◆俯瞰メルマガ第 88号◆2019年5月6日発行

俯瞰メルマガ88
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◆時候のご挨拶◆

早いもので田圃は地起こしされ、水が入っています。すぐに田植えです。水が張られた田圃は、生命力を感じさせます。小学校も中学校も、周囲はすべて水田でした。自然の中で四季を感じながら育ったことが、今の自分のどこかに埋め込まれていると思います。そして今は、どっぷりと東京の空気につかっています。そして18歳から住んでいる東京が、自分に合っていると思っています。

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● 揺れる、軋むヨーロッパ

● 中国は鄧小平の韜光養晦に立ち返るのか

● ファナックの工場見学に行ってきました

● スマートシティモデルで拓く未来社会

● 第66回俯瞰サロン(5月度・計画中) 

● 俯瞰のクッキング“山菜の季節”

● 俯瞰の書棚 “世界を変えた地図グーグルマップ誕生の軌跡”

● 雑感・私感

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◆揺れる、軋むヨーロッパ◆

ヨーロッパは揺れ動き、不安定な状況になっています。その根本的な原因は、「移民」と「経済格差」に対する政策にあります。これをポピュリズムで煽る政党が、各国で勢力を伸ばしています。北欧のフィンランドでも、社会民主党(SDP)が得票率17.7%で第1党となりましたが、第2党は反移民を掲げる右派のフィン人党で、得票率は17.5%です。ほとんど得票率に差がありません。

 

そして各国の右派政党は反EUで結集して、今月の欧州議会選挙でEUの主導権を握ろうとしています。彼らが躍進すれば EUは軋むことになります。

イタリアは、すでに右派政党が政権に参画していますが、経済政策で政権内で対立が起きています。もともと不安定なイタリアの政治ですが、独仏の懸念を押し切って「一帯一路」にG7として参加しました。

 

フランスのノートルダム火災も思わぬ方向に展開しています。すぐに集まった巨額の寄付に対し「黄色いベスト」参加者は、経済格差を放置して貧困層に支援をしていないのに、大富豪が巨額の寄付金をしたことに反発しています。また大統領の強い再建の宣言にすら、反発しています。ここでも、経済格差と移民が運動の基盤にあります。

 

ウクライナの大統領選挙は、本人すら驚く結果です。国民が現政権に反旗を翻し、お笑い芸人のゼレンスキーを次期大統領に選びました。この後どうなるか、全く予断ができません。ロシアすら態度を決めかねているようです。

 

イギリスは、政治が制御不能の状態になってしまいました。先日行われた地方選挙では、二大政党の保守党と労働党は大きく後退し、メイ首相の政治生命も危ぶまれます。国民投票の再実施の可能性が高まりました。世論調査ではEU残留派の方がやや優勢ですから、結果としてブレグジットは、どんでん返しになるか、国会で保守党と労働党が苦渋の選択で、メイ首相の離脱案を承認するかもしれません。

 

とにかくEUは揺れ動き、軋んでいます。独仏は、ロシアと中国に対して警戒感を高めていますが有効な国際政治を展開する力が弱まっています。

 

 

各国右派政党が反EUで結集 欧州議会選、もくろむ野望

https://www.asahi.com/articles/ASM4P5K52M4PUHBI00R.html 

英統一地方選、2大政党とも苦戦 EU離脱混乱響く

https://jp.reuters.com/article/gb-local-election-idJPKCN1S91FK 

ノートルダム火災、「黄色いベスト」参加者の悲しみはやがて怒りに

https://newsphere.jp/national/20190501-1/ 

イタリア、景気対策を閣議承認 連立政権の対立に注目集まる

https://jp.reuters.com/article/italy-politics-idJPKCN1S01A2 

フィンランド総選挙 中道左派が勝利、政権交代へ

https://www.cnn.co.jp/world/35135763.html 

ウクライナのゼレンスキー次期大統領につきまとう「一発屋」の不安

https://globe.asahi.com/article/12316876 

 

◆中国は鄧小平の韜光養晦に立ち返るのか◆

先日の「一帯一路」の会議は、日本を含む150カ国以上が参加し、37カ国が首脳級を派遣しました。パックスアメリカーナに対抗する、国際社会における中国の力を改めて見せつけた感もあります。そして会議期間中に、中国企業が主体になって640億ドル(約7兆円)余りの事業協力に合意しました。

 

国際社会から厳しく批判されている「債務のワナ」についても、習近平国家主席は「国際ルールや標準を幅広く受け入れることを支持する」と発言して批判をかわそうとしていました。ただアメリカは「一帯一路」に強い懸念を持っており、今回の会議に参加していません。そして「一帯一路」は、世界各地に新たな軍事拠点を建設していくとみています。すでにアフリカのジブチには基地を確保し、スリランカ、ギリシャに考案を確保し、イタリアでも港湾を確保しようとしています。

 

米中の貿易戦争の着地も依然として不透明です。ギリギリ最後の妥協点を探っていると思いますが、またまたトランプ大統領は、5月10日には25%の関税をかけるとドスを付きつけて交渉しています。

 

すでにアメリカの中国制裁は、中国経済に相当な影響を与えているようです。中国政府は減税などで企業救済を図っていますが、なんとしてもアメリカの制裁を解除して正常な経済関係を構築したいと考えているでしょうから、最後はかなり譲歩をするのではないでしょうか。

 

結果として日本との関係改善も進んで、習近平国家主席はG20に合わせて日本を訪問するとのことです。これを機会に、かなりの日中関係の改善が進みそうです。最近尖閣列島のニュースもほとんどありません。

 

 「一帯一路」の推進は、中国経済の維持拡大のために必須の国家戦略とすれば、国際社会のルールに従う必要がありますから、中国が強引な強国路線から、鄧小平が説いた「韜光養晦(ようこうとうかい)」即ち、爪を隠し、才能を覆い隠し、時期を待つ、戦術に戻るかもしれません。

 

ただアメリカは、共和党も民主党も中国とは新冷戦という認識を共有していますから、国際的な緊張は続くでしょうが。

 

習近平「一帯一路」大演説で再び見せた中華覇権確立への執念

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/64400 

「一帯一路」に突き進まねばならない中国の事情

https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00002/043000319/ 

「一帯一路」の首脳会議が閉幕、640億ドル超規模の事業で合意

https://jp.reuters.com/article/china-silkroad-xi-idJPKCN1S501M 

中国、「一帯一路」で世界中に軍事基地建設へ 米国防総省報告書

https://www.afpbb.com/articles/-/3223469 

米中貿易協議、30日に再開 追加関税の扱いが焦点

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44345270Z20C19A4EA4000/ 

焦点:対米貿易摩擦が直撃、中国メーカー「苦肉」の生き残り策

https://jp.reuters.com/article/usa-trade-china-cantonfair-idJPKCN1S12HN 

習近平氏 6月に訪日意向 国家主席として初めて G20に合わせ

https://mainichi.jp/articles/20190424/k00/00m/030/214000c 

 

