◆俯瞰MAIL第 100号◆2020年4月30日発行

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俯瞰メール100号日本経済に関する図表.pdf
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◆時候のご挨拶

コロナ、コロナ外出自粛で季節の変化を感じないまま初夏に入りました。

この俯瞰メールは2011年に創刊し、このたび100号を迎えました。長年のご愛読、誠にありがとうございました。100号の総集編ですので、長文になりました。ゆっくりお読みください。

構想を刷新して、新世紀のⅡ-001号をお届けしたいと考えていますが、暫くお休みいたします。その間、ツイッターとブログで繋ぎたいと思います。詳細は、最後にご案内いたします。

●コロナ以後の世界を俯瞰する

●俯瞰メール創刊の2011年は

●俯瞰サロン(5/23:松島克守所長講演「コロナ以後の世界を俯瞰する」)

●俯瞰の書棚 “俯瞰の書棚のベスト20”

●雑感・私感

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◆コロナ以後の世界を俯瞰する◆

私達は、かつて経験したがこと無い危機に突入しているのでしょう。リーマンショック、東日本大震災を遥かに超える経済危機が迫っていることは認識しなければならないでしょう。この未曽有の危機は社会の価値観を大きく変化させ、社会を変え、産業の大転換を促すはずです。そこに見えるコロナ以後の世界を見据えて、今を考える必要があります。

 

<収束は3フェーズで考える>

 まず、“何時このコロナ危機が終息するか”ですが、これは非常に難しい判断です。中国、ヨーロッパ、アメリカと時間軸がずれているので、グローバルに収束する時期はかなり先になるでしょう。そして各地域でも収束のフェーズは差違があるでしょう。少なくとも3つのフェーズで考える必要があると思います。すなわち、

 

・フェーズ1 

限定的な職場開放、学校、工場再開、工事現場の再開、無観客試合解禁、国内の一定程度の移動許可、外交官等特別な人以外はビザ発行はなし。

これを焦ると二次の集団感染です。

 

・フェーズ2 

外出禁止は解けるがソーシャルディスタンスは残す、個人商店、レストラン、カフェは解禁、大学再開、美術館、博物館公開、コンサートは許可ないし自粛、制限付きで国際交流解禁、しかしライブハウス、大規模イベント禁止、無観客試合は解禁。早い国では5月の始めでしょう。

2ヶ月以上外出禁止をしている国は、国民の忍耐もそろそろ限界でしょう。

 

・フェーズ3 

旧状復帰、グローバルな人とモノの移動自由、イベント解禁、たとえばラスベガスでコンベンションも。 

これはかなり先でしょう。ワクチン接種、集団免疫がないとここまでやれません。

 

 早稲田大学の平田竹男教授は、サッカーにたとえると「フェーズ1は無観客試合解禁」、「フェーズ2は国内試合解禁」そして「フェーズ3は国際試合解禁」とのこと。わかりやすいですね。

 

 で、日本はということになります。これは日本政府が決めることになります。暫定で緊急事態宣言の期限は5月6日ですが、意図したか否かは不明ですが、先送りしてきた感染のピークは連休明けかもしれません。ここまで引っ張ってきたら無理してリスクをとることはないと思います。多分5月11日がフェーズ1の解禁になる可能性が高いです。私は6月1日をフェーズ1の始まりにしたいと思います。急げば第二次のピークを迎えかねません。北海道は、一度は緊急事態宣言の終了を宣言しましたが、その後、第二波の感染増加を受け、再宣言に追い込まれています。多分、連休明けから段階的に緩めると思いますが、急げば、結果として経済的に高いモノにつく可能性があります。

 

 しかし、世界が日常を取り戻すには時間が掛かるでしょう。現在は社会も経済もスポーツも複雑にネットワークされたグローバルの世界ですから、一つの国だけでは日常を取り戻すことは出来ません。一度停止させたグローバルシステムを以前のような状態に戻すには、時間がかかります。

 

まず、物の流れ、サプライチェーンの素材の生産から部品の生産、そして製品の生産、物流と輸出入が流れるようになるには、時間がかかります。さらに今回の危機を受けてサプライチェーンの再設計が必要になります。その立ち上げには、時間がかかります。特に中国に過大に依存をしていたサプライチェーンは、見直しが必須です。例えば、パソコンやスマートフォンの生産は東南アジア、インド等に拠点を分散させることになるでしょう。

 

 企業倒産、廃業で生じた雇用喪失は短期間では解消出来ず、産業構造の変化や新産業の立ち上がりを待つことになるでしょう。アメリカは雇用契約が日本と違いますので非熟練の労働者は解雇が容易なため、失業保険の申請が3000万件を超えたと伝えられています。失業率でいうと大恐慌並みです。そして全員が元の職場に戻れるわけではないでしょう。また農業は、季節という時間的な制約があります。この機会に企業もビジネスモデルの刷新を図るでしょう。

 

一方、人材が他の企業に移り、事業再開が思うように出来ない企業も出てくるでしょう。休業保証手当で人材を確保することは、運転資金の供給とともに中小企業支援には重要です。

 

<長期に渡る経済の低迷で世界大不況は必然>

 世界中で収束のフェーズがずれるので、グローバルの収束に時間が掛かるでしょうから、世界経済は時間を掛けて回復する事になるでしょう。V字回復は特定のセグメント以外は難しいでしょう。需要が蒸発した観光業や飲食業は失われた需要を取り戻すことは出来ないし、その損失を埋めることも出来ないので財務的な苦境は続き、投資も出来ないでしょう。要は、需要が回復しないと供給サイドも復旧は進みません。一時的な在庫補充の需要は当然あるでしょうが。

 

 製造業では、裾野が広いセグメントの自動車産業の復旧が鍵です。この需要は基本的に蒸発したわけではないと思いますが、購入者の経済事情が改善しないと実需要は出て来ません。先進国はすでに飽和して買い替え需要しかありません。しかし、乗り換えは先延ばしになる人がかなりいるでしょう。新規需要が旺盛な新興国も、経済事情の回復次第です。ここはシェアリングというパラダイムに移行することも考えられる。例えば、車は必要だが買えない人に信用供与するというビジネスモデルの日本のベンチャー企業であるGMS(https://www.global-mobility-service.com)は、コロナ以前から東南アジアで成長してきましたが、さらに成長するかもしれません。所有から利用への価値観の変化は確実で、経済構造を変えます。

 

 世界経済の急速な復旧で期待されているのが、新型コロナウイルス感染症の発生源で、収束と経済活動の復旧で先頭を走る中国です。ただし終息したわけではありません。

 

コロナ以前でもニューノーマル(新常態)で高度成長路線から6%に成長率を下げています。輸出主導の中国経済は、米国や欧州の経済回復が進まないと、牽引力の輸出が伸びません。内需振興もするでしょうが。家電機器やアパレルの個人消費の需要も回復は鈍いでしょう。個人消費の余力も減っているでしょう。

 

先端技術分野の新規投資、サプライチェーンの再編で中国でも設備投資はまだまだありますが、東南アジアに流れる部分も少なくないでしょうから。従って中国経済に対する過度の期待はできません。それでもコロナ後の世界で、中国の経済圏の広がりは勢いを増し拡大していくでしょう。共産党はいささか強引に推進しています。

ともあれ世界経済の低迷が長引く事は、間違いありません。

 

<コロナ危機以後の世界経済の課題>

期待されている経済のV字回復ですが、結果としてL字もしくはレ点(チェックマーク)回復のシナリオの可能性は高いです。リーマンショック後の経済回復を見ると興味深いです。

 

リーマンショックを参考にしてみると、日本の場合、経済成長率はV字回復ですが、製造業は現在まで成長を取り戻していません。金融業(三菱UFJ銀行)はV字回復です。小売業は主役の交代です。百貨店が凋落してコンビニとドラックストアはリーマンショックの影響を殆ど受けず成長を続けました。アパレル(ファーストリティリング)は一年停滞しただけでその後は急成長です。ただ、ここに来てコンビニ、アパレルは構造的な問題で足踏み状態ですが。(上記記載のpdf図表参照)

