◆俯瞰メルマガ第 82 号◆2018年10月4日発行

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◆俯瞰メルマガ第 82 号◆

俯瞰工学研究所の松島克守のメールマガジンです。俯瞰メール82号をお送りします。

pdf版は、俯瞰研のホームページ https://www.fukan.jp/ に掲載しています。

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◆時候のご挨拶◆

もう秋ですね。今年もあと残り3ヶ月、年々時間の流れが速くなっていきます。台風、地震と次々と起こり、つくづく日本列島は災害列島だと再認識しました。といっても特別何か対策をとっているわけではありません。幸い我が家は津波・洪水・土砂崩れのリスクはありませんが地震のリスクは避けられません。といって対策が思いつきません。

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●トランプ大統領の混乱

●貿易戦争はアメリカの勝ちか?

●ヨーロッパは軋んでいる

●リーマンショックから10年の今

●渋谷STREAMに行ってきました

●第60回俯瞰サロン(11月20日開催) 

●俯瞰のクッキング“ある日の食卓”

●俯瞰の書棚 “「遺言」養老孟司 ”

●知識の俯瞰 知的腕力を鍛える 3

●雑感・私感

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◆トランプ大統領の混乱◆

トランプ政権の混乱がますます酷くなっています。衝撃的だったのは、ホワイトハウスの高官が匿名でNYタイムズに投稿し、その中で、側近らはトランプ氏がしようとしている行動を国家の利益を守るために防ごうと懸命である、とあったことです。これにはトランプ大統領も激怒し犯人探しを指示しましたが、ホワイトハウスの高官は揃って、私ではないと声明を出しました。さらにロシアとトランプ陣営の結託疑惑などについて捜査を指揮するロッド・ローゼンスタイン司法副長官が、トランプ米大統領との会話を録音し、憲法規定にもとづく解任の可能性を検討していたという米紙ニューヨーク・タイムズの報道を受け、政権内で辞任圧力が高まっているということです。ジョン・ケリー大統領首席補佐官に対して口頭で辞意を伝えたが、受理されたかは不明とも言われ、今日現在も辞任の報道はありません。大混乱状態です。この政権に国際社会は身をゆだねています。

加えて最高裁判事の指名で大混乱です。アメリカの最高裁判事は終身制なので、その影響力は長くつづきます。したがって保守派のガバナー氏が指名されると、保守的な判断がアメリカ社会の方向を決めます。民主党は全力でこれを阻止するつもりですが、司法委員会で首の皮ひとつで承認されました。しかし共和党の良心がFBIの捜査を条件にしました。

 

国連総会での演説も散々でした。「これまでのどの政権よりもこの2年間で結果を出した」という件では議場から失笑があり、当のトランプ大統領も苦笑して予想外の反応だと言うと、議場全体が大爆笑です。ここまではともかく、いきなり中国が中間選挙に介入しようとしているという非難、イランを酷評する一方、北朝鮮を持ち上げるというTwitterの生放送のような状態でした。

 

北朝鮮については中間選挙に向かって目に見える成果としたいのか、非核化の工程表は必要ないとか、最近では金委員長と恋に落ちたとか、精神が正常状態かと疑われます。しかし周囲は全く止められません。頼りのマティス国防長官も沈黙で、最低限の防衛線を守っているのでしょう。この先まだ何が起こるかわかりません。

 

ヨーロッパは、完全にトランプ大統領を見限っています。そしてこの混乱で利するのはロシアと中国です。アメリカ抜きでロシア主導のシリア処理が進んでいます。

 

「側近らはトランプ氏の力をそごうと懸命」 匿名の高官が米紙に寄稿

http://www.afpbb.com/articles/-/3188586 

ロシア疑惑捜査の司法副長官の去就に注目 大統領解任を検討と報道され

https://www.bbc.com/japanese/45635566 

トランプ氏指名の判事が性的暴行か 女性が議会証言

https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000137179.html 

トランプ言いたい放題 国連演説で北朝鮮持ち上げ、中国、イランをこき下ろす

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/09/post-11013.php 

トランプ米大統領 自慢に失笑 国連総会で各国指導者

https://mainichi.jp/articles/20180926/k00/00e/030/220000c 

トランプ米大統領:北朝鮮の非核化計画で工程表は必要ない

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-09-27/PFQJOX6JIJUZ01 

 