◆ファナックの工場見学に行ってきました◆

忍野村にあるファナックの工場に行ってきました。何十年も前から一度見学したいと思っていましたが、なかなか機会がなく、やっと実現しました。特に見学を制限しているわけでは無いようですが、驚くことに、工場見学は会長と社長の承認が必要とのことで、今回もこの承認の下に実現したようです。

 

森の中に広く散在するファナックの工場と研究所の建物ですが、雰囲気はポートランドのナイキのキャンパスに似ていました。森の中ですから、運動施設や福利厚生施設が充実しています。既に敷地が満杯で周辺を買収しているとのことです。

 

すべての建物が黄色に染められているかと思いましたが、研究所は赤レンガ風の建築でした。本部棟は白でした。ただし、出されたおしぼりは黄色です。

 

ファナックの創業者の稲葉清右衛門さんは東大精密工学機械科の先輩にあたり、最初にお会いした時は富士通の部長でした。積極的に就職の勧誘をしていました。その後独立して、何人もの同級生や後輩がファナックに入社しました。ファナックの立ち上げに東大の精密工学機械科の人材は大きく貢献したと思います。

 

そして稲葉さんが発明したパルスモータという技術は、日本の工作機械業界のNC化に大きく貢献しました。送り機構にスライダーとボールねじを付けた機械を用意すれば、ファナックの制御システムでNC工作機械が完成するわけです。当時のNC技術は稲葉さん、通産省機械研究所の研野さん、そしてOKIの岸さんがリーダーだったと記憶しています。岸さんはその後も長くファナックに勤務していたと聞いています。

 

当時聞いた話ですが、稲葉清右衛門さんは酒豪で有名で、稲葉虎右衛門と言うあだ名があり、ならば虎の黄色をコーポレートカラーにしよう、と決めたと聞きました。時効でしょうが、酒気帯び運転で橋に車をぶつけ、翌日部下に回収してくるように言ったという話もあります。また社内では、ハエ叩きを手に持っていたとも言われていました。社員全員がモーレツ社員で、午前1時に会議の招集がかかったとき、マネージャ全員社内にいたというエピソードも聞きました。なにしろ当時はたくさんの友人が社員でしたから情報は豊富でした。

工場見学に話を戻しますが、ロボットの部品加工や組み立てにロボットが多数投入され、ロボットでロボットを作るという話に近い所もありますが、ロボットが不得意な工程もたくさんあり、ここは人間が投入されていました。

 

今回の見学で1番印象に残ったのは、100 m ×300mの建屋の信頼性保証センタです。徹底した信頼性の試験がされていました。ここまでやっているのかと驚かされました。この信頼性保証センタを見学した顧客は、ファナックの品質を固く信じるでしょう。

 

最近日本の製造業は不祥事続きで、検査工程の手抜きやデータ偽装を起こしています。このセンタを見学して、心を入れ替える必要があると思います。品質保証なくして製造業はありません。

 

工場見学の印象をひとことで言えば「ファナックは世界最強の製造業である」です。ただあまりにもハードウェアに軸足を置いているので、いろいろ人工知能の応用技術を見せていただきましたが、これからのスマートファクトリーの世界についていけるか、という懸念も残りました。トヨタ自動車の競争相手がGoogleになったように、今のテクノロジーの世界に境界はなく、ある意味、戦国時代ですから。

 

◆スマートシティモデルで拓く未来社会◆

日立製作所在職中から国際的にスマートシティのモデルを追及してきた、畏友の河野通長さんが「スマートシティモデルで拓く未来社会: まちづくりを超えて成長エンジンへと深化するスマートシティ」という本をKindleで出版されたので、その内容を紹介しましょう。

 

まず、“スマートシティとは単に空間的な都市のありようを超えて、住民が希求するライフスタイルの実現に向けてそこに横たわる課題を住民と共に解決し、そのサイクルを繰り返すことを通じて住民の生活の質を改善しつづけるエコシステムとして理解されている。”です。

 

スマートシティという言葉は、いろいろな視点で使われていて内容がいまいち正しく理解されていません。その理由の1つは複数の源流があるようです。

 

“初期のスマートシティブームにおいてアメリカやヨーロッパでは情報通信技術を活用した都市をスマートシティと呼ぶ考え方が支配的であった。この様に情報通信技術の利活用に偏った観方のスマートシティがブーム初期の一つの源流であるとすると、もう一つの源流は地球環境に配慮した都市ということができよう。環境モデル都市は2014年までの間に合計23の都市が指定されたが、各都市が取組んだテーマは省エネルギー活動や再生可能エネルギーの活用などによる温室効果ガスの排出削減が中心となっていた。”

 

そして日本のスマートシティについては

“日本ではここ数年来「スマートシティ」という言葉は「死語である」とさえ言われてきたが、ここに来てにわかに復活している様に思われる。日本における「スマートシティ」の理解は、省エネ都市、再生可能エネルギーを活用した都市、あるいはエネルギー問題への注力が大きい都市というイメージが定着した様に思える。”

 

そして、スマートシティ推進モデルの構成として、

“行政(自治体)、市民(住民)、大学(地元の大学)、ならびに産業界の四者が連携するパートナーシップが立ち上がっているということである。この「四者体制」こそは、近年ヨーロッパにおいてオープンイノベーションの仕組みとして議論されている「クアドルプル・へリックス」そのものであり、都市の課題に取り組む仕組みとイノベーションの仕組みとが、ここで一致点を見出したのである。また、住民を含む四者連携の中で、イノベーションの成果のユーザとも言える住民との協創の場として「リビング・ラボラトリー」の考え方がオープンイノベーションを推進する仕組みとして注目を集めている。”

 

日本ではよく産学連携という構成モデルが標榜されますが、私の知る限りうまくいっているプロジェクトは、ほとんどありません。地域振興の国の補助金が産官学連携を前提に配布されます。地方自治体が中心となって産官学の組織を作りますが、もともと地域に対する熱い思いがない産や学のメンバーに入っても、実質が伴わず、補助金の終わりがプロジェクトの終わりになります。

 

とりわけ住民、市民が自分たちの地域を本気で活性化しようと思いからプロジェクトを企画し、それを行政や大学そして地元企業が協力することが必須ですが、なかなかこの形になりません。行政の役割として、

“市当局の役割はその都市の課題を見出す事、解決に向けた四者連携の仕組みを牽引すること、そして課題解決に必要なデータを公開することの三つが重要である。”とありますが、最近ではデータの公開は少しずつ進んでいます。

 

