◆時候のご挨拶◆
一寸先が見えない今です。といっても木の芽も膨らみ、一日一日陽が長くなります。 3月は色々閉じる月、 4月は何かを始める月、さぁ何を閉じて何を始めますか。
-------------------------
● イギリスEU離脱
● 米中貿易交渉
● 米朝首脳会談
● ロシア疑惑のモレー特別検察官報告書
● なんだか怪しい安倍政権
● 俯瞰サロン:第63回(2/27)および第64回(3/7)
● 俯瞰のクッキング“レシピのドリフト”
● 俯瞰の書棚 “縄文時代の歴史”
● 雑感・私感
-------------------------
世界が固唾を飲む下記の4つ。中国のリセッションだけが原因とは言わないが、運悪く、欧州、米国、日本、アジアともに経済が後退気味で、この4つの複合的なインパクトをだれも読めません。もうすぐ結果が出ますが、あえてここで考えてみました。
◆イギリスEU離脱◆
ホンダの英国からの撤退のインパクトで、 EU離脱の頑迷なオックスブリッジのエリート政治家は、トゥスクEU大統領がいう「地獄の特別な場所に落ちる」ことを感じたかもしれませんね。すでにフォードは撤退を表明しています。
英国のEU離脱、これは全く誰も予測できません。経済界はすでに合意なしのEU離脱を前提として動いています。メイ首相も崖っぷちで頑張っています。土俵際の打っちゃりを考えているのでしょうか。ただ、国民投票の結果を受けてEU離脱を推進するのだと言いながら、今世論調査をすれば残留が多数ということを知り、しかし再度国民投票しないという矛盾がある行動に疑問を感じます。国民に寄り添う政治家ではなく、自分の信念というか感情に固執する政治家ですね。どこの国にもいる政治家です。ポピュリストも困りますが、こんな政治家も困ります。
EU自体もかなりのインパクトを受けますから実務家レベルでは最後まで交渉が続くのでしょうが、なにしろ時間がありません。
最後の関門がアイルランド国境です。従来通りの通関手続をすることを避けるため長い間議論をしてきたわけです。そして結論がメイ首相がまとめた合意案です。
私はエンジニアですから、なぜITを使わないのかと思います。たぶん実務家レベルではその議論もされていると思いますが。 Amazonのレジのない無人店舗がすでに実用化しています。技術は既に用意されています。
輸出入の書類は電子化し、トラックは登録し、出発の物流拠点と到着の物流拠点を申請し、後はトラックのGPSと国境に設置したカメラで国境管理ができるのではないかと思います。むろん個人のような輸出入には対応できませんが、大したインパクトはありません。
合意なしのEU離脱を避けるためにとりあえず5月まで延期するという可能性もかなりあります。いずれにしても迷惑なドタバタ劇です。
英国の合意あるEU離脱、「あまり楽観できない」
https://jp.reuters.com/article/britain-eu-idJPKCN1QA1BE
EUと英国の新たな離脱合意、まとまりつつある-スペイン外相
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-02-20/PN8HUS6VDKHS01
EU大統領、英国の離脱日延期の可能性示唆 「合意なき離脱より良い」
https://mainichi.jp/articles/20190221/k00/00m/030/220000c
英国のEU離脱で日本企業は? 膨れ上がるコストの懸念
https://www.asahi.com/articles/ASM2M71VHM2MUHBI03P.html
EU大統領「英国離脱の推進者は地獄に」 英側は猛反発
https://www.asahi.com/articles/ASM272H49M27UHBI00F.html
◆米中貿易交渉◆
米中の貿易摩擦はすでに世界経済影響を与えています。運悪く欧州の景気は後退気味です。アメリカ経済もすでに成長に陰りが見えています。これまで成長を支えてきたスマホという打ち出の小槌の神通力も失われました。 iPhoneの不振の影響は想像以上です。中国の経済は2ケタ成長から5%程度の成長に移行しつつあり、米中の貿易交渉がまとまっても前の高度成長には戻る事はないと思います。
これもギリギリまで実務者同士の交渉が続いていますが、中国は貿易赤字の縮小で、なんとか米国に要求する知的財産や国有企業への補助金などの制度変更をさけるつもりのようですから、まとまらない可能性すらあります。
米国が追加の関税をかければ、中国は元を安くするというカードありますから、アメリカは交渉の前提として中国元の切り下げをしないように交渉しています。