◆貿易戦争はアメリカの勝ちか?◆

世界中を巻き込んだ貿易戦争も、トランプ大統領の仕掛けた混乱です。特に中国とは泥仕合状態です。お互いの輸入額を比べれば圧倒的に米国が有利ですから、トランプ大統領は圧勝だと言っていますが、そんな単純なものではないと思います。

まず中国はメンツの国ですから「頭に銃をつきつけられた状態で交渉する事は無い」と激しく反発しています。この状態で中国が妥協する可能性は少ないと思います。

 

日本もかつて厳しい日米交渉を経験しました。テレビでは、日本車を大勢で打ち壊すシーンも放映されました。結果として日本経済の構造は、輸出主導から内需主導に変換しました。その結果、今では輸出が占める割合はGDPの10%程度に落ちました。 GDPの貿易依存度は27%ですが。

 

その貿易依存度は、米国は20%で中国は33% です。この件では両国とも長期戦に持ち込む余地はあります。ちなみに韓国は67% 、ドイツは70% と貿易立国の国ですから、貿易交渉の立場は弱くなります。

 

話を戻しますと、中国は一時的に痛みを伴いますが、強力な政権基盤と十分賢い経済官僚がいますから、すでに着々と内需振興の政策をとっています。まず個人所得税の5兆円の減税です。消費を押し上げます。国内企業向けには輸入関税の引き下げです。消費者と企業のコストを軽減するためです。

 

加えて自動車を例にとると、アメリカはすでに市場が飽和しています。すなわち国民2人に1台という先進国の飽和点に達しています。むろん日本もドイツもその他先進国もこの飽和点に達しています。一方、中国はまだ新規市場が残されています。内需拡大の余地が大きいと思います。セメントの投入量で見ると、インフラについては、すでに中国も飽和点に近づいていると言われていますが。

 

中国がルールに基づいたグローバル経済を標榜し、アメリカが一国主義を主張するとは、かつては考えられないことでした。この貿易戦争の影響で急速に日中関係が改善されています。日中の経済とアジアの経済を合わせれば、アメリカを凌駕します。時代は変わったという認識を、トランプ大統領は持てないでしょうが。

 

中国が報復関税を発表 米政権の第3弾に対抗

https://www.cnn.co.jp/business/35125798.html

トランプの対中制裁関税第3弾、「負のブーメラン」が本丸の自動車へ

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/09/3-116.php 

世界の貿易依存度 国別ランキング・推移

https://www.globalnote.jp/post-1614.html 

中国 5兆円減税で経済守る

http://www.tv-tokyo.co.jp/mv/wb個人所得税のs/news/post_163604 

中国、11月から一部品目の輸入関税引き下げ-機械や建材など

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-09-26/PFNU846JTSE801 

 

◆ヨーロッパは軋んでいる◆

今、ヨーロッパは軋んでいます。まず土壇場に迫ったブレグジットです。イギリスのメイ首相が最後の選択としてEUとの経済関係を維持しながらブレグジットをするという提案に対しEU首脳は拒否し、与党保守党でも反対の声が上がっています。メイ首相の「 EUは英国をリスペクトすべき、対案を出せ」は、その決心の強さを如実に示していると思います。しかし、すでに「合意なし」のブレグジットの議論が声高になってきています。その場合英国の企業と国民の受ける衝撃はかなり大きいでしょう。その大きさについても評価が進んでいるようです。 EUと英国の間に通常の関税が掛けられると、経済は大混乱でしょう。英国にはトヨタ、日産、ホンダの生産拠点がありますから、関連企業含めて相当なインパクトが出ると思います。

 

これに関しては英国国内に深刻な亀裂があります。その主張は国境の管理と法律の制定をEUに従うのではなく、独自にする権利を取り戻す、という感情的な主張です。保守党のエリート層は、かつての大英帝国の栄光を取り戻すような高揚した気分かもしれませんが「重要な点は、英国はもはやかつての大英帝国ではないということだ。小国となった英国の国内総生産(GDP)が世界全体に占める割合は、3%にも満たない。世紀の終わりまでには、1%程度にまで減少するだろう 」 (Forbes)ということなので、EUはどのような形であってもブレグジットの影響は軽妙と考えています。もし英国に対し甘い対応をすれば、 EU離脱に続く国が出てEUそのものの根幹を揺らしますから、決して妥協することはないでしょう。

 