スマートシティモデルの要点として、

“スマートシティは都市という構造物にテクノロジーを実装して、その機能を高めたモノではなく、住民が希求するライフスタイルを実現するためのプロセスであり、そのために必要な仕組みを整備する活動であるという事である。またこの活動が都市の成長エンジンとなっているという点を強調したい。”

 

そして現在の日本政府の政策に対して、

“実装されるべき技術が先にあってそれらを試行する場を作ることに戦略特区制度を活用する、という姿勢で描かれている。「旧型のスマートシティ」を特徴づける「産業主導」、「技術指向」のモデルから脱していない。初期のスマートシティの理解でエネルギー偏重型からICT偏重型に移行したに過ぎず、今日的なものへの進歩とは認め難い。”と厳しく現状を批判しています。

 

私の知る限り参考にすべきケースは、徳島県の神山町のIT企業誘致による地域振興のプロジェクトですが、そこには、

“NPO法人グリーンバレーを27年間に亘り牽引してきた理事長(2017年に退任)の大南信也の働き無しには現在の神山町は無かったであろう。”という市民の熱意が必須の成功要件です。

 

そして筆者の主張は、

“スマートシティは都市という構造物のあり様や姿ではなく、常に変化をもたらすエコシステム(生態系)であるという点にある。そしてオープンイノベーションにおける「クアドルプルへリックス」の実現こそが、スマートシティモデルによる超スマート社会の実現のカギである、という点が本書の主旨である。”です。

 

◆俯瞰サロン◆

 5月度に開催予定の第66回俯瞰サロンは、現在、計画中です。決まり次第、ホームページにてご案内申し上げます。

俯瞰サロン:https://www.fukan.jp/俯瞰サロン/

 

◆俯瞰のクッキング “山菜の季節” ◆

この季節は山菜の季節です。たらの芽、ヤマウド、フキ、ワラビはよく知られて東京でも店で見かけますが、コゴミ、コシアブラ、姫ウコギなどは、山あいの町では売っています。山菜は新芽ですから何か命をもらう感じもします。

 

ワラビはアク抜きが厄介です。他はさっと湯がけばアク抜けます。少量でもかなりのアクが出ます。その後お浸しにしたり、味噌汁に入れたりしますが、お浸しが山菜の風味を味わうには一番いいかもしれません。他の何かと混ぜて、かき揚げもおいしいです。

 

お浸しの変形として、ホワイトバルサミコとオリーブ油をかけて食べてみましたらおいしかったです。ホイトバルサミコはあまり一般的ではありませんが、いわゆる濃厚な色が付いたバルサミコと違って透明ですから、色々なものにかけて楽しめます。例えばスモークサーモンによくかけて食べます。 一ランク上の美味しさになります。

 

たらの芽は天ぷらが有名ですが、オリーブ油やバターで焼いて塩胡椒で食してもおいしいです。コゴミはさっと茹でてそのまま食べるとおいしいです。

 

昔の人は畑の野菜がまだない春に山に分け入り、野菜の代用として食してきたのでしょう。私は、直接山に入る力も気力もありませんから、お店で買います。

 

◆俯瞰の書棚“世界を変えた地図グーグルマップ誕生の軌跡” ◆

今回は「世界を変えた地図グーグルマップ誕生の軌跡」ビル・キルデイ、大熊希美(訳)  TAC出版 2018です。

グーグルマップの生みの親ジョン・ハンケの学生時代からの友人で、今も同僚のビル・キルデイがその人生のドラマを描いたものです。読んでいると、しばしばドラマを見ているような錯覚に陥る文体です。彼にとってジョン・ハンケとの学生時代の出会いが彼の人生を決めました。

 

そのドラマは、現在の世界をいわば牛耳っているGAFAが胎動を始めた1990年から2010年までのシリコンバレーの物語です。著者は日本的に言えば文系ですから、技術的な語りがほとんどありません。本人も書いていますが、先端的な技術に対する洞察力はなかったようです。マーケティングの人です。ですからベンチャーという社会の人間模様を描いています。買収や統合の中で才能ある人々が繰りなす、確執や協調が生々しく描かれています。テクノロジーについてはいろいろな資料がありますが、ベンチャーという組織の中の人間模様はあまり窺い知ることができませんでした。内部の人間しか知り得ない興味深い情報です。

 

この本を読む前に、下記の年表を頭に入れておいた方がいいでしょう。この時代にGAFAが支配する「現在」が作られた時代です。インターネットが立ち上がり、鋭い洞察力を持ったエンジニアが新しい時代を切り拓いていった時代です。

 

残念ながら日本はバブル崩壊ということもあって「選択と集中」という縮み志向の中でこの歴史的な大波を逃してしまい、世界経済の中で存在感を失ってしまった時代でもあります。また日本の製造業があまりにもハードウェアに拘泥して、この大波の本質を理解する洞察力がありませんでした。日本にも沢山いた優秀なエンジニアは、大企業の官僚的組織の中で才能をそがれて、感性も失われた時代です。リストラの結果、中国や韓国そしてアジアに、 意にそぐわない技術移転をすることになりました。

 

1990 CERN のティム・バーナーズ・リーWWWを実装

1993 NCSAのマーク・アンドリーセンMosaic を開発・リリース

 ジェン・スンがNVDAを設立(人工知能、自動運転)

1994 Amazon設立

1995 インターネットの商業化

   マイクロソフト社がWindows '95 を発売

1998  Google設立

   テンセント設立

1999 アリババ設立

2000  スティーブ・ジョブズがAppleのCEOに復帰する

2001 ジョン・ハンケ Keyhole社 設立(Google Earth Map)

2003 テスラモーターズ設立

2004 Google Keyhole社を買収

Facebook設立

2005 Google Mapサービス開始 

2006 Amazon AWS開始 クラウドコンピューティング

2007 iPhone発売

   ストリートビュー 公開

2008 Airbnbサイト開設

2009 Uber設立

   Googleが自動運転車の公道実験開始

2010 DeepMind設立(深層学習 2014年Google買収)

   ジョン・ハンケがGoogleの社内ベンチャーとしてNiantic Labs設立

2012 ヒントン教授のトロント大学のチームがディープラーニングで人間を超えた

2015 Googleの全自動運転カーが公道走行

   Niantic, Inc. 設立(Pokémon GO)

2016 Pokémon GO公開

2017 GoogleのAlphaGoが世界トップ棋士に勝利(DeepMind)

 

ジョン・ハンケは、「パワーズ オブ テン」というIBMの資金援助で作られた短い映像を見て刺激を受け、会社を立ち上げたようです。私は30数年前に見ましたが、強烈な刺激を受けました。当時はIBMの天城にある顧客研修施設でよく使っていました。一見の価値はあります。(下記URL)

 