ともかく米国の狙いは中国がアメリカを超える技術の覇者になることを防ぐことですから、簡単には譲れません。特にファーウェイの問題で、5Gの技術では完全に中国が世界のリーダーであることは世界が認めました。米国は必死で欧米各国、日本にファーウェイ排除を要請していますが、日本以外は完全にはファーウェイ排除に同調しないようです。
既にいくつかの分野で中国が先行している事を前提に、中国との付き合い方、中国の現状分析と言う俯瞰的な認識能力を磨かないといけません。ただ中国は強権的で領土拡張型の振る舞いを止めない限り、欧米も対抗する姿勢を続けざるを得ません。アメリカがドルの力で経済制裁という強権を行使するように、中国は輸入、投資という経済的な力を国際政治に持ち込んできます。ドルに対抗するためか中国は最近大量の金を購入しています。
これも期限を若干延長して延長戦に入ることになるかもしれません。
期限目前、米中貿易協議の主な対立点と見通し
https://jp.reuters.com/article/usa-trade-china-idJPKCN1Q40DJ
米が中国に人民元安定を要請、通商合意に為替組み入れへ
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-02-19/PN6SQJSYF01T01
中国、米国からの農産品輸入は年300億ドル拡大を提案へ
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-02-21/PNA41C6TTDSE01
米国と中国、貿易協定のための複数の覚書について作業
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-02-21/PN9DCS6JIJUO01
◆米朝首脳会談◆
まともな成果はないと思いますが。ただトランプ大統領の周りはほとんどポチ状態ですから、どんな手打がされるか心配です。何か成果を持って帰りたい、の一心ですから。
トランプ氏は通訳だけを入れ1対1の単独会談を指向していると報じられていますが、これが一番危ないです。深く考えることができないトラップ大統領ですから、その場限りで変なことを口にする可能性があります。前回の首脳会談でも米軍の韓国軍撤退などという、とんでもないことをポロッとしゃべった経緯がありますから。先般トルコの大統領との電話会談の中であっさりシリアからの撤退の要求をのんでしまい、議会と軍の反発を買い、結局今も撤退は完了していません。
日本としては首脳会談で拉致問題を取り上げるという言質を取りましたが、拉致問題が解決したらノーベル賞に推薦するくらいの事は言ってほしかったですね。
北朝鮮に非核化の意思があるとは誰も信じていないでしょう。少数をどこかに隠し持つことをある程度黙認する様な甘い対応が心配です。申告といっても自己申告ですから。
これも結局きちっとした結果が出ることなく、実質的に延長戦に入るのでしょうか。
韓国の文政権が南北統一という夢に前のめりで、非核化に冷静に対応できていませんのでこれがリスクです。
トランプ氏、北朝鮮制裁解除に「意味ある」措置必要=米朝首脳会談、ハノイ以降も
https://www.jiji.com/jc/article?k=2019022100183&g=int
米朝首脳、1対1の単独会談へ トランプ氏譲歩の見方も
https://www.asahi.com/articles/ASM2Q2BVYM2QUHBI006.html
◆ロシア疑惑のモレー特別検察官報告書◆
ロシア疑惑のモレー特別検察官の報告書が出ます。灰色でしょうが、内容によってはトランプ政権が民主党との確執に時間を割かれてますます内向的になれば、国際情勢もドリフトします。中国も貿易戦争で足元を見るでしょうし、欧州でのロシアとの対決でも足元を見られるでしょう。
すでにこの問題は司法判断という場外の戦いに行きそうです。
“バー米司法長官は、報告書を精査した上で、独自の報告書を議会に提出する見通しという”ということですから、民主党は黙っているわけにはいきません。全文を議会報告せよと要求するはずです。その要求の差し止めの司法判断をトランプ政権が求めれば場外乱闘です。モラー特別検察官の報告書の取り扱いでは、米国の民主主義が問われることになります。
ロシア疑惑はわからないことだらけですが、下記のwedgeの記事はまとまっていてこの問題の理解に役立ちます。
ロシア疑惑、捜査大詰め トランプ政権の命運左右
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO40821560S9A200C1FF3000/
米司法省、モラー検察官のロシア疑惑捜査終了を来週にも発表か
https://jp.reuters.com/article/usa-trump-russia-idJPKCN1Q92YN
世界中が注目する「モラー報告書」の中身