 

発展途上国は、失われた成長機会を取り戻すことは容易ではないでしょう。急務のインフラ整備も、先進国からの援助が遅れるでしょう。先進国も自身の復旧で手一杯です。幸い東南アジア諸国はアジア危機からの学びで、相対的に財務が健全です。

 

コロナ危機で各国が競って財政出動した結果、膨大な余剰流動性すなわちマネーが投資先として発展途上国の社会インフラに向かってくれるとありがたいですが、もともと短期的な利益に貪欲な投資家が、時間軸の長いインフラ投資に向かうか定かではありません。

 

唯一の成長点である発展途上国の成長回復が、世界経済の回復の課題です。

 

気候温暖化の世界的な課題は、依然重要です。化石燃料から再生可能エネルギーへの転換の流れは強まるでしょう。この環境投資が注目されています。ESG(Environment、Social、Governance)投資はこのコロナ危機の中でも進み、金融機関は石炭火力発電等への投資から退き、再生エネルギーにシフトしています。あの動かない日本のメガバンクもESG投資を表明しました。この流れを加速させ健全な経済成長につなげられるかは、重要な課題です。

 

膨大な財政支出の祭りの後は、各国ともその事後処理に苦しむに違いありませんが、金融システムの崩壊で大不況にならないようなグローバルな国際協力が必要です。しかし本来のリーダーであるアメリカは、国際協調のリーダーの使命を放棄していますし、EUもその余力はありません。EUは、同盟国の救済すら出来なかった虚構の国家連合であったことが判明しました。イタリアや東欧の国々は、中国とロシアの援助を受け入れていくでしょう。ただロシアは、石油価格の暴落で外国援助は限定的になるかもしれません。ロシア国内のコロナ感染も拡大しているようですが、地政学的な覇権に執着しているプーチン大統領は、旧ソ連邦援助に集中して失地回復を狙うのでしょう。中国は一帯一路を強力推進して、欧米とは別の経済圏の構築に邁進するでしょう。相対的に余力があります。

 

 この危機で貧者は痛み、富裕層はさらに富み、経済的格差が広がり、社会の分断が進み、同時に国家レベルでも力がある先進国の復旧と、もともと経済基盤が脆弱な発展途上国との経済格差も広がるでしょう。今回の欧米の想定外の大量の死者数は、格差によって日頃の生活環境が劣悪で、まともな医療を受けられない貧困層が犠牲になったと報じられています。特に貧困層は医療保険がありません。これを解消したオバマケアを、トランプ大統領は反故にしました。この貧困層の反感は必ずや政治に反映され、ポピュリズムの台頭が懸念されます。そして国際情勢も不安定になります。

 

コロナの先の世界は、中国とロシアの地政学、地経学の展開に対する、欧米・日本の行動が大きな課題です。

 

<産業構造は新構成になる>

 もともと凋落気味の20世紀創業(1900年代の初頭)のビックビジネスの典型であるGE、IBM、GM・・・日本の大手製造業は、改めて事業ポートフォリオを大胆に見直し、経済界のリーダーの地位を譲り、コンパクトになって生まれ変わるのではないでしょうか。

 

これに取って代わってビジネスの世界でリーダーシップを発揮するのは、第5の権力を自称するGAFAでしょう。すでにNY証券市場の上げ下げもMSとGAFAの株価次第です。すなわちビジネスリーダーの交代が起こります。すでに起きている事が広く社会に認識されることですが。そしてその結果、独禁法のターゲットがIBMからMS、 そしてGAFAへと移ることです。彼らに対する当局、とりわけEUの規制は厳しくなります。かつて私が働いていたIBMは、広告を一つ出すにも法務の独禁法審査で時間をとられました。

 

 金融システムのウォール街も弱体化していく気がします。もともとアメリカファーストで自身の影響力を牽引してきましたから。これと中国の野心的な経済圏の拡大は、ドルの弱体化を進めるでしょう。デジタル人民元、リブラ、ブロックチェーンというテクノロジーで、旧来の銀行という金融システムに代わる決済が台頭します。中国のキャッスレスの普及と巨大さは、今後を示唆する以上の説得力があります。

 

 小売業のビジネスモデルの革新は必然です。従来の小売業がコロナ危機で縮小し、雇用を減らす中で、アマゾンをはじめとするECは大量採用でビジネスを拡大しています。個人的にも殆どの買い物はアマゾンで、食料品はネットスーパーです。ただ補完的なビジネスとしてネットスーパーを展開してきた既存のスーパーは、配送システムというか配達員が確保できていないようで需要に対応できていません。一方、佐川に断られヤマトに取り扱いを減らされたアマゾンは、個人事業主等を活用した宅配網を充実させて、この好機をつかんでいます。ヤマトは自分の独占的な地位を過信して、個人事業主を組織するという、すでにアメリカのUberがやって見せた“すでに起きた未来”を他人事としたのでしょう。拙宅など、日に3件くらいの配達は問題なくこなしています。押印もいりません。ドアの前の置き配は、あたり前になりつつあります。濃密接触も避けられます。

 

 すなわち、各種ネットサービス、EC、デジタルツインの世界は日常化しつつあります。自動車のネット販売も広がるかもしれませんね。自動車のネット販売は、シェアリングとサブスクと読み替えても良いでしょう。

 

 B2Bの世界もSCM(supply chain management)を国内、東アジア、中国、東南アジア、インドに分散させ、最適化を追求する「系列の再定義」を促していくでしょう。国内回帰とか言っている人がいますが、ビジネスはもっと冷静に判断するでしょう。国内の立地条件は改善されていませんから。

 

産業構造は、新しいグローバル経済に適応すべく再構成されるでしょう。そしてシェアリング、サブスクというパラダイムシフトが進みます。すなわち新たなグローバル経済の世界になるでしょう。今度こそ真面目にBCP(Business Continuity Plan)に取り組まないといけません。今は、災害は忘れる前に来ます。

 

<社会の価値観が変化し行動が変わる>

 

   社会の価値観が変化する結果、働き方、教育、消費、コミュニティ、人の交流、全てが急速に変化するのではないでしょうか。コロナによって変化した消費スタイルが定着するでしょう。繰り返しますが、ネットで買う、シェアリング、サブスクです。そして断捨離です。

 

ネットで仕事が出来ることが認識されましたから、一定部分これが定着するでしょう。Zoom会議、Zoom飲み会のスタイルも定着するでしょう。Zoom会議も見様見真似から洗練されたスタイルに進化するでしょう。俯瞰工学研究所主催の俯瞰サロン「Zoomオンライン革命」のセミナーは瞬時に定員の200名を超え、関心の高さが認識できました。締め切り後も参加希望が多く来ています。ただ200名を超えるオンラインセミナの運営はチャレンジです。

 

DX(Digital Transformation)の普及で、労働、教育、家庭全てが大変革してそのスタイルが定着します。言われて久しい日本のDXの遅れが、これを機会に急加速すれば企業と社会の生産性が大幅に改善します。一方DXが進む企業、進まない企業で企業格差も広がるでしょう。意欲的な企業にとってはチャンス到来です。DX関連の企業には特需です。

 

リモートワーク、サテライトオフィス、シェアオフィス、ネット会議、オンライン授業、全てがコロナ危機の後の日本の日常になるでしょう。一方、社会の価値観が変わり、色々な行動、消費も変わるでしょう。混乱も生じるでしょうが、これを乗り越えていけば新しい世界が開けます。規制緩和も進み、かつて難航した遠隔診療とか行政の電子政府化等進むでしょう。

 

ネットで仕事が出来ることが認識されましたので、日々通勤することなく時々出社ということになると、通勤圏の外で仕事部屋・書斎が確保できる大きな戸建てに住もうとする人も出てくるでしょう。今でも余裕がある人は、軽井沢に住んで、必要があれば新幹線で東京のオフィスや会議室に来る人が結構います。思い切って田舎に住むということになると、地域活性化という話も出てきます。新幹線の有無は拠点の選択に効いてきますね。