 資金難に苦しみ、社員の給料を半分にし、友人から借金するようして資金を調達したジョン・ハンケのKeyhole,Incは、ちょうど上場が決まったGoogleから買収のオファーを受け、安定した開発環境を手に入れました。その時の社員が29名です。訴訟を抱えていたため買収処理に時間がかかり、上場前のGoogleの株を入手するチャンスを逃した場面では、人生における運というものを感じさせました。

 

その時のGoogleのプレス発表です。

「Keyholeは人工衛星や航空機などで撮影された画像と共に、道路地図情報、建物や企業情報など、さまざまな情報を組み合わせた合計12テラバイト以上にものぼるデータベースを保有している。同社ではこのデータベースを閲覧するためのソフトウェアを開発し、地球を上から眺めているようなリアルな画像を表示するソフトウェアを提供している。これによって宇宙から一気に道路までズームインしてホテルの駐車場の場所を確かめるなど、地図情報の扱い方を一変させる技術を保有している。」

 

この時は、Googleがこの会社をどうしようとしているか誰もわからず、買収された人々もGoogleがなぜ自分たちの会社を買収したのか、どうしようとしているのかも理解できなかったようです。そして比較的初期のミーティングで、グーグル創業者のラリー・ペイジが、ビジネスプランの提案に対し「君たちは、それよりもっと物事を大きく考えた方がいい」と言ったことがだんだんわかってきます。全く考えているスケール感が違います。

 

いろいろな逸話が盛り込まれていますが、ストリートビューが開発された経緯が興味深いので紹介しましょう。

いま人工知能で最前線を走っているNVDAの創立者のジェン・スンが、“「ストリートレベル(通行人目線)までズームインできるようにし、プロシージャル(3Dグラフィックスで作成)にすることを考えていますか?」とジョン・ハンケに聞いた。ジョン・ハンケは「いつの日か、ストリートレベルまでズームインした画像の地図とリアルな3D建築物を表示する地図とを切り替え、そこを実際歩くように移動する体験は作れるだろう」と言った。”

 

技術的な補足をしますと、ジェン・スンはゲームとコンピュータグラフィックスの人ですから、街の景色はコンピュータグラフィックスで作る話をしています。一方ジョン・ハンケは地図の人ですから、現地に行って撮影することを考えています。彼は物理的な世界とデジタルの世界を一体として認識できる「デジタルツイン」の人です。

 

またラリー・ペイジは独自に事を進めていました。それはストリートレベルで 街の様子を撮影するというもので、ペイジがスタンフォード大学のコンピュータサイエンスの教授、マーク・レボイと個人的に始めていました。自ら国道101をドライブして動画を撮り、それを編集して人に見せています。彼は世界中のすべての情報を整理するというビジョンを掲げていますが、目の前の街並みという物理的な世界もその中に取り込もうとしていたのです。彼もまた「デジタルツイン」の人です。

 

“ストリートビューは2002年にラリー、マリッサ、セルゲイがドライブしたあの土曜日の実験から始まった。それはグーグルストリートビューの画像からコンピュータビジョンの技術で交通データを抽出し、全世界の交通網の情報を書き出すプロジェクトだった。” ストリートビューの画像からコンピュータビジョンの技術で交通データを抽出これがイノベーションです。自動運転のマシンビジョンの技術とデジタル地図の技術を融合させています。

 

この3人はスタンフォード大学出身のエリートで、Googleの中核を構成している人脈でもあります。マリッサは相当のやり手で社内に敵が多くてジョン・ハンケのグループと社内政治で争っていました。

 

当時のGoogleの社内の雰囲気、エンジニアの価値観がわかるいくつかのフレーズを紹介しましょう。

“グーグルとのミーティングにいくつか参加したが、そのどれにおいても価格や営業、売上見込みについての話題が出てこないことに驚いていた。お金の話はほとんどしないか、稀に話される程度だった”

“グーグル社員の多くは、プロダクトの利用料を得るという概念に馴染みがなく、そもそも多くのチームは売上を重要視していなかった。グーグルはユーザのためになるプロダクトを作ること、そしてテクノロジーで世界を変えることだけに関心があった。”

 

またシリコンバレーの住宅事情も知ることができます。

“私からすると、国道101号沿いの住宅には序列があるように見えた。単身の社員はサンノゼかサンタクララに住む。マネージャークラスはサニーベールやマウンテンビュー。ディレクターはパロアルトにメンローパーク。バイスプレジデントやCEOはアサートンやウッドサイドだ。”

 

また、“彼女は、生まれて2ヶ月半の娘ギャビーをオフィスに連れてきても良いという条件で、Keyholeでのパートタイムの仕事を引き受けた。”と自由闊達なオフィスだったようです。

そしてGAFAの世界の基盤となったデバイスが登場します。

“2007年1月9日、スティーブ・ジョブズがモスコーニ・センターのステージに立ち、革新的なプロダクトを発表した。この時、Geegleの社員も初めてiPhoneを目にしたのだった。iPhoneが発売されてから 18ヵ月で、すべてのコンピュータやモバイルを足し合わせた数より、たった1種類のデバイスからの(Googleの)利用数の方が上回っていたのだ。”

 

当時のシリコンバレーは、数多くベンチャー企業が生まれそして潰れていった時代ですが、そのために才能あるエンジニアが離合集散を繰り返し、それぞれの才能を補完しながらイノベーションを興していった様子が生々しく語られています。かつて同じ企業で働いた関係、社内での新しい関係、そして協創と競合と確執の人間関係とチームがイノベーションを興していきます。 Googleのサービスが沢山の才能を持ち寄った結果であることがよくわかりました。グーグルマップで現在位置を示す青丸のマークもオープンイノベーションの結果です。

 

著者は次のような出会いもありました。

 

“私は度々グーグラーのサンダー・ピチャイと一緒になった。彼はグーグルツールバーとグーグルデスクトップのプダクトマネージャーで、マリッサに報告していた。この時点で、彼はディレクターですらなかった。(サンダー・ピチャイは2015年にグーグルのCEOに就任している)。

 

あの“Uber、その他何百ものサービスの経済合理性が適うようになったのは、ベースとなる地図を作るという重労働を、どこかの会社が肩代わりしたからだ。”と、Uberもグーグルマップなしではありえないし、アメリカ経済の成長に大きな貢献をした事は違いありません。

 

本書の中には数多くの参考になるフレーズがあります。

「完璧を追い求めて前進する速度を落としてはならない」真面目な日本人が陥りやすいことかもしれません

「考え方を変える必要がある」本書では常識で構想を小さくするな、です

450ページ以上ありますが、ご一読おすすめします。 1時間に数十ページの感じで読みましたが、ここまでいくと、読書も格闘技になります。 Kindleのおかげです。

 

パワーズ オブ テン

https://www.youtube.com/watch?v=paCGES4xpro 

 