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/15128
◆なんだか怪しい安倍政権◆
安倍首相がトランプ大統領のノーベル賞推薦もしたというニュースがありますが、世界の笑い者です。コピーをお届け!まだ何も結果がでていないのに。安倍首相は外交が得意と言っていますがこの程度の外交ですか。どうしようもないですね。
統計を操作してアベノミクスを演出する官僚は頭が良いでしょうが、賢くないですね。森友学園、加計学園の忖度もそうですが、先の展開が見えているのに見ないのか、見えないのか、この辺が境目ですが。もしかしたらマティス前国防長官から「小学生程度の頭脳」と言われたトランプ大統領に寄り添うホワイトハウスのスタッフと同じように、安倍首相の頭脳に寄り添うしかできないエリート官僚の悲劇でしょうか。
憲法改正、北方領土と難しい話がありますが、このような官僚がどこまで寄り添えるのか見ものです。
米国もロシアも専制政治、日本も?この先はヨーロッパを含めて起きているポピュリズムの台頭です。トランプ大統領そのものがポピュリズムそのものです。
ワイマール憲法からナチスの台頭をもう一度勉強しなくてはいけません。
◆俯瞰サロンのご案内: 2/27&3/7◆
第63回(2/27)および第64回(3/7)のご案内です。日程・内容は予告なく変更されることがありますので、ご容赦ください。https://www.fukan.jp/俯瞰サロン/
【第63回俯瞰サロン】
東京農工大学客員教授、東京大学名誉教授の跡見順子先生にお聞きする
「運動すれば細胞レベルで若返る、 人生100はゆめではないリアルだ!」
誰もが興味を持つ、健康と長寿についてのお話です。どうやって自分の身体と付き合って身体を若く保つか、健康に関して新しい考え方をお話し頂きます。日頃運動不足の方も自己流で運動している方も必聴です。
日 時: 2019年2月27日(水)18時30分より(18時受付開始)
会 場: 品川インターシティ会議室 東京都港区港南2-15-4
参加費: 講演会のみ 1,000円/懇親会 3,000円
当日、受付にて申し受けます。
跡見順子(あとみ よりこ)先生のプロフィール:
お茶の水女子大学保健体育科を経て、東京大学大学院教育学研究科に進み、エアロビクス研究で教育学博士取得。同研究科助手をへて教養学部に転出(講師、助教授)。1994年より総合文化研究科(生命環境科学系・身体運 動科学)教授、2007年定年。東大名誉教授。サスティナビリティ連携研究機構及び東大アイソトープ総合センター特任研究員を経て、2013年から東京農工大学客員教授。放送大学非常勤講師。平成27年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞理解増進部門受賞(受賞 課題「いのちを知り生かす身心一体科学の啓発と普及」)。株式会社アルマードと卵殻膜の健康増進効果について共同研究中。2018年より日本学術会議委嘱会員。学校法人跡見学園評議員。
著書:(単著)『「細胞力」を高める〜「身心一体科学」から健康寿命を延ばす〜』、(編著)『骨格筋と運動』、『なぜなぜ宇宙と生命― 宇宙の中の生命 と人間』、(分担)『人を幸せにする目からウロコ!研究』『女性が拓くいのちのふるさと海と生きる未来』『16歳からの東大冒険講座1 記号と文化/生命』他多数。
※参加お申し込みは以下の専用サイトからお願いいたします
https://ssl.form-mailer.jp/fms/2c9e3718608136?fbclid=IwAR2LmlxSXhk2j5aPN2DmXRHqF0-JXhzSCCIWxcaiRny6GqWQ_P0cZc8zWVU
【第64回俯瞰サロン】
電動バイク"zecOO"等のデザインの根津孝太さんに聞く
「communication = creation」
講師 根津孝太さんから、「工業デザイナーとして様々なプロジェクトに参加させていただく中で、「チームメンバーとどのようなコミュニケーションができるか」ということが、創造性を大きく左右する最大の要因だと考えるようになりました。実際のプロジェクトをご紹介しながらお話をさせていただきたきます。」
https://www.znug.com/
※お申込みは以下の専用サイトからお願いいたします。
https://ssl.form-mailer.jp/fms/f5c2d79e608952
日 時: 2019年3月7日(木)18時30分より(18時受付開始)
会 場: 品川インターシティ会議室 東京都港区港南2-15-4
参加費: 講演会のみ 1,000円/懇親会 3,000円
当日、受付にて申し受けます。
根津孝太さんプロフィール:
トヨタ自動車入社、愛・地球博『i-unit』コンセプト開発リーダーなどを務める。2005年,znug design設立、多くの工業製品のコンセプト企画とデザインを手がけ、ものづくり企業の創造活動の活性化にも貢献。「町工場から世界へ」を掲げた電動バイク『zecOO』、やわらかい布製超小型モビリティ『rimOnO』などのプロジェクトを推進する一方、トヨタ自動車コンセプトカー『Camatte』『Setsuna』、ダイハツ工業『COPEN』、THEMOS ケータイマグ『JMY』『JNL』『JNR』、Afternoon Tea ランチボックス『LUNCH WARE』、タミヤミニ四駆『Astralster』『RAIKIRI』などの開発も手がける。ミラノ Salone del Mobile "Satellite"、パリ Maison et Objet 経済産業省 "JAPAN DESIGN +" など、国内外のデザインイベントで作品を発表。グッドデザイン賞、ドイツ iFデザイン賞、THE VERGE AWARDS AT CES 2019 'BEST ROBOT'、日本感性工学会 かわいい感性デザイン賞 2016 最優秀賞、JAPAN WOOD DESIGN AWARD 2016 最優秀賞(農林水産大臣賞)、JIDA MUSEUM SELECTION 2015、他受賞。2014~2016, 2018年度 グッドデザイン賞審査委員。著書『アイデアは敵の中にある』(中央公論新社)、『カーデザインは未来を描く』(PLANETS)。
-----------
◆俯瞰のクッキング “レシピのドリフト” ◆
今日は何を食べようか、と作るものを考えながら買い物に行きます。それから料理に取りかかりますがなぜかレシピがドリフトしてしまいます。ドリフトとは漂流、測定器の原点がずれるという意味ですが、料理本のレシピを読みながら頭の中で変更が湧いてきてレシピが漂流を始めます。
その日は「バスク風のタラの煮込み」を作っていました。レシピではオリーブ油でニンニクを炒めてその中に小麦粉を振り入れる、でしたが何故か頭がドリフトしてタラの切り身に塩胡椒して、粉を叩いて皮目から軽く焼いて、レシピ通り白ワインを振り、水も入れて野菜は芽キャベツを入れて、思いつきでトマトも入れて、レシピにあったバスク風の唐辛子は手元にないのでパプリカで代用です。魚に火が通ったらアサリを入れて口が開いたら塩胡椒で味を整えて出来上がりです。なぜか途中で色々な変更の思いつきが湧いてきてしまいます。この時間がいちばん楽しい料理の時間かもしれません。
その日は豚ロースの、しゃれたフランス料理に挑戦しようと思っていましたが、レシピの中にあったキュウリのピクルスがないことに気がつきました。そこで別の料理をと考えていたときに、なぜかゴーヤが目に入ってきました。豚肉とゴーヤを眺めていると、この材料で回鍋肉を作ろうと思いつきました。レシピそのものは回鍋肉そのものです。
ゴーヤはチャンプルーと同じ切り方です。少し厚めのロース肉はひと口くらいの大きさに切ります。中華鍋に湯を沸かしゴーヤをさっとゆでました。ゴーヤをザルにとって、その鍋で豚肉をゆでます。湯から取り出した豚肉には片栗粉まぶします。
酒と甜麺醤、そして、味噌のタレを用意します。中華鍋に油とネギを斜めに切ったものを入れて炒め、片栗粉のついた豚肉を戻します。だから回鍋肉。肉に油が回ったらタレを入れてからせすます。軽く炒めたらゆでたゴーヤを入れてざっくりまぜて出来上がりです。キャベツの回鍋肉とは違いますが結構いけましたよ。次は白菜、ピーマンでも。
レシピのドリフトは調味料のところでもよくおきます。レシピにはなくても塩味としてナンプラーを使いたくなります。ナンプラーの匂いは熱を加えると全くなくなり旨味のある塩味になります。ですからトムヤムクンも時々作ります。コブミカン、レモングラスは鉢で育てています。材料はエビこだわらず、貝柱とか色々試します。
トムヤムクンといえば、先日トムヤムクンの鯖缶を見つけました。鯖缶ブームですがこれも鯖缶としてはかなりドリフトしていると思いました。
◆俯瞰の書棚 “縄文時代の歴史” ◆
今回は「縄文時代の歴史」 山田康弘 講談社現代新書 2018です。
“本書は手軽に読むことのできる概説書を目指したものである。できるだけわかりやすい叙述を心がけたつもりだが、学術的にもそれなりのレベルを確保した一冊とするために、縄文時代・文化を理解する上でどうしても必要とされる考古学的な専門用語や概念、考古学独特の考え方についても本書では取り上げている。”
ということで日本語が固く論文調で読み難いですが、これを読めば今日現在の縄文の正確な知識を得られます。古代のロマンを期待しても本書は応えません。
冒頭にある10のQ&Aを読めば縄文文化とは何かということが理解できます。短く引用しておきましょう。
Q 1:縄文時代・文化とはなにか?