 

社会という人間の集団的な存在と活動がネット上に展開される社会、これは“すでに起きている未来”です。一気に進むと思います。ただし新しい社会や生活、コミュニティ、隣人関係は、試行錯誤で形成されていくのでしょう。スマホは出現して10年で社会を変えました。

 

<民主主義は全体主義と対峙する事に> 

私達は、ネットによる管理社会を何処まで許容するかという選択に直面しています。専制国家のような強権でネットを支配し国民を管理することは、民主主義の根幹を揺るがせますので民主主義国家では許されませんが、デジタル時代に相応しい規制が導入され、一定程度受け入れられて行くでしょう。全国民が顔認証システムで管理される管理は論外ですが、GPSを使った管理システムは一定程度社会が許容するでしょう。

 

SNSは、全てのデータがGAFAのサーバーに吸い上げられ集中管理されるシステムから、分散システムのアーキテクチャーに移行することになるでしょうか。第五の権力を押さえ、大衆が新しいネット世界の主権を取り戻す動きです。すでにコロナ対策でスマホ同士がP2Pで感染者との接触を知らせるシステムが始動しつつあります。ドイツは、政府が主導した中央集権的システムを、広く国民が受け入れられる分散システムに変更しました。公共の福祉と個人のプライバシーとの葛藤です。

 

注目すべきは、中国の政治改革です。コロナを短時間で押さえ込んで、共産党による専制政治が西欧の主張するリベラル、民主主義の統治体制より優れていると強引に宣伝していますが、さすがに欧米と日本には相手にされません。その中国国内でも、初期に共産党政権が情報を隠蔽し、結果として多くの国民の命が失われた事実は消し去ることは出来ませんから、共産党の指導に対する不信と不満のマグマは広く中国国内に貯まっているのでしょう。これが、どんな形で噴き出してくるかです。絶対的な専制統治体制であった数々の王朝も、最後は民衆の蜂起で倒れてきた歴史を持つ中国です。妥協的な革命で繋いできた日本の統治文化とは異なります。

 

民主主義も、グローバル化で深刻かつ本質的な欠陥を露呈しました。全体主義、ナショナリズムに退化するか、民主主義が直面する矛盾を乗り越えて欠陥を止揚(ドイツ語 Aufheben)し進化するか、これは我々の政治的な選択です。

 

<云われて久しいG0の世界になる> 

コロナ危機以前からトランプ大統領によって、国際協調なき世界が加速しています。云われて久しいG0の世界になることは必至です。これは地政学、地経学の再構成を意味します。世界が不安定になることも意味します。しかし、再構成された新しい世界は見えていません。動乱の時代という識者もいます。

 

アメリカ第一主義でヨーロッパやアジアとの同盟関係を棄損してきたアメリカは、国際的な信頼関係と連携を弱めた結果、一覇権国へ後退でしょう。いわゆる血の連携であったファイブアイズのカナダとも不協和音です。そしてG0の世界になるわけですがその先は見えません。イギリス新政権との関係も肝心なジョンソン首相のコロナ入院で進展はありません。EU、NATOとの関係も冷え切ってしまいました。

 

日米関係も、この後どうするかは、コロナ後の日本のビジョンの議論では重要なテーマです。

 

コロナ危機でアメリカの国内統治状態がひどい状態で、先進国のリーダーとはほど遠い状態であることが露呈しました。トランプ大統領の個人的な無知無策もありますが、対岸の火事的な感覚でいたアメリカは、気がつけば世界一の感染者数と死亡者数の国になってしまいました。医療支援を中国や韓国に求める有様です。マスク着用義務も最後まで反対していました。そして、自分の無知無策の矛先をかわすために中国の責任を声高に叫んでいますが、さすがに支持者も「消毒液を注射しろ」で目が覚めるでしょう。

 

  再選ファーストで経済活動再開に焦っていますが、散々煽った結果、ジョージア州知事の大胆な経済解除には「待て、待て」です。幸いにも連邦政府の権限は限定的で、ニューヨーク州やカリフォルニア州は知的水準が高いので、人命と経済のジレンマをうまくやっていくでしょうが。最近では二次感染の波のリスク回避で、性急な経済緩和を警告する専門家の発言を力ずくで抑え込んでいます。

 

ただ、元の産業構造に戻る訳ではないでしょうから、3000万人を超える失業者が元の職場に戻れるかどうかです。この機に持論の移民制限を強化しようとしていますが、直近では収穫が迫る農業での移民受け入れを表明しています。支持層の農家が立ち行きませんから。とにかく場当たり的で、国家の危機に立ち向かうリーダーの自覚はないようです。しかし、これがアメリカの保守層の選択です。11月の選択が注目されます。

 

G0の世界では、アメリカと中国の関係が最大の課題です。対立と共存のジレンマがありますが、すでに決定的な信頼関係の喪失があります。米中国交回復以来、最悪の状態にあります。コロナ危機で情報を共有しない中国に不信を強める欧米ですが、早めにコロナ危機を収束させた中国は、その優位性を誇示するかのように、西太平洋や南シナ海における米国海軍の空白につけ込んで中国のプレゼンスをアピールしています。何しろアメリカ海軍の虎の子の攻撃型空母2隻は、乗員のコロナウイルス感染で任務を離れてしまいました。

 

この機に乗じて一帯一路の推進で中国経済圏を作るべく、イタリアなどに医療支援を通じて攻勢をかけています。中国は、結果として欧米がコロナ危機で見捨てるアフリカ、中南米等の後進国を取り込む戦略でしょう。コロナ危機に対するアメリカとEUの対応が限定的ですので、中国に警戒しつつも受け入れざるを得ません。東南アジアへの浸透の度合いも強まるでしょう。この結果、今回のWHOの中国寄りの行動で見た、国連機関における中国の影響力はさらに強まるでしょう。欧米が引いた後は中国が埋めます。これが地政学です。この辺も日本の立ち位置を考える時の要点になります。

 

一時的ではありますが、原油先物がマイナスになりました。ちょっと前にはサウジとロシアが増産合戦を始めましたが、その愚かさに気がついて、一転して減産協調になりました。石油産業がどうなるか気になります。かつては、セブンシスターズという欧米の石油マフィアが仕切ってきた石油業界ですが、産油国がOPECを組織して指導権を奪取し、その枠組みで原油価格は高値で安定して来ました。コロナ以前からシェールガスでアメリカが輸入国から産油国になり供給過多でしたが、コロナ危機で需要が激減し、需給バランスが崩れて貯蔵容量が逼迫して大暴落になりました。

 

サウジ、イラン、ロシア等石油依存の政権は、危機的状況を迎えています。欧米が退いた突然G0の世界で、国際石油秩序が問われる事態です。全く準備できていません。そしてサウジ、イラン、ロシアとも深刻な国内事情を抱えています。マイナスはともかく、原油が20ドルでは国家財政が立ち行きません。やはり動乱の時代でしょうか。

  

G0の世界は、コロナ危機で突然答えを求められました。リーダーなきG0の世界では国際的な不安定と混乱、最悪の場合は軍事衝突すら想定しなければなりません。ホルムズ海峡のアメリカとイランの小競り合いが発火しないと良いですが。これも日本の今後を議論する時、重要な判断になります。

  

<EUの分断そして揺らぐ理念>

コロナ以前から論議があった、EUの再定義の論議が活発になるでしょう。コロナ危機に際して加盟国の苦境に有効な支援が出来なかったEUは、分裂か統合かで大きく揺れることになります。自由な人と物の移動を保証してきたEUの統合の理念に対して、EUのリーダーのドイツとフランスが国境の封鎖、医療資材の囲い込みをした衝撃は大きいです。

 

燎原の火のように広がるコロナ感染の危機に、ブラッセルのEUは無力で無為無策でした。これまでも厳しいEU本部の指導に反発してきたイタリアやスペインといった南欧の国民は、EUから離反するする方向に動くでしょう。結果として死者を最低限に押さえ込んだドイツですが、ある意味ドイツファーストの行動をとったと思います。少し余裕がでてから、イタリアからドイツに患者をヘリコプターで移送しましたが、いかにも協調のデモンストレーションです。