◆雑感・私感◆

以上も雑感・私感ですが、できる限り参照データを紹介しています。個人のブログは面白いですが、個人的な偏りがありますから、できるだけメジャーなメディアを引用しています。

● ヨーロッパ、EUが変調をきたしています。火薬庫のバルカンのコソボとセルビアの争いも収まっていません。独仏がこれを捌けるか。

● イラン情勢はかなりリスクが高い状態です。石油輸出をさせないというアメリカの制裁に、イランは何らかの反撃が必要です。イランがホルムズ海峡の封鎖に動けば、戦争です。既にアメリカは空母を中東に派遣しています。

● 北朝鮮は現状に悩み狂っているのでしょう。ロシアのプーチン大統領にすがっていますが、支援も限られています。制裁を強化して非核化に導くしかありませんが。

● ある意味、日本の存在感が失われた平成の30年ですが、だれが令和の日本新生のビジョンを早く国民に提示するのでしょうか。安倍政権以外の。新天皇ご夫妻かも。お言葉の文体が普通の日本語になりました。

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◆俯瞰MAIL88号(2019年5月6日)

発行元:一般社団法人俯瞰工学研究所

発行人:松島克守

 

 

◆俯瞰メルマガ第 87 号◆2019年3月25日発行

俯瞰メルマガ87
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時候のご挨拶

桜、桜、あっという間に花見がやってきます。葉桜になると、桜を意識していないので先日花見をしたばかりという気持ちになるのでしょうか。元旦と同じように新年度の誓いを立てますか。で、何を?

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変身を迫られるGAFA

ブレグジットの迷走から何を学ぶか

中国の今後は

国際政治の蜃気楼

エストニアに行ってきました

65回俯瞰サロン開催案内

「サムソンが日本の半導体を超えた秘密~俯瞰力・企画力を支える超見える化~

俯瞰のクッキングイタリア料理の裏技

俯瞰の書棚 先延ばし克服完全メソッド

雑感・私感

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変身を迫られるGAFA

これまで我が世の春を謳歌してきたGAFAが、厳しい状況になってきました。政治コンサルティング会社、英ケンブリッジ・アナリティカによるフェイスブックの個人データ流用事件を発端にして、GAFAの個人情報の取り扱いについてEUは厳しい規制を導入しました。個人情報保護の大幅な強化と域外持ち出しを禁止する規制です。

 

一般データ保護規則(GDPR)によって個人情報の厳格な管理を求めるとともに、違反に対しては巨額の制裁金を課すことになります。もちろん日本もその影響受けます。ただ日本の個人情報の保護は極めて厳しいために、日本とEUは相互に個人データ保護水準に関する相互十分性を認定しました。しかしGDPR はわかりにくく曖昧な部分もあるので日本企業にとっても厄介な問題です。日本に来たEU の人、 EUに居住する日本人駐在員の情報の取扱い等、今後いろいろなケースが考えられます。何しろ巨額の制裁金という脅しがありますから、厄介です。

 

個人情報保護以外でも独禁法がらみの規制が強化されています。Googleがインターネット広告事業で反競争的行為があったとして、EU149000万ユーロ(17億ドル)の制裁金を課したと発表しました。欧州委がGoogleに制裁金支払いを命じるのは、過去2年の間で3回目です。

Facebookが、ユーザーの許可を得ずにサードパーティーが個人情報にアクセスすることを許す契約を結んでいた問題、最近の一連のセキュリティ問題に対し、議会への証人喚問や政府の諸機関による調査が行われています。最近では、また数億人のパスワードを平文で保存していたことで厳しい非難を浴びています。

 

結果としてFacebookは巨額の利益を上げているネット広告のターゲットマーケティングについて、ユーザーを人種、性別、年齢などに基づいて、求人、住宅、クレジットの広告の対象から除外できるように修正すると発表しまた。すなわち絞り込みを緩めるということでしょうか。これはGoogleAmazonにとっても重大な課題です。なにしろ、独占的に所有する膨大な個人情報からピンポイントでターゲットを絞り込むことを武器にして成長してきた彼らですから。

 

EUにはGAFAに対して規制を強めることによってEU内のIT企業の成長を促したいという意図と、同時にGAFAに対し、域内で上げた売上に対してデジタル課税をかけ新しい財源としたいという意図もあります。すでにフランスとイギリスは、独自にデジタル課税を発表しています。

 

事情は日本にとっても同じで、日本の規制当局も動き始め、自民党も日本のGAFAを呼んでヒアリングし対抗処置をとること決めました。規制当局は、Amazonが出店者に対し不公正な契約を強要していることを問題視しています。Appleについても、Apple Storeのアプリ供給者に対する30%の手数料の是非などの懸念を表明しています。

いずれにしても、GAFAにとって野放図な成長は許されない時代になりました。

 

Facebook、広告の差別的ターゲティング裁判で和解

https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1903/20/news083.html 

Facebookが数億人のパスワードを平文で保存していたと認める

https://jp.techcrunch.com/2019/03/22/2019-03-21-facebook-plaintext-passwords/ 

独禁法推進派がもくろむFacebookの分社化

https://jp.techcrunch.com/2019/03/21/2019-03-19-facebook-cicilline-antitrust-house-congress/ 

欧州委、グーグルに制裁金17億ドル ネット広告で反競争的行為

https://jp.reuters.com/article/eu-google-antitrust-idJPKCN1R11YY 

GAFAのデータ独占に公取委がメス!本気の実態解明へ

https://diamond.jp/articles/-/197645 

アップルは優越的地位を濫用している? 公取委が調査

https://www.businessinsider.jp/post-187542 

GAFAに課税せよ!広がる「デジタル税」の正体

https://toyokeizai.net/articles/-/268692 

欧州連合における個人情報保護の枠組みGDPR

http://www.fujitsu.com/jp/group/fjm/mikata/column/sawa2/001.html 

EU、個人情報保護を大幅強化へ 域外持ち出し原則禁止

https://www.asahi.com/articles/ASL5Q1PG0L5QUHBI001.html

EU間で個人データ保護水準に関する相互十分性を認定

https://www.jetro.go.jp/biznews/2019/01/61496577e90fd3e8.html 

GAFA規制、仕掛ける自民 国際的枠組み作り主導狙う

https://www.asahi.com/articles/ASM3Q5D5BM3QULFA01S.html

 

ブレグジットの迷走から何を学ぶか

英国のEU離脱、ブレグジットの混乱も末期的な状況になりました。合意なき離脱も真実味を帯びてきました。もしくは国民投票を再度行って結果として、残留を選ぶことになるかもしれません。ロンドン中心部で23日、2度目の国民投票を求める大規模デモがありました。主催者団体は100万人が参加したと発表、多くは離脱に反対する人たちです。

 