A 1: 縄文文化とは、日本列島域において、狩猟・採集・漁労を主な生業とし、さまざまな動植物を利用し、土器や弓矢を使い、本格的な定住生活を始めた人々が残した、日本列島各地における文化群の総称である。
Q 2:縄文時代・文化は10000年以上も続いたのか?
A 2:縄文時代は大きく次の6つの時期に区分されている。
草創期:16500年前~11500年前頃(だいたい5000年間)。縄文時代に先行する旧石器時代の文化から、 A 1 で述べたような本格的な縄文時代の文化へと次第に移り変わっていく時期である。
早期:11500年前~7000年前頃(だいたい4500年間)。この時期には気候が急激に暖かくなったため海水面が上昇し、日本列島域における沿岸部の地形や自然環境が大きく変化した。日本列島域の各地では、新しい環境に適応して次第に定住生活が始まった。食料の種類は以前よりも豊富になった。特に魚介類は、新たに食料の中に加えられたものも多く、それにより各地では 貝塚 が形成されるようになる。
Q 3:縄文時代は日本にしかないのか?
A 3: 縄文時代という時代区分は、日本の歴史という国史的観点から設定されたものであり、当然ながら日本にしか存在しない。世界史的には文字が使用されていない時代(これを先史時代と言う) のうち、多くの道具を石でつくった石器時代(青銅でつくれば青銅器時代、鉄でつくれば鉄器時代となる) は、大きく旧石器時代と新石器時代に分けることができる。縄文時代では、 石鏃(矢じり) や 石匙(万能ナイフ) などの鋭い刃物類には打製石器を用いたが、 石斧(樹木伐採用の 斧) や 石皿(堅果類をすりつぶす 臼)に磨製石器を多く使用している。その意味では、縄文時代は新石器時代に含まれる。
農耕開始以前の経済段階において、このような集落構造を持ち、多様な精神文化を育んだ文化は世界史的にも非常に稀有な存在なのである。
Q 4:縄文時代の家や集落はどんなものだったのか?
A 4: 当時の人々は、基本的には地面を掘りくぼめた 竪穴式住居の中で寝起きしていたようだ。また、発掘調査では四角形や六角形に配置された柱の痕(柱穴)しか見つからないので 掘立柱 建物跡と呼ばれるが、これも多くは地面を掘りくぼめない平地式の住居であったと考えられている。したがって、縄文時代の住居には竪穴式と平地式の二種類があったことになる。
Q 5:縄文時代の墓はどんなものだったのか?
A 5: 縄文時代の墓にはいろいろなものがあった。代表的なものは、地面を掘りくぼめただけの 土坑墓 と呼ばれるものである。また、土坑墓の墓穴の中や上に石を何個も置いた 配石墓 と呼ばれるものもある。東北地方などに見られる環状列石は、この配石墓がいくつも集まってできたものである場合が多い。この他、一度、遺体を骨にして再び埋葬を行った、複葬(再葬) 例も確認されている。
Q 6:縄文時代の人々はどんなものを食べていたのか?