この深刻な国内の亀裂に対し、ロンドン市長や労働党は再度国民投票をするという提案をしています。国民投票に始まったこの議論を再度国民投票にはかるというのは、理にかなった話でもあり、最後に自爆的にメイ首相が決断するかもしれませんね。メイ首相のインタビューを見ていると、国を救うのは自分の使命であるという覚悟が、ひしひしと伝わってきます。彼女も「鉄の女」でしょうか。

 

ブレグジット以外にも、ヨーロッパは大きな亀裂が入っています。その一つは移民と難民です。各国でポピュリズムが台頭していますが、基本的には移民の受け入れ反対という国民の感情的な部分に入り込む極右勢力が無視できなくなりました。これまで移民と難民を受け入れてきたスウェーデンでも反対勢力が力を増しています。イタリアの新政権は断固として難民の上陸を阻止しています。

 

積極的に移民を受け入れて、経済成長の労働力として活用しようというメルケル首相の戦略も、国民から強い反対を受けて後退を余儀なくされています。かろうじて政権を取ったメルケル首相ですが、求心力の低下は目を覆うばかりです。国会運営の要の院内総務の人事も失いました。それでも深刻な人手不足に直面しているドイツ経済を直視して「今後も海外の人材を頼りにすることに変わりはない」、「人材確保ができないという理由で企業がこの国を離れることがあってはならない」、「多くの起業家は、減税措置を受けられるかどうかよりも、熟練労働者を雇えるかどうかを懸念している」と、首相は新移民法案を提案しています。 この分断は「事実」と「論理という感情」の乖離です。政治家は得てして後者に流れますが、さすがメルケル首相は「鉄の女です」 。ただ13年の任期は飽きられますね。

 

もう一つのヨーロッパの軋みは反民主主義です。 旧東欧諸国のポーランドやハンガリーで表現の自由や人権保護、司法の独立などのEUの基本的価値を否定する専制的な政権がEUの存続を危機にさらしています。東欧諸国は移民と難民の受け入れ政策も拒否してEUと対立しています。この問題は労働力不足に悩むドイツとは格差がありますから、当然とも言えます。これをごり押しすれば、ヨーロッパは軋みます。冷戦終了後積極的にEU に受け入れた旧東欧諸国が、EU 先進国に付いていけないのは当然です。もともとEU はドイツとフランス、イタリアという西欧で、東欧とは文化と社会も違います。加えて長い社会主義経済の時代があり、社会の基層にそれが残っているでしょう。

 

「西欧」とは、現在の繁栄をもたらした民主主義による資本主義を生み出した文明です。日本もこれを目指して今日まできました。「西欧」というという社会の安定は日本にとっても重要だと思います。とりわけ現状のトランプ大統領による混乱の世界では基軸として重要です。

 

薄氷の交渉、忍び寄る「合意なし」のブレグジット

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54207 

ロンドン市長、2度目のブレグジット国民投票求める 政府の「混沌」懸念

https://www.bbc.com/japanese/45545648 

イギリス「離脱強硬派」が怒りを隠さない理由

https://toyokeizai.net/articles/-/239452?page=7 

合意なきブレグジット、独労働市場への影響は限定的─政府=独誌

https://jp.rEUters.com/article/britain-EU-germany-idJPKCN1M40AQ 

英EU離脱まで半年 車産業、部品調達に支障の恐れ

https://www.sankeibiz.jp/macro/news/181001/mcb1810010500009-n1.htm 

メイ英首相はチャーチルに学べ? ブレグジットに望まれる方針転換

https://forbesjapan.com/articles/detail/23127 

ドイツ メルケル政権支えた重鎮が院内総務に再選されず

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180926/k10011645341000.html 

ドイツの新移民法、メルケル首相の「大きな賭け」

https://jp.rEUters.com/article/germany-economy-immigration-law-idJPKCN1M503K 

ドイツ東部で極右デモ激化 移民めぐる緊張浮き彫り メルケル首相決断から3年

https://www.sankei.com/world/news/180902/wor1809020026-n1.html 

イタリア、移民・難民の許可を厳格化へ 受け入れが大幅に減る可能性

https://www.huffingtonpost.jp/2018/09/24/italy-immigrants_a_23540764/ 

スウェーデン総選挙、中道2派が拮抗 右派が躍進

https://www.bbc.com/japanese/45468420 

EU、ポーランド提訴、ハンガリーにも制裁手続き

https://www.sankei.com/world/news/180925/wor1809250027-n1.html 

 