ついにメイ首相の辞任の可能性も出てきました。となると、自爆的な国民投票をあり得ます。全く予断できません。日本への直接的な影響は大きくないと思いますが、世界経済に与えるインパクトで、為替などの想定外の影響は考えられます。

 

事の発端は、前回のキャメロン首相の国民投票にあります。彼自身、まさかの結果でした。

 

大部分の国民、とりわけ労働者階級の人たちに、離脱派の政治家は、EUがいかに官僚的で非民主的、イギリス国民から金も主権も国境コントロールも奪う存在であるかを吹聴しました。特にEU加盟国のためイギリスに大量に移民が押しかけ、国の医療、教育、サービスなどに負担をかけ、失業率や犯罪率は上がり給料は下がるという危惧を大げさに語り、そういう話をあおったのです。

 

日産の工場があるイギリス北東部サンダーランドでは、2016年に行われたEU離脱を問う国民投票では61%が離脱票を投じました。そして結果として、日産は生産を英国外に移すことを決め、雇用が失われることに愕然としています。すでに、国際企業が車を組み立てる場所としての英国の魅力は下がりました。

 

イギリスがEUを離脱するとはどういうことなのかを、きちんと説明してもらえないままに投票した人たちも多かったようです。

 

これは直接民主主義の怖さを象徴しています。といって議会制民主主義の英国議会が現在、理性的な対応をしているわけではありません。最近トーンが落ちましたが日本でも憲法改正の国民投票の話がありますが、国民全体が十分に自分の判断の結果を理解しないまま国民投票を行えば真実の民意と違う結果が出るでしょう。日本の場合は感情的な戦争反対のキャンペーンと自主防衛の主張が国民の分断をもたらすと思います。ナチスドイツは 国民投票を頻繁に行ったとのことです。

学ぶべき事は、メディアと政治家は国民に対し十分な情報を提供し、広く国民の理解を深めることと、我々国民が政治にもっと真剣に取り組む必要があるということです。とりわけ先の長い若い人たちが、自分たちの未来がかかる政治判断に冷静に取り組む必要があります。政府機関紙のようなメディア、ヒステリックな反政府メディア以外に良心をかけたメディアが、民主主義には必須です。トランプ大統領のおかげで米国メディアも正義感が出てきましたか。

 

EU離脱、2度目の国民投票を ロンドン「百万人」デモ

https://www.asahi.com/articles/ASM3S2SY3M3SUHBI003.html 

EUにブレグジット疲れ 英に「次の一手」明示要求

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO42821180T20C19A3000000/ 

EU離脱撤回を求める請願書に現れる「英国の混乱」

https://forbesjapan.com/articles/detail/26268 

英国では署名が10万人を超えた嘆願書について、議会で議論に付すか検討の対象になる。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190322-86564887-bloom_st-bus_all 

英首相、離脱案巡り閣僚・強硬派と協議 辞任圧力の報道も

https://jp.reuters.com/article/britain-eu-idJPKCN1R6009 

イギリスEU離脱で日産工場に影響:Brexitで被害をこうむる人たち

https://1ovely.com/leave-eu/ 

英EU離脱、ゴールドマンが合意なき離脱の確率を引き上げ

https://jp.reuters.com/article/britain-eu-goldmansachs-idJPKCN1R30VD 

 

中国の今後は

アメリカと中国の貿易摩擦は中国が一定程度譲歩して、ある種の妥結が実現するのではないでしょうか。先日閉幕した中国全人代で、政府を代表して李克強首相が行った政府活動報告では、アメリカと正面から競合する姿勢を避けてwin winの関係を作り出したいというメッセージがあったように思います。そして、これまでの経済政策を一部否定していました。

 

この全人代ですが、習近平総書記が終始仏頂面で資料を見ていない、という映像が話題になりました。昨年の全人代では全権を掌握し、終始笑顔であったことと対照的です。という事は、一度は失った経済政策の権限を李克強首相が取り戻したという事でしょうか。というか、習近平総書記の権力基盤も盤石ではないということですか。

 

中国経済の成長の鈍化が、かなり厳しいようですが、もともと2ケタ成長は長期間続きません。人口ボーナス、環境汚染のような成長の限界がありますから。これは日本がたどってきた道です。中国もその例外ではありません。ただ日本は、オイルショックというハードランニングで高度成長から5%の成長に移行しました。中国はアメリカとの貿易摩擦でハードランニングに近い、新常態に移行しているのでしょう。私は中国の現在の成長率は5%がせいぜいだと、かねがね言ってきました。

 

日本の場合と違って、今は大きなテクノロジーの波があります。今回「製造強国」のスローガンは下げましたが、EVGAI、バイオの急速な導入により一気に新しい産業国家に変身する可能性があります。米国や特に日本は、気がつくと後進国になっていたということもありえます。

 

EUはこれまで、中国市場を経済成長の源泉として中国に寄り添う政治姿勢をとってきましたが、ここにきて「中国恐るべし」との認識になったようです。「中国はライバル」と正面から戦略を議論しています。イタリアは借金漬けで、中国の投資を引き入れようと、中国の「一帯一路」参加国になりました。すでにエストニア、ラトビア、リトアニア、ポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリー、スベロニア、クロアチア、ブルガリア、ギリシア、マルタ、ポルトガルは、「一帯一路」に関し中国と覚書を交わしています。まさに「中国恐るべし」です。

 

通商合意「おそらく実現」、国内自動車生産なら関税回避=米大統領

https://jp.reuters.com/article/usa-trade-china-trump-idJPKCN1R31QM 

対中制裁関税、すぐ撤廃は「ノー」トランプ氏

https://www.yomiuri.co.jp/economy/20190321-OYT1T50122/ 

ロイター企業調査:米中摩擦の影響「ある」5割超に増加、昨秋3

https://jp.reuters.com/article/reuters-poll-trade-japan-idJPKCN1R304C 

全人代ルポ 仏頂面の習主席、李首相と目も合わせず

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO42038380V00C19A3FF2000/?n_cid=SPTMG002 

激しさ増す米中新冷戦、中国にとってトランプはむしろ救世主?

http://wedge.ismedia.jp/articles/-/15671?page=2 

EU「中国はライバル」=戦略見直し-首脳会議

https://www.jiji.com/jc/article?k=2019032300305&g=int 

イタリア、一帯一路参画へ 対中国でEUの足並みに乱れ

https://www.asahi.com/articles/ASM3K238ZM3KUHBI003.html 

 

国際政治の蜃気楼

物別れに終わった米朝首脳会談は、北朝鮮の非核化という蜃気楼を追いかけていたのではないでしょうか。だから近づけば逃げて、消える、やっとトランプ大統領も気がついたのかもしれません。文在寅大統領は、トランプ大統領に「金正恩は本気で非核化を決心している」と告げ、金正恩には「トランプ大統領は焦っているから、寧辺(ヨンビョン)の核施設を廃棄すれば経済制裁の解除に応じる」と言った結果として、米朝首脳会談は、双方ともに蜃気楼を追うことになっていたかもしれません。