A 6: 縄文時代の人々は、自然から集めることのできる食物は、何でも食べていたようだ。しかし、その量はクリやクルミ、トチ、ドングリなどの堅果類や、シカ・イノシシといった陸獣、タイ・スズキ・サケといった魚類など特定の種類のものに偏る傾向がある。このような食料をメジャー・フードと言う。また、山間部と沿岸部などのように自然環境の差によって、メジャー・フードの内容が各地で異なっていたこともわかっている。
Q 7:縄文時代に農耕はあったのか?
A 7: 最近の研究では、縄文時代にもダイズやアズキなどのマメ類がつくられていたことが明らかにされている。農耕の存在を証明するためには、耕作地点(畑) の痕跡を探し、その検討を行うことが不可欠だが、縄文時代の畑はまだ見つかっていない。したがって、現在の研究段階ではまだ作物の確定ができただけで、農耕の存在を証明できてはいない。
Q 8:縄文時代の交易はどんなものだったのか?
A 8: 縄文時代の人々は、ヒスイやコハク、 黒曜石 やアスファルトなど、産出地が限定される有用な物資を遠くにまで運んでいく遠隔地交易を行っていた。また、加工された干し貝や干し魚、塩などは内陸部の集落にも運ばれ、物資の交換が行われた。この他、石鏃や磨製石斧などの石器類、貝輪(貝製腕飾り)や土製耳飾り、そして漆器なども交易の対象となった。このような交易を行うことができた理由としては、当時すでに集落間に張り巡らされた高度な物流ネットワークが存在した。
Q 9:縄文時代の社会構造はどんなものだったのか?
A 9: 縄文時代の社会は、集落間におけるネットワークによって支えられていたが、これを新規に構築したり、維持したりするために結婚が社会制度として利用されていたようだ。結婚によって他の集団との関係を開拓ないしは維持するためには、 外婚制 を採ることが普通である。外婚制とは、結婚相手を自分の帰属する集団以外から求める婚姻制度のことを言う。また、この外婚の単位となる集団のことを出自集団と言う。結婚した一組の夫婦はそれぞれの出自集団が異なることになり、このようなカップリングが二つの出自集団を、ひいてはお互いの出身集落を結びつけていた。縄文時代の人々はこのような婚姻関係を周辺、あるいは遠隔地の集団・集落と取り結ぶことによってネットワークを張り巡らせていった。したがって、出自集団同士の関係に重きを置かないような、現代的な自由恋愛による結婚は、まずありえない。また、婚姻関係がこのような社会維持機能を備えているのであれば、一夫一妻制を基本としつつも一夫多妻制などの複婚制を採っていた方が、より多くの関係を取り結べることになるので都合がよいだろう。 人口が絶対的に少ない縄文時代においては、人材の有無が直接、集団・集落の盛衰に関わるため、結婚後に夫婦が妻と夫のどちらの集落に住むのかが非常に大きな意味を持っていた。夫方の集落に住むことを 夫方居住婚、妻方の集落に住むことを 妻方居住婚と言う。一般に夫方居住婚の場合には父系的な社会を、妻方居住婚の場合には母系的な社会を営んでいることが多い。私は、縄文時代の当初から前期くらいまでの時期には母系的な社会が存在し、これを基礎として中期以降には、父系的ないしは選択的居住婚による 双 系 的な社会が営まれていた地域もあったと考える。
Q 10:縄文時代に戦争はなかったのか?
A 10 : 縄文時代には軍隊もなければ国家もないので、質問そのものが意味をなさないことになる。しかし、「集団間における激しい争い」と定義するのであれば、東日本の中期以降のように、人口が集中し定住性の強い地域にはあった可能性がある。
以下は私のQ&Aです。
Q 11: 縄文人はどこから来たのか?