◆リーマンショックから10年の今◆

リーマンショックから10年ということで、たくさんの特集や振り返りがあります。この領域は全くの素人ですが、まさにマグニチュード10くらいのインパクトを世界経済に与えたと思います。大学の授業で有価証券報告書の分析をする時、必ずリーマン前から10年の数字を分析してもらっています。鋭くV字状に落ちこんだグラフは、企業が被った大災害を示しています。多くの指標がリーマンショック前を上回る現状でも改めてこの機会に「勝って甲の緒を締めよ」ということが必要だと思い、色々な識者の解説を読んでみました。

 

まず、なぜリーマンショックが起きたのか、潰してはいけないリーマンブラザーズを潰してしまった、ということが言われています。ただ当時の金融政策の責任者も知識が及ばなかったということです。

 

教訓としてはリーマンブラザーズの元会長ピーター・コーエン氏のインタビュー(NHK)が興味深いです。「電話に出るのが怖かったよ。どんな悪いニュースか考えるだけでぞっとした」、リーマン破綻時の CEOリチャード・ファルド氏について「当時のCEOのファルドは今も友人だ」としたうえで、「危機の最中よく電話で相談を受けたが、彼は何が起きているか十分に把握していなかった。巨大金融機関は地下のパイプで結ばれるように世界中でつながっている。FRB(連邦準備制度理事会)も、その規模がどれだけ巨大なものか認識していなかった」と、「経験から学んだことだが、会社は大きくなると制御できなくなる。会社に経営者が振り回されてしまう」とも語っています。

 

破綻当時のリーマンブラザーズのエコノミストだったイーサン・ハリス氏は、「金融市場では理解できないことがたくさん起きていた。複雑な金融商品がすごいスピードで拡散されていった」と振り返りました。そして「(危機が起きて初めて)こうした商品が経済にリスクを及ぼすことをようやく理解した」、そして教訓として「もし『複雑なもの』があれば、それは想像以上に危険性が高いかもしれない。物事の変化を見る時は、何が起きているか注意深く見つめる必要がある」と語っています。

 

同じNHKのインタビューでティモシー・ガイトナー元財務長官は「われわれは、ほかの金融機関によるリーマン買収を支援するつもりだった。しかしリーマンは手に負えないほど弱っており、買い手はつかなかった」と、「危機は最初の段階ではいつも霧に包まれていて、どれぐらい悪化するか分からない」と、「重大な危機は長い期間をおいて発生する」と言います。「その間に知識は失われていき、記憶も薄れていく。何がリスクか、なぜパニックが危険なのか、多くの人に理解してほしい。一般的なビジネスマンや普通の家庭にも危険が及ぶということを分かってほしい」 、そして「金融機関の安易な救済はすべきでない」という世論の反発を受けて法律改正が行われ、FRBは迅速にお金を貸すことが難しくなってしまったことに対して「危機は急に起きるため、対応が遅れてしまう危険性がある。大きな危機の際には、国が権限を持つことが重要だ」と語っています。今はエール大学で教鞭をとり次世代に経験知を伝えているとの事です。

 

そして10年の今、その教訓は生かされているかというと疑問のようです。ともかく各国の中央銀行のバランスシートは5倍に膨れ上がり、リーマンショック前の状態に戻ることが難しい、そして日本の「異次元の金融緩和」はアメリカヨーロッパの利上げに追従することなく続いています。巨大な債務とゼロ金利の中で景気後退が起これば日本政府はどんな手を打つのでしょうか。素人ですが心配です。日本発の経済危機という話も出てくるでしょう。野村総研の「次の金融危機はリーマンショックとどう違う?」も勉強になります。

 

【年表】リーマンショック10年

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/09/10-50.php 

リーマン・ショックから10年 ――最後の息の根を止めたのは

http://blogos.com/article/327982/ 

リーマン破綻から10年で世界は変わったのか

https://toyokeizai.net/articles/-/237706?page=6 

リーマンショック10年 ウォール街の教訓

http://www.nhk.or.jp/ohayou/biz/20180913/index.html 

リーマンショック10年 元財務長官のメッセージ

http://www.nhk.or.jp/ohayou/biz/20180914/index.html 

【図解・国際】リーマン破綻10年・世界の債務残高(2018年9月)

https://www.jiji.com/jc/graphics?p=ve_int_america20180914j-05-w420 

危機対応の金融緩和からの脱却、容易な道のりでない-OECD

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-09-03/PEI6566TTDS301 

次の金融危機はリーマンショックとどう違う?