 

その文在寅大統領も南北統一という蜃気楼を追っていたのかもしれません。「私は何十年も前から200回以上、韓国を訪れているが、現地の経営者たちと酒を飲むと、『核を持ったまま北朝鮮が倒れたら、我々は核保有国になり、7000万人以上の人口を持つ、隣国(日本)と遜色ない大国になれる』と皆がいう」(大前研一 BIZトピックス 2017/04/07配信分)という蜃気楼です。韓国の核保有が許されるはずがありえないのに。経済制裁で一カ月も持つわけありませんから。結果として、文在寅大統領は双方から信用を失いました。

 

もう一つの蜃気楼は、北方領土返還かもしれません。どう考えてもロシアが北方領土を返還するとは思えません。繰り返しロシアは、第二次世界大戦の結果を受け入れるべきだと言っています。 70年の実効支配の後、どんな理由で国民を納得させるのでしょう。クリミア半島は軍事力でウクライナから奪い取りました。もともとクリミア半島はロシアが血を流して獲得した領土です。国民は大喝采です。しかしクリミア半島に多額の国家資金が投入されることになると、国民は懐疑的になっているようです。

 

仮に北方領土が歯舞色丹だけでも返還されたとしても、インフラ整備に巨額の資金が必要となります。赤字財政で社会福祉に巨額資金の必要な現在の日本にとって、投資する価値があるのか、国民は改めて考えさせられることになるかもしれません。

国民感情に訴える政治手法は、極めて危険です。まともな政治家ならば国民と腹を割って話す必要があります。

 

エストニアに行ってきました

エストニアという国

エストニアに行ってきました。個人的にサイバー戦に興味があり、 NATOの研究所があるので、いちど現状を確認したいと思っていました。加えて世界一の電子政府を実現した国でもあります。

 

エストニアはあまり日本では知られていませんので、簡単に紹介します。バルト海の奥、フィンランドの南の人口130万人の小国です。長く他民族の支配下にあった悲惨な国です。ドイツ騎士団、デンマーク、スウェデン、ロシアそしてソ連の支配下に置かれ、土着のエストニア人は悲惨な生活を強いられてきたようです。

 

ロシア帝国が崩壊した1918年に独立を果たしました。ですから昨年で独立100年ということですが、 1940年にはソ連に併合され、再び独立を失い、東西冷戦が終わった1991年に再度独立を果たしました。

 

電子政府の構築

1991年からゼロからの国づくりです。この時のリーダーの決断がエストニアの今日を決めました。 ITで行政システムを作る、という決断です。近隣諸国から古い通信システムや、 faxの寄付の申し出がありましたが、それを断り、ペーパーレスの電子政府の構築を始めたのです。

 

ソ連の情報関係の機関が置かれていたことから、IT技術者が集積していたのだろうと思っていましたが、エストニア人のIT技術者の数はそれほど多くなく、ほとんどが顔見知りだったと聞きました。それぞれ自分のパソコンを持ち寄って、電子政府の開発を始めたようです。

ただ時代の巡りあわせが絶妙です。まさにインターネットの時代の始まりと建国が重なっています。

 

1990 CERN のティム・バーナーズ・リーWWWを提案・実装

1991 エストニア独立

1993 NCSAのマーク・アンドリーセンMosaic(ブラウザー)をリリース

1994 Amazon設立

1995 インターネットの商業化

   マイクロソフト社がWindows '95 を発売

1998  Google設立

2000  スティーブ・ジョブスがAppleCEOに復帰

2004 Facebook設立     

2006 Amazon(AWS)開始 クラウドコンピューティング

 

という時代です。このビックウェーブを見据えた建国は、同時に独立したリトアニアとラトビアと、大きな差を生みました。

 

エストニアは個別アプリケーションを開発してきましたが、2012 X-Road により完全に統合化されたデータベースが完成し、現在の電子政府システムが完成しました。結果として、行政処理の99%はネットで処理されます。例外的に結婚、離婚、不動産売買契約については、ネットではできません。

 

日本でうるさい個人情報ですが、エストニアでは発想が全く違います。個人情報はすべて公開です。ただ、誰がいつ何を見たかは公開されますから、それが悪用の抑止力になっているようです。例外は病気に関する個人情報は、自分で選別的にロックできます。

 

このエストニアが完成した統合データベースのIT技術は、民間の企業でも転用できると思いました。まだまだ日本の企業では個別アプリケーションが林立し、データベースの統合ができていません。X-Roadの技術を応用すれば、社内システムの統合化が容易に実現できるような気がしました。

 

2014年には世界中の誰でもエストニアの市民になれるe-Residencyというプログラムを始めました。これでエストニアの市民になればEUの中で起業し、ビジネスができます。日本でもかなりの人が参加しているようです。

 

NATOサイバー防衛協力センター

NATOサイバー防衛協力センターの発端は、2007年のサイバー攻撃です。赤軍記念碑移転をめぐるロシア系住民の暴動による混乱の中で行われました。これを援護するかのような大規模なDDoS攻撃(大量のデータを送り付けるなどのサイバー攻撃)というサイバー攻撃を受け、エストニアの銀行、通信、政府機関、報道機関などのコンピューターシステム、ネットワークが麻痺状態となり、社会は大混乱となりました。桁違いに大がかりで組織的だったので、同国との関係が悪化しているロシア政府の関与が指摘されています。

 

エストニアは小規模で、そして長い闘争を経て独立を勝ち取ったため、国民の団結力が強く、ネット機能がダウンするという暗黒状態でも、国民がパニックに陥ることはなかったとのことです。

 

これを機会にエストニアはNATO諸国に、共同でサイバー攻撃に対抗する組織をつくることを提案しましたが、当初は欧米の首脳が「サイバー攻撃とは何?」という状態で、なかなか腰を上げなかったとのことです。それでも粘ってNATOサイバー防衛協力センターCCDCOENATO Cooperative Cyber Defense Centre of Excellence)の設立にこぎつけました。日本はNATO加盟国ではありませんが、CCDCOEに参画して、今年から職員を一名派遣します。安倍首相も小野寺防相も訪問しています。

 

年に一度首都タリンで国際会議CyConを開くとともに、加盟国全体で1,000名が参加するサイバー防衛演習「Locked Shields(ロックト・シールズ)も実施しています。赤組と青組とに別れて、赤組が攻撃側で青組が防衛側です。実戦さながらの訓練は、世界最大級の対戦ゲームでしょうか。日本の防衛省もこれに参加して、防衛力を高めていくことが期待されます。

 