A 11: “遺伝子で系統緒をたどる手法ハプログループには、ミトコンドリアDNAハプログループ(母系)とY染色体ハプログループ(父系)による系統がある。M7a は沖縄に一番多く分布し、M7a は日本列島域に南から入り、その後次第に北上していったものであることが推定される一方、 N9b はその逆で、日本列島域には北から入り、次第に南下していったものと考えることができる。関東地方の縄文人からはさまざまなハプログループが確認できたのに対して、北海道の縄文人では大多数を N9b が占めていることが判明した。縄文人には南北二つの系統の人々がいたことになる。
いずれにせよ縄文人の起源が旧石器時代に日本列島域に渡来して来た人々までたどることができることは間違いなく、現代日本人は中国大陸の人々と縄文人の間に位置し、現代日本人が両者の混血によって成立したことがわかる。“、ということです。
Q 12: 縄文時代の気候は。
A 12:“縄文時代早期から前期における重要な環境変化は、なんと言っても温暖化とそれに伴う海進だろう。約7000~5900年前の高温ピーク時には、現在よりも2度ほど気温が高く、また海水面は2.5メートルほども高くなり、東京湾沿岸部では現在の栃木県域にまで海が入り込んでいた。これを 奥東京湾と言う。栃木県栃木市 藤岡町に所在する 篠山貝塚は、前期の関山式土器(今から約6500年前)を中心とする時期の貝塚だが、奥東京湾最奥部に位置する貝塚として知られており、現在の海岸線、たとえば 荒川 河口からは、直線距離にして約70キロメートルも離れている。また、篠山貝塚を構成する貝種には若干のカキ、アサリも確認できるが、そのほとんどは砂泥性のヤマトシジミであることから、貝塚周辺が淡水と海水の混じり合う、緩やかな流れの汽水域だったことがわかる。”
この後中期には気温が下がり海面が下がり現在の海面のあたりになったようです。なにしろの幕府を開く頃は日比谷公園は海ということですから。
長い時間をかけての変化ですが縄文時代は気象の大変化で大きく2つの時代に分かれているということです。
Q 13: 縄文時代の人口は。
A 13: 定住生活により、急激に人口が増加し、縄文早期の全人口が2万人程度であったのに対し、前期には10万人を超え、中期には24万人にも達している、との事です。これによって社会や定住形態に変化が出たようです。
“中期末から後期初頭にかけての気候変動に対して、当時の人々が採った生存戦略は、大型集落で多くの人口を維持するような生活様式を止め、一集落あたりの人口を減じて小規模な集落へと分散居住するというものだった。”
とあります。青森県の三大丸山遺跡から人が消えたのもこの理由でしょうか。
エコな生活のモデルに縄文人の生活を引き合いに出すオタクには、“縄文時代と現代を比較し、縄文時代をある種の「楽園」「ユートピア」として語ろうとする論調の中では、しばしば「極端に少ない人口」という観点が抜け落ちている。”と厳しいです。
Q 14: 縄文時代は交易が盛んであったと言われますが。
A 14: “縄文時代の経済活動は、このような集落と集落の間に張り巡らされたネットワークによって維持されていたと言っても過言ではないだろう。”
“信州系と呼ばれる黒曜石は、東北地方南部から近畿地方東部にいたる日本列島中央部ほぼ全域に運ばれており、当時の交易の広さを物語っている。”
縄文土器やその他のものに漆が使われていて広く交易が行われていたと言われていますが。かなり高度の航海技術があったようです。
Q 15: 縄文時代は平等世界?