 

第一次世界大戦、第二次世界大戦という戦乱を体験したEU各国の国民は、現在は戦時下という意識で、各国は政権の指導の下に結束が強まりました。これはナショナリズムの高まりでもあります。EUの理念と相反する方向です。コロナ危機が終息すれば、各国はナショナリズムとポピュリズムの台頭に直面することになるのではないでしょうか。専制政権、ポピュリズム政権が強まる可能性があります。ハンガリー政権は、コロナ危機に乗じて専制政治を強めました。EUリーダーであったドイツは、与党の支持率は大幅に増えましたが、メルケル後の指導体制が全く見えません。

 

EUの分裂を策するロシアの地経学の戦略は、コロナ危機に乗じて東欧、バルカンを取り込み、トルコ、シリア、イラク、イランに広がるロシア経済圏の構築を推進するでしょう。中国もEUの間隙を突いて一帯一路の推進を仕掛けてくるでしょう。イタリアなどに積極的に“マスク外交”を仕掛けています。ただ提供したマスクや医療機器の品質が劣悪で、結果として信頼関係も失っていますが。 

 

EU各国の反グローバリズムの動きと地経学的な揺れで、EUは分裂と統合に揺れ、民主主義、個人の権利というリベラルの理念に挑戦を受けます。日本はこの意識が指導層も国民も希薄です。

 

<西欧文明の崩壊で、文明の交代に気づく>  

 コロナウイルスの感染者数と志望者の数は、改めて西欧の終焉と文明の交代を認識させます。

アメリカのジョンズ・ホプキンス大学によりますと、世界全体の新型コロナウイルスの感染者の数は、日本時間の27日午前3時の時点で、294万7616人になりました。

 

感染者数を国別に見ると、

▽アメリカが95万4182人

▽スペインが22万6629人

▽イタリアが19万7675人

▽フランスが16万1665人

▽ドイツが15万7114人

となっています。

 

死亡人数を国別に見ると、

▽アメリカが5万4573人

▽イタリアが2万6644人

▽スペインが2万3190人

▽フランスが2万2856人

▽イギリスが2万732人

となっています。

 

いずれも先進国を自負し、近代医学をリードし、医療システムも整備された欧米です。前述の様に抱え込んだ大きな貧困層の問題もありますが、これを抱え込んだ経済、社会の構造が文明です。大量の移民という現代の奴隷制上に繁栄を築いた西欧文明です。そして地政学的優勢を維持するために軍事費を増額し、医療予算を削減してきた西欧です。これに対して、今回のコロナ対策で台湾、中国、韓国という東アジアが、ある部分優位性を示したといえます。

 

賢人はこれまでも警鐘を鳴らしてきましたが、西欧という文明が衰退し、世界は新しい文明に移行しつつあることを知らしめました。民主主義を前提とした資本主義も、本質的な進化が求められているということです。

 

 強欲な資本主義で経済的、社会的な格差を拡大させてきた資本主義は、本質的な進化が求められていますが、それは民主主義を否定した全体主義であってはなりません。資本から民衆に権力の移行していく新しい文明が必要です。ただし、民主化が衆愚政治すなわちポピュリズムとなった結果、衰退したギリシャ文明の徹を踏むことは避けなければなりませんが、ハンガリーやロシア等一部の国はポピュリズムから全体主義へと歴史を繰り返しています。

 

 西欧文明の後退は必然ですが、かつては文明の交代は世界に大混乱を引き起こし、地政学的な大変動をもたらしました。中国文明やインド文明は、産業革命から生まれた西欧文明に移行する中で、その存在は消えて行きました。「どんな文明を作り上げていくか」が、我々に課せられています。

 

<コロナ後の世界の新生日本の理念とビジョン>

読者がその周囲と議論して、新しい価値観と生き方を主体的に追求し、積極的な社会参画を担い、コミュニティを広げ、連携していくことを期待して、あえて、ここは私見を書き込まないでおきます。先が見えている老兵は「諭す」ことなく消え行くのみです。

 

・まず日本の立ち位置をゼロから見直さないと

日米安保だけの安全保障でいいのか

忘れる前にやって来る災害とパンデミックへの備え

 

・次世代の教育システムをどうするか

社会の刷新、グローバル連携を担う人材教育は

IT教育、英語教育だけでいいのか

 

・少子化対策の抜本的改革で人口維持

欧米の成功事例を学ぶ

女性の子育てと就業のジレンマを解消

 

・脱経団連の新企業の育成

新規参入を阻む規制緩和は十分か

産業構造改革の推進は

 

・個人事業者と個人商店のセイフティーネットの整備

IT、バイオだけがベンチャー企業ではない

既存の大企業中小企業だけが雇用の受け皿ではない

 

・農業の思い切った法人化と都市人口の新農業へ

もはや石油ではなく食料が戦略

休耕地を生産に回す農業法人の育成

 

・政治にもっと関心を持ち、国民主権の意識を取り戻す

グローバル企業、金融、国際機関の「複合体」からの権力奪取

次世代の政治参加の亢進

 

・グローバルな連帯にもっと日本は踏み込む

   G0の世界における日本の国際連携

   TPPでアジアのファシリテーターになる

 

<俯瞰から見えてくるモノ、コトは何か>

以上は、ジグソーパズルの断片の様な目と耳に入ってきた情報を一度堰き止め、「コロナ以後の世界というフレームワークで一枚の絵」としてまとめた俯瞰の技法です。個々の情報に関しては、皆さんはコメンテーターや評論家から「耳タコ」でしょうが、改めて自分の認識を整理する私の「俯瞰学のワークショップ」です。

 

◆俯瞰メール創刊の2011年は◆

 俯瞰メール創刊の2011年を振り返って見ると、激動の年でした。特に東日本大震災はエネルギー戦略を一変させました。原子力発電が禁じ手となり、ドイツは早々と脱原子力を宣言しました。原子力事業は欧米と日本では壊滅的です。新興国のインドやアジアでは建設計画は継続していますが、GE、WHの事業は消滅状態です。

 

 アラブの春は、ネットによる民衆革命でした。多くの独裁専制政権が倒されました。しかしチュニジア以外は混乱が残っただけです。大衆の蜂起とまでは行きませんが、ウォール街で始まった反格差デモは世界に拡大し、格差社会が世界的に深刻な課題であることが顕在化しました。その元凶はグローバル主義という事で、反グローバル主義のうねりが強まり、ナショナリズムとポピュリズムの台頭を引き起こしました。

 

 歴史的な円高1ドル75円で闇雲に生産の海外移転を進めた結果、タイの大洪水では現地の工場に生産移管した日本企業は被災に会い、日本の製造業の柔らかい脇腹が露呈しました。

そしてBCPが盛んに議論されましたが、“喉元過ぎれば熱さを忘れる”という日本人の特技でうやむやになり、今回のコロナ危機で、戦略なき生産の海外移転はまた立ち往生です。日本に戻せ!これも見識のない“あの人”の発言です。

 

 ギリシャやイタリア、スペインなど、南欧諸国の放漫な財政政策が行き詰まり債務危機になりました。健全財政を旨とする北ヨーロッパと南欧諸国との対立で、EUの内部分裂が露呈しました。

 

 なでしこジャパンワールドカップ優勝という良いニュースもあり、悪魔の金正恩体制が始まった年でもありました。

 

◆俯瞰サロン:第75回俯瞰サロンのご案内(Zoom開催)◆

松島克守所長講演「コロナ以後の世界を俯瞰する」

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・日程:5月23日(土) 14時から16時

・開催方法:Zoomを使っての開催

・参加費用:500円(予定)

・お申込サイト: 5月6日の午前中に俯瞰サロンのホームページに掲載いたしますので、以下をご確認ください。ZoomのURLは、お申し込み時にお知らせします。

https://www.fukan.jp/俯瞰サロン/

 

