人ならこの涙で追求の手を緩めるかもしれないが、あの国では逆になるかもしれない。弱い人間だと思えばさらに攻撃するかもしれない。そしてトヨタの受けた衝撃は、企業のリスクが顕在化したお時の破壊力を見せつけた。直下型地震そのものである。ただ、トヨタの本質的な原因はPQR(People、Quolity, Risk management)の脆弱さであると思う。グローバルに急成長しGMを越して行く時、グローバル人材が払底し、品質管理が劣化し、そしてリスク管理が脆弱なまま、成長を追いかけて行った結果、リスクが顕在化してしまったと思う。
個人的には予兆は感じていた。米国内に次々と大型車の生産工場を増設していた時代であったが、当時タイのトヨタの工場の見学をする機会があった。素晴らしい工場とその生産管理にさすがトヨタの生産と感心させられたが、今でも印象に残っているのが、そのタイの工場が生産性、品質ともに元町工場を凌駕したと言う話であった。世界各地に技術者を派遣して本国が手薄だと感じた。国内でもレクサスのリコールがあり、トヨタ品質が心配された。ある日突然日経新聞の一面に米国トヨタの経営者のセクハラ事件が報じられた。しかし、これは奇妙なほど短期間に収束してメディアから消えた。すごいロビー活動の力があると感心していた。
NewsWeek(日本版)3月3日号に「ハイチ地震の行動経済学的教訓」という小論文があった。そこで3つの教訓を上げている。第1は人間の脳は起こる可能性が低いことは理解するのが苦手だ。だから備えを怠る。第2に人は他人の災害から何も学ばない。我が家だけは大丈夫と何もしない。第3に人は災害のデータの意味を十分に理解できない。援助を待つ大勢の人々より一人の孤児の方に心が動く、と言う忠告であった。今回の貴重な事例からしっかり学ぶべきを学び、実践すべきを、実践しなければいけないと思う。
製造業の成長の限界は生産ではなくPQRである。即ちグローバルに事業を展開していくためのグローバル人材、品質管理能力とリスク管理機能が、グローバルに事業を拡大していく時の成長限界を与えると言う認識で、内なる充実を実現して、初めて次の成長が実現する。一方、外との関係である、顧客や取引先と「接触する瞬間」が業績の善し悪しを左右する。その「瞬間の自分」を如何に管理出来るかで結果が決まると考えて良いだろう。提案書や見積書の品質、調達業務のプロトコルの品質をもう一段レベルアップすれば一段上の結果が出てくると考えて良い。即ち、自己研鑽により人間力を高め、各自の仕事の品質を上げ、そして自分の仕事のリスクと会社のリスクをきちっと認識する不断の努力が、トヨタに学ぶことである。
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漆原 (木曜日, 01 4月 2010 10:12)
サイトをはじめて拝見しました。トヨタの記事に目がゆきました。時宜にかなった、しかし難しい問題を”俯瞰”的に述べる姿勢に敬意を表します。
なお、文言ミス。「一方、外との関係である、顧客や取引先と「接触する瞬間」が業績良いう結果を左右する」の「業績良いう結果」。→「業績の善し悪し、、」?