産学連携のあり方

産学連携については多くの議論がされてきたが、産学連携を実際に推進してきた経験知を基に、そのあり方について提案をする。

1.Who’s Who

産学連携の基本は産学連携を志向する産業界の人々と、大学の人々がお互いに知り合うことである。これまであまりにも産業界と大学の研究者は離れた世界で暮らしてきた。取り分け30年前の大学紛争は産学連携を大学の倫理として、悪として位置づけた。その結果この30年以上大学の研究者は産業界と密接な連携をあえて避けてきた。幸いに最近では社会及び大学の中で産学連携の重要性が認識され、その推進が強力に行われているが、最大の課題は本来連携することによって価値創造を行うべき人々が出会う機会が少ないことだろう。産学連携の推進のためには、大学との共同研究求める産業界の具体的なテーマと、研究成果を積極的に技術移転しようとする大学研究者が、出会う機会をもっともっと増やす必要がある。

2.大学側の意識改革

 企業側が産学連携によって積極的に大学の知を新事業に導入しようとする中で、依然として大学の中に産学連携に対するモヤモヤとした空気が残っている。まだ「産学連携、すなわち金もうけ、そして大学になじまない行為」、という学内の意識は積極的に産学連携を推進しようとしている研究者の障害になっている。産学連携の基本は、産業界の資金すなわちお金と、大学の知識の交換である。この本質的な構造を認めないと産学連携は推進されない。大学の研究者の評価には2つ基準があっていい。すなわち「学生の教育と学術的な成果を追求することを評価する基準」と、「学生の教育と産業界への技術移転を追求することを評価する基準」の2つである。どちらも大学にとって同等に重要な基準であることを改めて全体が認識する必要がある。

3.企業側の意識改革

 企業側ももっと積極的に大学の知財の価値を評価して、新規事業の価値あるシーズが大学の中に眠っているに違いないという気持ちで産学連携の対象を追求してほしい。科学技術の変化は近年極めて激しく、民間企業で中央研究所を設立し、長期的な基礎研究を行うことはすでにビジネスモデルとして成立しがたい。大学は産業界の中央研究所であり、大学を、産官学の新技術開発連携のプラットホームにすることが極めて重要である。

4.産学連携の出力は人材である

 更に重要なことは産学連携プロジェクトの出力を単に特許や研究レポートとせずにそのプロジェクトで育成された大学院の学生、とりわけ博士の学生こそが出力であると認識すべきである。これまでは博士課程の学生は自分の専門にこだわり柔軟性がなく使いにくい、という企業の意識があったが産学連携ではこの認識を変える必要がある。すなわちこれまでは確かに博士課程に残る学生は研究者としての教員がその後継者として選抜し、育成するモデルでもあった。しかし産学連携のプロジェクトは企業側のニーズに基づくテーマに沿って研究が進められるから、そのプロジェクトに参加し「脳に汗かいている」学生はいわば企業のオーダーメードの新戦力である。形あるや特許やレポートのような成果物以上に参加した学生の脳の中の知識こそ貴重な産学連携の成果であり、その成果を丸ごと有効活用するためには、その学生を企業の中で積極的に取り込むしかない。従って地域クラスターでも学生をプロジェクトに巻き込み、企業の新規事業の担い手とすることが重要である。

5.出会いから新規事業創出への統合モデル

 実際に産学連携を新事業創成に結び付けるには、企業と大学の出会いから、共同研究、技術移転として製品開発とマーケティングに至るプロセスを一貫して支援する新事業創出の統合モデルが重要である。産学連携機能は、さまざまな機能、すなわち研究開発やインキュベーション、資金調達、ネットワークの形成、クラスター外部とのためチャネルの強化などが1つの枠組みで推進されなければならない。産学連携を成功させるには、このような複数の機能や組織を全体最適するプログラムが必須であるである。そして大学はこのプログラムに欧米の事例のように、組織として積極的に関与すべきである.


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