※オンラインでの有料開催は、初めての試みです。これからのオンラインの利用を一つ一つ体験したいと考えています。よろしくお願いいたします。

※サロンの風景を録画し公開しますので、映像が残ることがお嫌な方は、オーディオをオフにして参加していただきます。

 

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 先日4月28日に第74回俯瞰サロンを開催しました。新型コロナの外出自粛に対応して、Zoomを使ってのオンライン開催となりました。

講師は、『Zoomオンライン革命』の著者である田原真人さんで、テーマは「オンライン革命の現状と未来」。あっと言う間に200名を超える申し込みがありました。

 

200名の内訳は、Zoom利用を初めての方が20%、使ったことはあるが、まだ心配という方が40%、よく使っているという方が40%という割合でした。実際のピーク時の参加者数は180ほどでした。Zoom初心者の方には、自由参加での事前接続練習会を開催しました。

 

私どもにとっては初めての開催で、しかも200名を超えるお申込に運営へ懸念はありましたが、田原さん、トオラスの皆さんに運営を主導していただき、オンラインでのコミュニケーションを体感できる場作りも見せていただくことができました。結果は大成功でした。参加者全員が「コロナの先の世界」を体験出来たと思います。もう元には戻らない、戻れない、という認識もできたでしょう。当分コロナによる大規模な集会は自粛しなければなりませんから、俯瞰サロンはオンラインで開催する予定です。

 

今後ご案内は、俯瞰工学研究所のHP、FBのイベントで行いますので、ご確認くださいますようお願いいたします。

 

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◆俯瞰の書棚 “俯瞰の書棚のベスト20″

 

100号で100冊の本を紹介してきました。改めて“俯瞰の書棚”を見返して、自分の知的基盤を強化してくれた20冊を選びました。すでに俯瞰メールで取り上げたものですので、掲載号数を記載しています。また経過年月の表記は、その当時のものにしてあります。

 

以下、<日本について>(1‐5)、<明治以来、日本が目標としてきた西欧について>(6‐11)、<知性について>(12,13)、<現代の基盤である都市文明について>(14、15)、<ビジネスイノベーションについて>(16‐19)、<健康についての一冊>(20)の6つに分類しました。

 

<日本について>

【1】日本の古代史まとめ読み

1.「農耕社会の成立」 石川日出志 岩波新書 2010

2.「ヤマト王権」 吉村武彦 岩波新書 2010

3.「古代中国と倭族」 鳥越憲三郎 中公新書 2000

4.「倭国」 岡田英弘 中公新書 1977(2001 31版)

あくまで、古代史の知識のバージョンアップが目的でしたので、出版が新しいものを選んでみました。

 

1と2は最新の学術知識を編集したもので、新書ですが内容は充実していて、斜め読みすることは出来ませんでしたが、きちっとした知識を獲得できました。巻末の索引や参考文献等は、学術書の水準です。改めて、巻末の「岩波新書赤版1000点に際して」を読みましたがその理想は、さすがかって「日本の四大文化権威。朝日、東大、NHK、岩波」と称された岩波の力を感じさせます。1000点のうち100点でも若いうちに読めば教養人として人生を送れるとは言いすぎですか。

 

3は日本人の源流を東南アジアの歴史と民俗学まで広げた俯瞰的視野で記述されていて、「目から鱗」的な知識を獲得出来ました。

長江中流に、かつて繁栄した民族すなわち、「倭族」を弥生人の源流であると位置付け、黄河文明に駆逐され西に南に、そして東に移動して、それぞれの国家を設立し、あるいは少数民族として山岳地帯に生き残る「倭族」という学説を提案しています。そしてその「倭族」に対する愛情を感じさせる本です。

 

4は日本、中国、朝鮮という東アジアを俯瞰的視点で「倭国」を解き明かしている点が、価値があるのでしょう。何しろ31版の重版が何よりの評価と思います。云わば、三国志の付録のような「魏志倭人伝」や、編集時期が不確かな「古事記」「日本書紀」の記述を精読する邪馬台国の研究より、遥かに俯瞰的理解を与えてくれます。

 

日本人の源流が理解できます。長江上流の習俗が日本の鳥居とか日本の習俗に共通することを現地で確認しています。俯瞰メール003号

 

【2】「稲の道」渡部忠世 NHKブックス 1977

本書は、“日本人は何処から来たの?”の答えをくれる本です。結論から言えば、稲作文化を持って北九州に到達した弥生日本人の出発地は、ヒマラヤ、チベットに近い中国奥地の雲南であったということを長い時間を掛けてフィールドワークを行い導き出しています。本当に長い時間の学究の結論的仮説です。アッサム、雲南が日本のコメ、すなわちジャポニカの誕生の地域で、ここを源流とする河川に沿って、ビルマ、タイ、ラオス、カンボジア、ベトナムへ伝播して行くと同時に、長江すなわち揚子江に沿って河口まで伝播し、何らかの理由、多分戦乱に追われ海人となって北九州に到達したという仮説です。俯瞰メール021号

 

【3】「信長公記」太田牛一(中川太古 現代語訳)講談社新人物文庫 2013

この本は、信長の身近に仕えた太田牛一が信長の行動を見たままに記録した、貴重な歴史資料です。後から資料を研究して歴史として描いたものではありません。いわば500年前の実況中継です。この時代は数キロの距離でそれぞれが勢力を張り、たえず戦をしていたことがわかります。お互いに殺し合い首を取り合い、敵方に侵入しては集落を焼き、米や麦を斬り倒すという、とんでもないことを繰り返していた時代の描写が延々と続きます。兄弟で家督を争い、殺しあいます。信長も弟達を全て成敗して織田家の棟梁になります。

 

信長は、少人数を連れただけで行動することが多いので何度か暗殺の企てに会いますが、運の強い人でそれを逃れています。太田牛一は「一城の主ともある人は万事に注意して油断をしてはならない」と言っています。これが本能寺の変という信長の最後に繋がりますね。俯瞰メール039号

 

【4】「日本文化の核心 『ジャパン・スタイル』を読み解く」松岡正剛 講談社現代新書 2020

松岡正剛氏は私が若いときから畏敬する泰斗です。編集工学研究所を立ち上げ「編集」という行為で現代を解き明かしてきました。私の主宰する俯瞰工学研究所は、「編集」により関連するしかし雑多な情報を構造化して、俯瞰的な認識をするという意図で命名しました。そして、「考える」ということは「情報の収集・分析・編集」というプロセスであり、「知的腕力」とはこのプロセスを短時間に高い水準で実行する能力としました。

 

下記の『日本/権力構造の謎』の著者、ウォルフレンによる下りも読ませます。

“日本にはおそらく三つほどのフィクション(虚構)があたかも現実のようにはたらいているにちがいなく、それが日本を「変な国」にさせているのだろうというものです。

一つ目は、日本は主権国家として最善のナショナル・インタレストの選択をしていると諸外国から思われているが、実は・・・。二つ目、日本は自由資本主義経済を徹底していると主張しているけれど、どこかでごまかしているか・・・。三つ目、日本には世界中がまだ理解できていない名付けにくい体制…、をどこかに温存しているのではないか・・・。

そして松岡正剛氏は、こう述べています。

“日本文化の正体はたいそう微妙で、たいそう複雑なのです。グローバル資本主義やコンプライアンスの蔓延が、これらの「一途で多様な日本」や「微妙で截然とした日本」をカラッケツにしてしまわないことを祈るばかりです。”

ご一読を強くおすすめします。俯瞰メール099号

 

【5】「日本4.0 国家戦略の新しいリアル」エドワード・ルトワック、奥山真司 文春新書 2018

本書は徳川家康が開いた江戸幕府を「日本1.0」とし、「明治システム」を「日本2.0」、1945年以降の「戦後システム」を「日本3.0」、そしてその次を「日本4.0」として、それらのビジョンを議論しています。日本人ではできなかった視点で、現在日本の問題点とそれにどのように対処すべきかを独自な視点で解説しています。「目から鱗」といった感じの本です。ご一読をぜひお勧めします。