A 15: “階層社会とは、「一つの社会がいくつかのグループに分かれており、財貨・名誉など、有形・無形の社会的財産の分け前がグループによって違う、つまり社会的な価値が不平等に分配される社会のことである。一方、階級社会とは、社会的な価値を生産するためのハードウェア(土地・原料・設備) やソフトウェア(資本・技術・イデオロギー) を管理・所有する立場の人々と、その人々にサーヴィスあるいは労働力を提供する人々とに社会が分裂し、そのあいだに支配するもの・されるものの関係が成立している社会のことである」”
“単純な平等社会ではなく、すでに社会に階層などが存在する「複雑化した社会」であった可能性は高いだろう。”
Q 16: 縄文人の精神構造は。
A 16: 墓制・祭祀・装身具等の発達から縄文人の精神文化がある程度見えてきます。
“縄文人にとっては、世の中のものが大きく男と女に区別することができ、この二つが交わることによって新たな生命が誕生し、あるいは再生されると信じていたことを表している。
“縄文時代に存在したと考えられる死生観の一つは、再生・循環の死生観である。このような死生観はアイヌなどにみることのできる「もの送り」の思想ともリンクする。この世のものはすべて、あの世とこの世を循環すると考えるこの「もの送り」の思想は、縄文時代における根本的な死生観であった。これは生命・霊が大きく円環状に回帰・循環するという意味から、円環的死生観と呼ぶことができるだろう。”
“縄文時代の後半期には、このような形で系譜的な結びつきを重要視する、祖霊崇拝という新たな思想が成立していたと見られる。
“農耕開始以前の経済段階において、このような集落構造を持ち、多様な精神文化を育んだ文化は世界史的にも非常に稀有な存在なのである。この点は注意しておいてよい。”
あえて新石器時代と呼ばないのが「国史」でしょうか。日本人は特別だと、中華思想や白人至上主義などよくある危険な思考かもしれませんね。
そして縄文時代から弥生時代とゆっくりと“時期差・地域差、さらには生業形態の差”を持って移行していきます。
“縄文時代と弥生時代の境界は、灌漑水田稲作の有無によって区分されていると言っても過言ではない。”
“この時期にいたって亀ヶ岡文化圏(青森県の高い縄文文化)の人々が何らかの理由から西日本を目指したことを示唆している。ちょうどこの頃は、西日本で水田稲作が導入され、次第に本格化していく時期にあたる。その点からみて、設楽博己教授はこの 西行 が、水田稲作の情報を求めてであった可能性を指摘している。”
かつてカリマンタン(ボルネオ)に行ったとき漁業を中心に、灌漑もない家の裏の湿地に米を栽培している人たちがいいました。売れないけど食料の足しになるということでした。縄文文化と弥生文化の中間の文化なのかと。半漁業半農業です。縄文の後期のモデルと重なります。
“現在の学説では、弥生時代には、三つの文化が内在している。一つは、弥生文化である。残りの二つは、灌漑水田稲作が定着しなかったと考えられる北海道に展開した続縄文文化であり、もう一つは南島域における貝塚文化(後期) である。”
そして、
“本書の主人公であった縄文時代の人々は、いったいどこに行ってしまったのだろうか。人類学的な見地からみた場合、縄文人は決して絶滅してしまったわけではなかった。弥生時代の人々をはじめ、後世の人々の中に吸収されていったというのが実情としては一番正しいだろう。”
我々の中にも縄文人の血と縄文文化が残っているということでしょう。下記のウィキペディアも合わせて読むと理解が深まります。日本の起源と自分のルーツをより深く認識するためにご一読をお勧めします。
ウィキペディア 縄文時代
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B8%84%E6%96%87%E6%99%82%E4%BB%A3
ハプログループ
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/c/ca/World_Map_of_Y-DNA_Haplogroups.png
◆雑感・私感◆
以上も雑感・私感ですが、出来る限り参照データを紹介しています。個人のブログは面白いですが個人的な偏りがありますから、できるだけメジャーなメディアを引用しています。
●統計不正問題はまたまた日本の中枢の不誠実な事実が露呈しました。相次だ大企業の偽装問題と問題の本質は同じで、高いと言われていた日本人の倫理観が劣化しているということでしょう。
●子ども虐待がなくならないというより、これまで隠蔽されていたことが隠蔽できなくなったということでしょうか。子ども虐待やいじめでいつも、当事者が命を救えるところでその使命を放棄しているように思えます。これも倫理観の喪失でしょうか。
●アメリカも次期大統領選挙に向けて賑やかになってきました。民主党は左派が優勢になり、トランプ大統領は自分だけが伝統的な自由主義を守ると主張するでしょう。日本にとってどちらが良いかということを冷徹に考えると、トランプ大統領の方がいいかもしれません。なぜならば民主党政権は日米同盟より中国との関係改善を推進してきましたから。
●プーチン大統領が大統領教書で、わずかですが日本との平和条約に言及したのは驚きました。日ロ平和条約に依然として強い関心を持っているということがわかりました。何を求めているのかはかりませんが。
---------------------
◆内容・記事に関するご意見・お問い合わせ/配信解除・メールアドレス変更は下記まで
webmaster@fukan.jp
---------------------
◆俯瞰MAIL86号(2019年2月23日)
発行元:一般社団法人俯瞰工学研究所
発行人:松島克守
編集長:松島克守
配信人:石川公子