http://fis.nri.co.jp/ja-JP/knowledge/commentary/2018/20180912.html 

日銀「異次元の金融緩和」に出口、未だ見えず

http://www.medical-confidential.com/2018/09/03/post-8084/ 

 

◆渋谷STREAMに行ってきました◆

渋谷の東横線の駅が地下に移動した後の再開発は完成しました。渋谷STREAMです。ホテルを含めて全体を見学できました。オフィス、ホテル、レストラン街そしてイベント会場からなる複合施設です。加えて今までは国道246で分断されていたバスターミナルと一体化が進んでいます。

 

地下鉄銀座線の駅もヒカリエのほうに移動します。あのクチャクチャなエリアがすっきりと一体化するようです。 18歳から渋谷を拠点にしてきた私としては、やっと都市として完成することを見ることができます。

 

オフィス棟はグーグルの日本法人が全館5,000人分を賃貸しました。たしか現在の従業員は2,000人程度だと思いますが、今後の意気込みが感じられます。オフィスの中は見ることができませんでした。なぜならばセキュリティがグローバル共通なGoogleのシステムですから、家主さんでも簡単には入れないとのことです。

 

ホテルは東急を名乗らず「エクセルホテル」という名称です。フロントに配達のロボットがいます。気になる料金は3万円から7万円です。ビジネスホテルとしては、日本人は使えませんね。「出張してくる Google社員は便利でしょうね」と尋ねたら、担当者から「Google社員はもう少し良いホテルに泊まるようです」と言われました。

 

渋谷STREAMのレストラン街はすごく感じがいいです。以前、中目黒の高架下の再開発の紹介をしましたが、あのテイストをさらに発展させて、屋内ですが、あたかも路面店の横丁の雰囲気を出しています。さすがに昔の「恋文横丁」の雰囲気までは行っていませんが。かつて『大黄河』という店があり、餃子とラーメンを夜食として食べに行きました。50年以上前ですが。

 

店には入りませんでしたが、一軒一軒見ていくと、どの店にも「入ってみたいようなおいしさ」が感じられます。選び抜かれたお店です。毎晩入り浸りになる人もいるでしょう。一軒のお店で初めから終わりまで済ませてはもったいないので、何店か梯子してフルコースにしようと思っています。ともかく行く価値がありますよ。

 

◆第60回 俯瞰サロン開催◆

「JR東日本さんに聞く、品川~田町駅間の新駅開業でさらに進化する品川(仮)」

お蔭様で、60回目の開催を迎えることになりました。

 

サロン開催の地“品川”は、2020年に予定されているJR品川~田町駅間の新駅開業によって、さらなる進化の時を迎えています。かねてより俯瞰工学研究所は、品川のポテンシャルに着目し、品川インターシティの開発を手掛けた新日鉄興和不動産様をはじめとする品川地域の方々とともに、この地の発展への想いをサロンでも取り上げて参りました。

そしてこのたび、60回目の開催を記念し、JR東日本様にお越しいただいて“品川開発プロジェクト”について、お伺いします。

詳細は、決まり次第、ホームページにてご案内申し上げますので、ご都合をつけてご参加いただければ幸いです。

■日 時: 2018年11月20日(火)18時30分より(18時受付開始)

■会 場: 品川インターシティ会議室3

      東京都港区港南2-15-4

■参加費: 講演会のみ 1,000円 懇親会 3,000円

      当日、受付にて申し受けます。

■定 員: 50名程度

    (定員になり次第、申込みを締切ることがあります)

■懇親会:講演終了後に懇親会を開催します。

■協  賛:新日鉄興和不動産株式会社

■お申込み専用サイト:https://ssl.form-mailer.jp/fms/5ec9a486589331

 

◆俯瞰のクッキング “ある日の食卓” ◆

いつも今日は何を食べようかと考えますが、すぐに思いつく日は少ないです。ある日もう秋だ!と思った時、秋刀魚の塩焼きと栗おこわを思いつきました。なぜか肉料理として酢豚が浮かびました。これは台所にいつも「ウー・ウェンさんちの定番献立」の本が開いてあり、いつか作ろうと思って北京酢豚のページが開いてありましたから。北京酢豚とは肉だけで作る酢豚とあります。買い物に行き肩ロースのブロックを買いました。若干不満ですが秋刀魚もまあまあの形です。栗おこわの栗は、炊き込みご飯用のパックを買いました。以下はウー・ウェンの北京酢豚のレシピです。

 