 

著者の主張は

“日本はいま、また新しいシステムを作る必要に迫られているのではないだろうか。それは「同盟」を有効に使いつつ、目の前の危機にすばやく、実践的に対応しうる自前のシステムである。私はそれを江戸、明治、戦後に続く「日本4.0」と名付けよう。私の考えでは、「日本4.0」が戦わなければならないフィールドは、北朝鮮の脅威、米中対立を軸とした「地経学」(ジオエコノミックス)的紛争、そして少子社会である。”です。俯瞰メール096号

 

<明治以来、日本が目標としてきた西欧について>

【6】「一四一七年、その一冊がすべてを変えた」スティーヴン・グリーンブラッド 柏書房 2012

この本の主人公は、15世紀の初頭にカソリックの教皇秘書であったポッジョ・ブラッチョリーニです。ローマ時代には、アレキサンドリアの大図書館を始め多数の公共図書館が多数の写本を保存していましたが、狂信的なキリスト教が多神教の邪悪な書物と決めつけて破壊しつくしたようです。

 

その暗黒の中世で、唯一ギリシャ・ローマ時代の文献の写本を保存していた修道院から重要な文献を写本によって救済し、ギリシャ・ローマ文明の知を復活させるために人文学者のコミュニティに広めるという、ブックハンターという仕事に全人生をかけていた主人公ポッジョの物語です。写本は印刷技術が発明されるまで唯一の文献の複製の技術であって、ポッジョも高度の技術を持つ複写人でした。

 

彼が何を発見したかと言うと、それは紀元前50年くらいにローマで発表された「物の本質について」という写本です。著者のルクレティウスは共和政ローマ期の詩人・哲学者であり、哲学者エピクロスの宇宙論を詩の形式で解説したものだということです。驚くことに、その内容は現代物理学の認識とほとんど同じ。この世界を構成しているものは、これ以上分割できない原子というものであり、その複合体ですべては作られている、しかもその複合体は絶えず形を変えているつかみどころのないものであると。神という万物の創造主など存在しない。したがって肉体の消滅はすなわち精神の消滅であり、死後の世界など無いと言う、真っ向から神の存在を否定する危険で過激な哲学です。まず驚かされるのは、紀元前にすでにニュートンやアインシュタインにつながる物理学的な認識の構造を持った人々がいたということです。俯瞰メール032号

 

【7】近代ヨーロッパ史」 福井憲彦 筑摩書房 2010

地球的規模で流動化する不安定な国際情勢を俯瞰的に理解するには、現在の支配体制、すなわち“欧米”という世界支配体制の成立と、その後の歴史的な流れを認識する必要があります。19世紀、ヨーロッパにイギリス、オランダ、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、ポルトガル、ロシアという国家が形成され、それに新大陸のアメリカが加わり“欧米”が成立しました。そしてその“欧米”が地球的な利権を奪い合う中で、 2つの世界大戦が起こり、さらに民族独立、冷戦が続きました。冷戦はゴルバチョフの英断により終結しましたが、その残渣が現在のウクライナ情勢を引き起こしています。ですから現在の国際情勢理解し、今後の新世界体制を俯瞰的に理解するためには、 19世紀と20世紀のヨーロッパ史の知識が必須です。

 

ポルトガルとスペインによる大航海時代に始まり、第一次世界大戦とその後までをざっと理解できるコンパクトな本です。著者も言っていますが、全体の流れは“近代ヨーロッパの光と影“です。ヨーロッパの悲劇であった第一次世界大戦の経験がありながら、第二次世界大戦に突入した20世紀の歴史は極めて重要です。従って、20世紀の歴史は別な本で補完した方がいいと思います。俯瞰メール042号

 

【8】「近代ヨーロッパの誕生」 玉木俊明 講談社選書メチエ 2009

本書は、現在のグローバル経済の誕生を解説していますので、今、そして明日の経済の俯瞰的な視野を与えてくれます。

 

この本は、ウォーラーステインが提唱したという「近代世界システム」という視座から解説を展開しています。「世界は一体として動く」。ウォーラーステインによれば、世界はこれまで3つのヘゲモニー国家が出現した、17世紀中ごろのオランダ、19世紀から第1次大戦までのイギリス、そして第2次世界大戦後、1970年代までの米国です。

 

事の初めは、長くヨーロッパ経済の中心であった地中海地域の没落と、それに取って代わった北ヨーロッパ経済の台頭で、オランダはトップランナーとして覇権をまず得ます。地中海経済の衰退は、人口増による深刻な食糧不足と造船用の木材の枯渇よる高騰です。このため穀倉地帯のポーランドからオランダ船が地中海地域へ小麦を輸送するようになります。造船用の木材の高騰により、かつての地中海の覇者であるベネチアの造船業も衰退しています。オランダはスウェーデンに入植し開拓することで造船材と鉄を入手し、船の目地に詰めるタールをフィンランドから、マスト材をリトワニアから、そして麻をドイツから調達し、その代りイギリスの毛織物を輸出する交易を盛んにしていきます。そして造船業とそれを使った海運業を発達させ、これらの交易のハブとしてアムステルダムは北ヨーロッパの覇権を握るわけです。俯瞰メール024号

 

【9】「叛逆 マルチチュードの民主主義宣言」アントニオ・ネグリ, マイケル・ハート NHKブックス 2013

この本の著者、ネグリとハートは、「帝国」2000「マルチチュード」2004「コモンウェルス」2009の三部作によって、1989年のベルリンの壁崩壊以降の世界を分析し、「帝国」「マルチチュード」「共(コモン)」という概念で現在の世界を理解することを提案しています。

ただこの三部作は、いずれもかなりの分量があり、私もいずれは腰を据えて読みたいと思っています。今回紹介する本はその三部作を踏まえた上で、さらに2011年に起きたアラブの春やそれに続く民衆の蜂起とも言うべき活動を踏まえた、革命宣言のような本です。原著の題名は「DECLARATION」ですが、日本語訳で上記のような題名になっています。叛逆ではなく、新しい民主主義の社会を建設することに積極的に参画することを提案している本です。

まず「帝国」とは国民国家を超えてグローバルにネットワークされた、グローバルな主権のことです。すなわち世界銀行やIMF、WTO、そしてグローバル空間を自由に動くグローバル企業、金融、資本主義の「複合体」のことです。

 

これに対して「マルチチュード」は、このグローバル主権の下にいる多様な個人の集合体です。もともとマルチチュード(multitude)とは、「群衆」や「人々の群れ」という意味ですが、この本では積極的に「帝国」に対抗する主体として捉えられています。すなわち「帝国」の権力に抗してグローバル民主主義の構成へと向かう、多数多様な集団的主体をマルチチュードと定義しています。マルチチュードを単なる社会的なクラスと捉えるか、変革の意識を持った「前衛」と捉えるか、ですが。俯瞰メール0061号

 

【10】「暴走する文明」 ロナルド・ライト著 星川淳訳 日本放送協会 2005

本書は、歴史家であり作家のロナルド・ライトの著作になります。俯瞰学の手法の一つは時間的俯瞰ですが、歴史学は時間的俯瞰から独自の解釈と認識の構造を引き出すものです。一読に値する一冊です。「我々はどこから来たのか?我々はどこに行くのか?」というゴーギャンの問いから、この本の語りは始まります。

 

このまま野放図な消費を続ければ、地球環境の破壊とともに人類も滅亡するという警告の書です。墜落した飛行機から回収したフライトレコーダを読み解くように、過去に滅亡したイースター島、シュメール文明、マヤ文明そしてローマ帝国の凋落のプロセスを読み解きいくつかのパラダイムと警告をしています。

 

この本では「文化」とは、ある社会の持つ知識と信条と実践の総体をさし、「文明」とは特殊な文化をさすとあります。ただ、文化のすべてが文明であるとは限らないともあります。人類の歴史の99.5%は旧石器時代であり、文明の発祥以来の時間は5000年ほどで、70年の生涯を70ほどつないだものだという時間感覚を強調していいます。俯瞰メール010号

 

【11】「『西洋』の終わり 世界の繁栄を取り戻すために」 ビル・エモット 日経新聞出版社 2017

この本は、「西洋」という世界を繁栄に導いた理念が、急速に衰退していることを憂える主張です。 「西洋」とは「開放性と平等」です。詳しくは序章にあります。原題はThe Fate of the Westです。The Fate を翻訳者は“衰退” と「異訳」しています。辞書で調べてみると“は、人間の力では如何ともしがたい不可避な運命で、通例不運な宿命で、destiny は定められた避けられない運命で,偉大な結末を暗示する”とあります。本の中の主張は、危機を訴えながらもこの流れをなんとか変えられる、世界の繁栄を取り戻したい、この運命を変えなければならないという主張です。

 

“この西洋の理念は、これまでずっと絶大な成功を収めてきた。しかし、いまその理念が深刻な窮地に陥っている。米欧の西洋の中心地と、 1970年代から真の西洋の中心地になった日本で、衰えの兆しが見えはじめている。経済の失策と失望からはじまった衰退は、高齢化と活気を失った人口動態へと変わり、国際問題への影響力行使に対する無力感になる”と、あります。俯瞰メール0078号

 

<知性について>

【12】「知はいかにして再発明されたか」 イアン・F・マクリーニー・ライザ・ウルヴァートン 日経BP 2010

アレキサンドリアに生まれた図書館、中世の修道院、ヨーロッパの大学、アカデミー、専門分野、実験室そしてインターネットと、知の創造機関を繋いだストーリですが、興味深い知見を得られます。

 

そもそも口述が知識の伝承と伝播であったが、文字による記述が取って変わり、書物として知識を記述するようになった。その書物の収蔵する器として、図書館が発明され、古代の知識はアレキサンドリアの図書館に集積された。各地にも図書館が設立され、知の拠点となった。しかし、ローマ帝国の滅亡と共に、アレキサンドリアの図書館をはじめ各地の図書館は放置され、知も書物も失われた。

 

暗黒の中世の時代は、修道院において知的活動は継続したが、そこはキリスト教の教義の研究が主であり、知の収蔵庫としての図書館に代わる物ではなかった。しかし、文字の文化はその中でも着実に進化して行った。

 

12世紀になると、ボローニアとパリに大学という知の組織ができ、知的な活動が盛んになった。当時の大学とは、教師と学生のネットワークであり、建物はなく、都市の現象であったと言う。職業訓練の場であり、親方(教授)、職人(バチェラー)の関係で、今でも学士のことをバチェラーと起源がここにあると言う。イタリアのサレルノ、モンペリエではモスレムの医学知識を基に医学の大学が生まれた。プラハでは人文科学の大学が設立され、学術は発展して行ったが、大学の「高い」学部は、神学、法学、医学で、リベラルアーツは「低い」学部とされた。俯瞰メール002号

 

【13】「バレンボエム音楽論―対話と共存のフーガ」 ダニエル・バレンボエム著 蓑田洋子訳 アルテスパブリッシング 2008

この本は、天才ピヤニストであり指揮者であるダニエル・バレンボエムの著書です。音楽について語るのではなく、音楽が人の心を清め、知性を磨く力があることを基底の認識にして、イスラエルとパレスチナの平和的な共存共栄の解決を一日も早く実現したいという、崇高な志を熱く訴えている本です。彼ができることとして、音楽を通じてこの目標に全知全脳をつぎ込んでいる活動について語っています。

 

翻訳ではありますが、読んでいると直接彼から話を聞いているかの感覚になるのは、音楽家としての見識だけでなく、彼が持つ、ギリシャ哲学とドイツ哲学の教養の高さ、そして文章としての語り掛けのうまさだと思います。俯瞰メール008号

 

<現代の基盤である都市文明について>

【14】「都市の原理」ジェイン・ジェイコブス 中江利忠、加賀谷洋一 訳 鹿島出版会2011(1971)。

本書は1968年に原著が上梓され、1971年に邦訳されたもので、改めて2011年それが新装再版されましたから、旧い本です。しかし、いまだその真価は揺るぎがないということでしょう。もっと若い時に読んでおけばよかったと思う本は少なくありませんが、本書もその一冊です。ただ、読みやすい本ではありません。ジェイコブスの研究に関しては、文末のURLにある細谷裕二さんの研究ノートが解り易い解説になっています。

 

ジェイコブスの主張は鮮烈です。まず「都市ありき、そして農村が発生する」という常識を覆す言明です。「農業自体も都市で生まれたのではないか」とも。すなわち「先史時代でも農業と動物の飼育は都市で始まった」という論理的な帰着を導いています。

 

都市の発展については、「新しい仕事が古い仕事に盛んに追加され、分業を増やしていくところが都市である」としています。「モノを新しく開発していく経済は拡大発展する、新しい種類の製品、サービスを追加するのでなく、ただ古い仕事を続けて繰り返すだけの経済は、あまり拡大せず、当然発展もしない」というくだりは、経済という言葉を企業に代えれば、そのまま当てはまります。すなわち「都市の発展は新しい仕事が、盛んに古い仕事に追加されることにある」という主張が、二番目の言明です。新しい仕事が旧い仕事に追加された例として、婦人服の仕立ての仕事にブラジャーの開発が新しく追加された仕事として本書でしばしば引用されています。 俯瞰メール014号

 

【15】「クリエイティブ都市論」リチャード・フロリダ 井上典夫訳 ダイヤモンド社 2009

本書は、夜間光の衛星写真の分析の上に、GDPやイノベーションなどの経済データを重ね合わせる研究結果をもとに、世界の中で、経済活動が活発な20-30の地域が、総人口の5分の1にも満たないが、経済活動の3分の2、イノベーションの8割を産出していること、さらに上位10地域が、人口は世界の6.5%にも満たないが、経済活動の4割以上と、イノベーションの半分以上を独占している知見を披歴しています。これを生み出している人たちを、クリエイティブクラスと定義しています。また、こうした地域を「メガ地域」と名付け、世界はフラットではなく、少数の地域が経済活動で高いピークを形成する、スパイキーすなわち鋭いピークがいくつか存在する世界であると主張しています。上位5地域の2つは日本にあります。俯瞰メール013号

 

<ビジネスイノベーションについて>

【16】「イノベーションへの解」クレイトン・クリステンセン、マイケル・レイナー 翔泳社 2003。

クレイトン・クリステンセンは、1997年に「イノベーションのジレンマ」(邦訳2001)の提案で一躍有名になった人です。この本を読んで影響を受けた人は多いと思います。そこにおける彼のイノベーション理論は、イノベーションには、従来製品の改良する“継続的イノベーション”と、従来製品の価値を破壊する全く新しい価値を生み出す“破壊的イノベーション”があるということです。そして優良企業は、事業の基盤である製品を磨いていく“持続的イノベーション”を推進するため、“破壊的イノベーション”を無視せざるを得ない、結果としてこの新しい破壊的イノベーションにより、企業の地位を失っていくということです。事例として、コンピューターのハードディスクを使って明快な解析をしています。

 

ただ事象の分析はあっても、どうしたら“破壊的イノベーション”を起こすことが出来るかということは、ほとんど解説されていませんでした。今回ご紹介する「イノベーションの解」は、その答えを与えるものです。そして共著になっているように、かなり強力な研究チームを組んで破壊的イノベーションのメカニズムを解明し、経営者がいかにそれを実践するかを丁寧に書いています。加えて関連する経営学の研究成果をフンダンに引用して解説しているので、現在の経営学の俯瞰的な理解が得られます。彼の三部作の中で最高で、これ一冊読めばいいでしょう。俯瞰メール044号

 

【17】「コトラーのマーケティング3.0」 フィリップ・コトラー他 朝日新聞出版2010

コトラーは、マーケティング理論では世界で並ぶ人がないほどの権威者ですが、その最新版と言っていいでしょう。グローバリゼーション、地球環境、デジタル革命という、世界の急激な変化を受けて、それに対応する新しいマーケティング理論を提唱しています。すなわちこの本が提唱するマーケティング3.0とは、企業が消費者中心の考え方から人間中心の考え方に移行し、収益性と企業の社会的責任がうまく両立する段階であると言っています。