豚肉は一口大に切る、とありましたが、かねがね店食べる酢豚の肉が小さいと思っていましたから、シチューのように3、4センチ角に切りました。これに塩小さじ5分の1 、胡椒、日本酒大さじ1で下味をつけます。 30分ほど置いて片栗粉をまぶして油で揚げます。ウー・ウェン流の揚げ方は、油カップ1 、そして170度くらいになったら肉を入れますが、箸でいじらないで放置せよとのことです。途中裏返してこんがりあげます。

 

揚げた後、鍋の油を切って合わせ調味料を入れます。合わせ調味料は黒酢大さじ2 、しょうゆ大さじ1 、 はちみつ大さじ1 、酒大さじ1 、ごま油小さじ1です。中火で合わせ調味料を煮立たせてトロミが出てきたら肉を入れて、汁気がなくなるまで絡ませます。肉は結果として2センチ角程度になりましたがしっかり中の肉の旨味が感じられました。

 

栗おこわは、電子レンジ用の圧力釜で焚きました。先般、栗の炊き込みご飯を作ったときには生の栗を水につけておいて鬼皮と渋皮を剥きましたが、結構大変でした。安易な炊き込み用の栗は砂糖味があって失敗でした。生栗の剥いたものがあれば、今度はそれを使います。

 

秋刀魚は、オーブンレンジのBISTROの両面グリルでもっぱら最近は焼いています。煙も出ないし後片付けが楽なので。

 

◆俯瞰の書棚 “遺言” ◆

今回は「遺言」養老孟司 新潮社 2017です。

この本のタイトル「遺言」は、もしかしたらこれが最後の書き下ろしの出版ということかもしれません。何冊も本を出されていますが多くは口頭で語り、ライターが原稿をまとめていたようです。内容は「意識と感覚」に関する解説ですが、多分に養老哲学の語りが多いと思います。

 

本書のテーマは「科学とは、我々の内部での感覚所与と意識との乖離を調整する行為としてとらえることができる」です。従って本書は感覚から得られた情報を感覚所与、すなわち「現実・事実」として、意識を「理論」としてその乖離について解説しています。

 

内容から面白かったところを、いくつかご紹介しましょう。養老さんは唯脳論者のようですがその唯脳論とは。

「プラトンは史上最初の唯脳論者だった。つまり頭の中の馬、意識の中の馬こそが実在する、といったからである。理屈で考えたら、それで正しい。だって頭の中で馬を思い浮かべた時、その馬が存在することは疑えないからである。現に目の前に馬がいなくたって、頭の中に馬はいる。それこそが実在じゃないのか。デカルトはすべてを疑うという当時の風潮に対して、「われ思う、ゆえにわれあり」といった。自分が考えていることだけは、まず認めなきゃならないだろうが、というわけであろう。カントは物自体を知ることはできない、と述べた。われわれに与えられているのは、感覚所与しかないからである。白馬が白いとしても、それは馬の「色を見ている」だけである。馬の体重を計ったとしても、それは体重計の目盛りを見ているだけではないか。馬自体とはいったいなんなのだ。そう思えば、確実に存在しているのは、頭の中の馬だけじゃないですか。」

 

猿真似の根拠についての記述が面白いです。

「サル真似の根拠。いまでは神経科学でミラー・ニューロン(他者の動作を目にしたときに、自身の動作であるかのように反応する神経細胞)というものが知られるようになった 」。人間もサルに近いですから、同じような現象は起きるでしょう。完全なパクリでも、人によっては本人のオリジナルと思い込んでいる人がいますが、これも説明できます。

 

私が英語の論文を書くとき、いつも悩んだ冠詞について、下記の説明でなんとなく納得しました。

「an appleは概念としてのリンゴ、つまり頭の中のリンゴ、the appleは感覚で捉えたリンゴである。an appleは同じリンゴ、頭の中のイメージとしてのリンゴ、the appleはそれぞれ違うリンゴ、それしかない独自のリンゴ、といってもいい。 」

 

脳の中では、目の情報を司る領野と耳の領野はかなり重なっていますが、重なっていない部分もあるとのことです。ここで重なっているから、脳の中では「目と耳がつながってしまう」とのことです。そして下記です。

「ところが耳の領域でも、目の領域でも、重ならない部分が存在している。耳の領域ではこれが音楽であり、目ではこれが絵画である。音楽は耳でしかわからないし、絵画は目でしかわからないからである。それでも、両者が「ヒトがヒトになにかを伝える」ものであることに変わりはない。換言すれば、表現行為と呼んでもいい」と絵画と音楽の本質を説明しています。