 

また夥しい最近のビジネス書のキーワードが引用されていますので、ビジネスマネジメントやマーケティングの最近の状況を俯瞰的に理解できます。さらに過去60年のマーケティングの歩みと称するパラグラフもありますので、マーケティングの俯瞰的な理解ができます。最近は「マーケッティング4.0」を上梓しています。俯瞰メール031号

 

【18】「世界を変えた地図グーグルマップ誕生の軌跡」ビル・キルデイ TAC出版 2018

グーグルマップの生みの親ジョン・ハンケの学生時代からの友人で、今も同僚のビル・キルデイがその人生のドラマを描いたものです。読んでいると、しばしばドラマを見ているような錯覚に陥る文体です。彼にとってジョン・ハンケとの学生時代の出会いが彼の人生を決めました。

 

そのドラマは、現在の世界をいわば牛耳っているGAFAが胎動を始めた1990年から2010年までのシリコンバレーの物語です。著者は日本的に言えば文系ですから、技術的な語りがほとんどありません。本人も書いていますが、先端的な技術に対する洞察力はなかったようです。マーケティングの人です。ですからベンチャーという社会の人間模様を描いています。買収や統合の中で才能ある人々が繰りなす、確執や協調が生々しく描かれています。テクノロジーについてはいろいろな資料がありますが、ベンチャーという組織の中の人間模様はあまり窺い知ることができませんでした。内部の人間しか知り得ない興味深い情報です。俯瞰メール088号

 

【19】「2050年の世界」英エコノミスト 文芸春秋 2012

この本は、英国の経済誌『エコノミスト』の編集部が20人の専門家に依頼して編集した、貴重な知識の構造化です。ご一読を強くお勧めします。2012年の出版ですから、現在すでに4年経過し予測は結果が出ていますので、そこも注意して読むと興味深いです。そして予測された近未来は現実になりつつあります。20人の予測の手法には共通項があります。まず過去を概観していますが、それを単に未来に外挿することなく、その断絶を積極的に見越していきます。そしてアジア・中国を重視することです。悲観論的な未来論が多い中、積極的な前向きの思考です。

最後に、ちょっとおもしろい話がありましたので紹介します。

“企業は力のある経済組織というだけではなく、他人との協調を求める人間の欲望をある程度満たしているはずだ。Companyという言葉は、2つのラテン語“cum”と“pene”に由来し、「ともに食事をする」という意味がある” ということです。食事会は重要です! 俯瞰メール046号(2015年2月)

 

<健康についての一冊>

【20】「ヘルシーエイジング」アンドルー・ワイル 角川書店 2006

著者のアンドルー・ワイルは、統合医療の専門家です。統合医療とは西洋近代と補完代替医療、すなわち漢方や食事療法を組み合わせた全身医療です。ともかく圧倒的な知識を俯瞰した、解り易く納得できる解説ですから、改めて自分の生活習慣を反省することになるでしょう。健康に関する本は数多くありますが、これで決まりです。特に食すべきもの、いけないものの知識は必須です。折角ですから、彼の食に対する助言を紹介しておきましょう。

 

 まず油脂には、オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸という2種類の多不飽和脂肪酸があり、適切な割合で摂取する必要があります。炎症を抑えるオメガ3脂肪酸は摂取が少ないので、これを増やすやす必要があります。まず種子(クルミ、亜麻、麻の実)、植物油(大豆、キャノーラ)、海草、魚(サケ、イワシ、ニシン、サバ、ギンダラ、ムツ)です。

 

食べてはいけない油は、菓子に使われるショートニング、マーガリン(絶対食べてはいけない)、酸化しているファーストフードの揚げ物です。紅花油、ひまわり油、コーン油、ごま油、大豆油は、オレイン酸入り以外は控えること。今、市販されている大手のものはオレイン酸が含まれている製品が多いと思います。むしろ、自然食品の店の製品のほうが含まれていないかもしれません。さらに高温にした油、したがって天ぷら・フライの後の油は捨てる!お勧めはエキストラバージンのオリーブ油です。

 

次に炭水化物は、グリセミック指数の小さいもの、すなわち、ゆっくり糖として吸収されるものをとることです。したがって摂ってはいけないモノは、砂糖、特に白砂糖、パン、ポテト、菓子、ケーキ、スナック、白米(うどん、ソーメンは粉食のため白米より悪い)・・・・を摂らず、全粒の穀物、例えば玄米、豆類、そして野菜、果物(熱帯性よりも温帯性のベリー類、チェリー類、リンゴ、ナシ・・・)を摂ることです。

 

蛋白質については、動物性蛋白を避け、肉より魚。魚は食物連鎖の上を避けることと、底魚を避け、PCB、ダイオキシン等の毒物を摂取しない、出来るだけ植物性蛋白にする。すなわち大豆、豆類を撮るということです。何しろすでに紹介したように、牛乳の蛋白はがん細胞を活性化しますし、動物性油脂は乳がんとの相関係数が0.8-0.9ですから。

 

微量栄養素をとるために、もっとたくさんの果物と野菜を摂ること、アントシアニン、カロテノイドをすくむ赤、紫の果物です。ブルーベリー、ブラックベリー、ラズベリー、さくらんぼ、ブドウ、ザクロ、赤キャベツ、ビート・・。ここでホットしますね、赤ブドウすなわち赤ワインは飲んでいいようです!日本にはもっと多様な果物がありますので、これ以外の果物もいいでしょう。野菜は全て良いのですが、カテロイドを摂るのにホウレン草、トマト、カボチャ、サツマイモ、人参と緑黄野菜ですね。チョコレートも、砂糖なしのダークチョコレートは許されるようです。あと白茶、緑茶、ウーロン茶もポリフェノールの供給源です。

最後に、ウコンと生姜にあるクルクミンは、抗消炎作用があるのでもっと料理に使った方がいいと言っています。 俯瞰メール016号

 

◆雑感・私感◆

自粛要請に関する政府と東京都のコロナ対応に、日本人の思考の基底が見えます。

白黒をハッキリさせる西洋の二項対立の思考と、白黒の間のグラディエーションを探る日本文化の差違です。

 

コロナ危機に対する国家としての意思決定は場当たり的で後手後手ですが、今回は思考モデル差違ではなく、当事者の資質です。単に無能です。優秀という虚構の霞が関の官僚と、資質のない政治家という組み合わせは、「国家権力」不在であることを顕在化しました。白黒の間のグラディエーションを探ることを短時間でやる知的腕力の問題です。

 

そしてコロナ危機に見えたリーダーシップの大きなコントラストです。ドイツ、イタリア、イギリスのTOPに比べると、トランプと安倍首相のリーダーシップの能力があまりも見劣りします。マスクの一件が証左です。この30年変われない経団連企業のTOPと共通します。日本は救われませんね。今や台湾、韓国に劣ります。

日露戦争の時、無能な乃木大将を外して指揮を執った児玉源太郎はいませんか。

 

◆今後のご案内◆

俯瞰メールの100号を配信しました。12年間でした。一つの世紀が終わったと思います。しばらくお休みを頂いてⅡ世紀の構想を考え、次はⅡ-001号から始めたいと思います。

長い間のご愛読まことに有難うございました。

 

その間、ツイッターは“ProfFukan”で、ブログは最近はやりの「note」の“ProfFukan”(https://note.com/fukanfukan)で発信していきます。フォローをお願いします。

 

◆内容・記事に関するご意見・お問い合わせ/配信解除・メールアドレス変更は下記まで

webmaster@fukan.jp

ご案内などは、今後とも随時送らせていただきます。

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◆俯瞰MAIL100号(2020年4月30日)

発行元:一般社団法人俯瞰工学研究所

発行人:松島克守

編集長:松島克守

配信人:石川公子

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