 

次のくだりが本書で最も興味深い解説でした。

「秩序を増やそうとする人が多いことはしみじみ感じる。だから熱力学には人気がないのであろう。高校の物理では熱力学の第二法則は教えない。たぶん教えないと思う。学校くらい、ヒトが秩序的にふるまおうとする社会は少ない。そこで熱力学なんかきっちり教えたら、どんな生徒ができるか、わかったものではない」

 

これだけでは、たぶん、何を言っているのか、さっぱりわからないと思いますが、我々が仕事、学習と呼んでいる活動は、混沌の事象に秩序を与えることです。ところがその分、どこかで秩序を崩す仕事が必要だというのです。脳は覚醒時も睡眠時も使用するエネルギーは同じで、睡眠時は、覚醒時に秩序された脳をほぐして秩序を崩しているということです。だから熱力学第二法則を理解すると、生徒は勉強した分を遊ばないといけないということに気がつきますから、熱力学第二法則は教えないということでしょうか。

 

大学で熱力学は教えますが許っておけばエントロピーは必ず増大する、すなわち秩序は崩れていくと教えます。ですから多くの人工のプロセスは秩序を作る、すなわち物質を精錬し、結晶を生成するような作業ですが、その結果として産業廃棄物が秩序なく発生します。環境汚染です。素材を削り、形を作ります。切り屑が出ます。掃除機で部屋を掃除すると部屋は綺麗になるすなわち秩序が作られる、しかし掃除機の中にはグチャグチャの秩序のないゴミの塊が生成される、とも説明しています。

 

この本を読むと、働き方改革の要点は「よく働き、よく遊べ」ということになります。納得です。休暇明けは仕事の意欲が出ますから。ともかく面白い本ですから、ぜひご一読をお勧めします。

 

◆知識の俯瞰◆ 知的腕力を鍛える 3

知識の構造化の技法 こざね法

 

収集し獲得した知識は断片的です。これを構造化することによって行動につながる大きな知識に変えることができます。そして新しい視点が見えてきます。典型的な例は本を書く、論文を書く、記事を書くということです。これはアウトプットです。

 

私が学生時代に「知的生産の技術」という、知の生産技術を紹介する岩波新書が出版されました。著者は京都大学の梅棹忠夫教授です。著名な文化人類学者で、フィールドワークで得られた知識を構造化する、情報整理術を紹介した本で、ベストセラーになり私も読んで紹介された情報整理術を使いました。というより身につけました。カードで知識を整理する手法も京大式カードとして有名になりました。私も使ってみました。

 

その中で、知識の構造化の技法として「こざね法」が紹介されていました。これは今日に至るまで時々使っています。 「こざね」は鎧の部品の「小札」から来ているそうです。

 

知識の断片を小さな紙に書いていきます。一つの小さな塊の知識です。この小さな紙を机の上に並べて、読みながら関係の深いものを集めていきます。次はそのグループの中で論理的な関係を見ながら並べていきます。それをホッチキスで止めていくと、鎧のような塊ができます。そしてグループ間の論理的な関係から全体をAまとめます。

 

この辺りは有名な川喜田二郎東工大教授のKJ法とほぼ同じです。川喜田二郎教授も文化人類学者でフィードワークのデータを整理する手法として開発した技法です。ただこのKJ法は「発想法」として教授自身が精力的に普及活動を進めたため、多くの企業や研究者に普及し今でも広く使われています。今ではポストイットがありますから、これを使っている人が多いです。特にブレインストーミングの結果をまとめる手法として適しています。

 

私は「こざね法」を愛用しています。その理由は、机の上で断片的な知識を読み、その論理的な関係性を見い出しながら、ホッチキスでつなげていく作業とその時間がとても創造的な行為ですから。

 

「小札」に知識をきちっと書いていく作業は大変でしたが、今ではデジタル技術が使えます。知識はすべてデジタルで保管されていますから、必要な部分をコピー&ペーストすれば容易に切り出せます。私はワードで少し空白をとって知識を拾っていきます。そして印刷して空白の部分を切っていくと、「小札」ができます。あえて紙の「小札」にして机の上に並べて作業する事は、パソコンの画面ではできない作業です。もちろん色々なソフトが開発されていますが、ここは感性の問題です。広い面積に並べられた「小札」の一覧性と指による操作が、私の脳の思考回路とぴったり息が合うからです。

 

本も何冊も書きましたが、部分的にこの「こざね法」の技法をよく使いました。本を書くという事は、あるテーマに沿って知識を関係性で構造化する作業ですから。前回紹介した情報の収集で、保存してあるテーマに関係する情報、これは「小札」ではなく、かなり大きな塊です。新聞の記事や雑誌の記事の部分、読書でマークした部分などです。最近ではWEB情報もあります。これらの内容の関係性と論理的な順序関係を考えて、構造化していきます。それをもとに原稿を書いていきます。むろん書き下ろし部分が大部分ですが、基本は知識の構造化で、「小札」としてまとめられた知識は、その核となります。記事などは直接引用して挿入することもあります。

 

最近こんなことも「小札」法でやりました。ある分野の権威者が、ある視点から、積極的な知的活動をしていました。著書も何冊か、新聞への投稿記事、講演の議事録などがありました。時間や場所によって少しずつ言う事も変わっています。この知的活動の全体を俯瞰的に構造化するのに「小札」法を使いました。

 

まずご本人に自身の著作、記事、インタビューの中での、ここは重要だ、自分の言いたいことだと、特に意識する文章を蛍光ペンで拾ってもらいました。そしてその部分を「小札」に転記しました。デジタルの部分が少ないので、かなりの作業をやりました。そしてこれを「小札」法でまとめていきました。すべての「小札」はご本人が書いた文章です。それを追加で書き加えることなく、まとめあげることができました。「小札」法のおかげで論理的でわかりやすい文章に仕上げることができました。知識を俯瞰的に再構成することで、主張も明快になりました。これは代筆ではなく、編集です。

 

◆雑感・妄想◆

以上も雑感・妄想ですが出来る限り参照データを紹介しています。個人のブログは面白いですが、個人的な偏りがありますから、できるだけメジャーなメディアを引用しています。

安倍首相も三選を果たしましたが、この後どうするのでしょうか。憲法改正で第9条に自衛隊を明記するという加憲にも与党の公明党が同意していません。誰も急いで憲法改正の必要を感じていませんから。

 

自慢の外交も各国首脳の前でプーチン大統領から「ともかく平和条約を結んでから話しましょうよ」と、意表を突く発言で先方に領土問題の解決の意思がないことを告げられました。 11回も会って、この結果です。プーチン大統領との友情も北朝鮮で分かってくることがあるでしょう。

 

アベノミクスの結果もほとんど評価されていません。私はTPP 11の取りまとめは評価しています。異次元の金融緩和と財政の大判ぶるいで来年度の予算は100兆円になります。安倍政権はポピュリズムです。

 

さすがに消費税増税を再び延期することはないと思います。社会保障の予算の伸びを考えると、その先もあることをきちっと説明しないといけませんが、ポピュリズムの安倍首相ではできません。最後の任期だという強い気持で、メイ首相のような政治生命をかけた政治を全うしてほしいと思います。今振り返ると、核抜き、核有でも、小笠原、沖縄返還を実現した佐藤首相、アメリカの意向とは別に中国との国交回復を進めた田中首相、政権に不利であっても消費税導入を決めた竹下首相、 5%に引き上げた橋本首相、いずれもその後選挙で敗北していますが、なすべき仕事をしたと思います。

 

日産、スバル、スズキ・・日本の製造業は底なしに腐っています。第三者委員会を立ち上げて対策を発表しても、まだやっているわけです。いかに経営と現場が乖離してガバナンスが、まったく効いていないのか、驚くという以上です。モノづくりという人たちの実態が見えてきます。ある意味現場の悲鳴でしょうか。コストダウン、業績主義のしわ寄せが現場に丸投げされているのでしょう。それでも経営陣は安泰とは、スポーツ協会と共通する日本の暗部です。

 

今やっと、小・中学校の教室に冷房が入る動きになりました。なぜ今までやらなかったのか、これも日本の闇です。加えて避難所の体育館の空調もありません。それで避難所なのでしょうか。予算の問題ではありません。行政と政治の怠慢、罪です。再生エネルギーの買い取りで、すでに国民は3兆円も払っています。全国の学校と体育館にエアコンを入れる、そんなことが中央政府も地方政府が必要ないと言っていたなら、あまりにも酷い話です。制度疲労です。人権問題です。熱中症で小学生が死亡してやっと。人柱が必要ですか。文科省の犯罪です。こんなこともできなくて、環境問題やパリ協定を論じているとは、考えられません。

 

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編集長:松島克守

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