そしてCCDCOEはサイバー活動に適用される国際法に関する文書「タリン・マニュアル2.0」を発表しました。なにしろ宣戦布告の無い戦争ですし、現在も攻撃が続いています。どこまで反撃して良いかも不明ですから新しい国際法が必要ということです。

 

スタートアップ

エストニアはまた、スタートアップに対するビジネス環境が良い事でも知られています。いくつかのスタートアップ支援の場所を見てきました。続々とベンチャー企業が生まれています。事の起こりはあのSkypeです。アノ成功、アレに続けということです。人口130万人の国ですがユニコーン(巨大ベンチャー企業)4社あります。ユニコーン4社とは具体的には、通話サービスのSkype、オンラインカジノソフトのPlaytech、個人間送金サービスのTransferWise、ライドシェアアプリのTaxify201937日に「Bolt」に社名変更)です。これらに共通するのは“Skype Mafia”です。Skypeの社員は、会社の売却で巨額の資金を得ました。この資金で新たな企業を起こしてきました。

 

従来の産業振興のモデルは、製造業の振興でしたが、今はその時代ではありません。初期投資が膨大です。ネット企業であれば、パソコン1つでアイデア次第で起業できます。

 

特にエストニア人がITな才能があるわけではありません。私の認識では、もともと産業基盤がありませんから就職する大企業はありません。ですからIT企業を起こすことになります。また人口130万人という事は、国内市場ありませんからいきなりグローバル市場に行くことになります。日本は幸か不幸か就職の選択肢は広くあります。加えてスタートアップ企業にとって、とりあえずの市場は国内にあります。加えて日本人の好きな堅実な成長はグローバルのスケールに届きません。

エストニアで起業している日本人にも会いました。安全で住みやすいと言っていました。特に日本のベンチャー企業と差を感じませんでしたが、エストニアというゆりかごで、彼らがどこまでスケーラブルに成長するか楽しみです。

 

NATOが「サイバー空間に適用できる国際法」を研究したタリン・マニュアル2.0を発表

https://the01.jp/p0004346/ 

 

65俯瞰サロンのご案内

外山 咊之さんに聞く、「サムソンが日本の半導体を超えた秘密

~俯瞰力・企画力を支える超見える化~」

かつて世界を席巻した日本の半導体産業。それがごく短期間の間に韓国企業に追い抜かれ、今ではその背中を見ることすら難しくなってしまいました。なぜこんな事が起こったのか?外山さんは、1995にサムソンの役員会で、『経営システムにおける超見える化---Big Logic技法』について講演をしましたが、反応がないことを怪訝に思いNo.2に確認したところ、『既に導入済だ。複雑な600工程が見えた。素晴らしかった!』との回答を得ました。今回の俯瞰サロンではBig Logicの超見える化の要求軸とその対応技法を概説し、適用事例の紹介と電気業界で起こった過去を振り返り、日本の産業再建ためのヒントをいただきます。

・日 時: 2019425日(木)1830分より(18時受付開始)

・会 場: 品川インターシティ会議室

      東京都港区港南2-15-4

                            http://sic-hall.com/pdf/map/accessn.pdf

・参加費: 講演会のみ 1,000 / 懇親会 3,000

      当日、受付にて申し受けます。

・定 員: 50名程度 (定員になり次第、申込みを締切ることがあります)

・懇親会:講演終了後に懇親会を開催します。

・参加ご希望の方は、下記のサイトからお申し込みください

https://ssl.form-mailer.jp/fms/363b5134602103

【講師プロフィール】
外山 咊之 (とやまたかゆき)

1958、東京工業大学電気工学卒。(旧)富士製鉄にて、一貫製鉄所の複雑な経営を、正確に把握して、見える化するアイディア:構造マトリックスを発想(1960年代)。日本IBMに移り、1974、ドイツ鉄鋼業に於いて、同じアイディアが発展していることを知る。1973のオイル・小さいショックで大混乱した神戸製鋼の強い要求で解読、ドイツ方式で、全面的に導入。その後、対話ソフト化を行い、経営計画・予算策定等の意思決定システムへと適用を広げ、適用業界も装置、製造、金融、エネルギー、食品等へ広げ、150件販売。この数は、IBMは『世界では小さい。』と販売停止。日本の経営Topの関心は低かったが、韓国Top企業の関心は強烈で役員会でレクチャーを実施。 海外学会でも数多く発表。国際MOT学会(1991. マイアミ)、意思決定支援システム学会(ISDSS)でも発表。UNESCOも人類の財産と認める。その後も内外の論文寄稿を数多く実施。東京工業大学経営工学にて博士号取得。

論文:論文:「構造マトリクスにおけるタイプ記号の諸性質とビジネス構造の表現に関する一考察」(ダイヤモンドハーバードレビュー、外山咊之 柴直樹 飯島淳一 東京工業大学)」

 

俯瞰のクッキング イタリア料理の裏技

料理通信という雑誌があります。一般向けというよりもプロの料理人向けの雑誌だと思います。ですから参考になります。1月号は「まだ日本人が、気が付いていない、イタリアの味づくりのコツ、裏技編」でした。確かにいろいろ興味深いノウハウが紹介されていました。冒頭の16ページと17ページに引き込まれました。

 

「蓋あり料理-オイルで蒸し煮」です。言ってしまえば、イタリア風の野菜炒めです。簡単です。鍋にオリーブ油とニンニクを入れ、低温でゆっくり香りを出し、水洗いした野菜を入れ、塩を振って、蓋をして中火で3 ―4蒸し煮します。それだけです。

 

私たちは、どうしても中華料理の影響で鍋の中でかき回して炒めますが、イタリア人の発想は違います。 1度ぐらいは鍋の中をひっくり返したほうが良いのですが、手間をかけずに野菜炒めが完成します。今回は季節の菜の花でやりました。おいしかったです。

 

次のページは「蓋なし料理」です。ジェノベーゼ・ナポリターナです。大量の玉ねぎと豚の肩ロース肉を、オーブンで表面を焦げ色に焼き、赤ワインで煮込む料理です。今回は肩ロース400 g弱を5センチ角くらい切り分けて塩を振ってフライパンで肉の表面を焼きます。別の鍋で玉ねぎ600 gくらいを薄切りにして炒めます。レシピではラードで炒めることになっていますが、ありませんからバターで弱火で炒めました。その鍋に肉を移し、赤ワインを250 ミリリットル入れ、トマトペーストを40 g近く入れます。水をひたひたに入れて、少し煮て味をなじませて、 180度のオーブンに蓋をしないで入れて焼き煮します。時々かき混ぜて40分ほど煮ました。焼けたところを液体に戻す作業はカスレに近いですね。

 

これは、玉ねぎの濃厚な旨味があるソースが美味しいです。パスタやバターライスと一緒に食べても美味しいと思います。発想を変えれば、牛肉の赤ワイン煮でも、鶏肉の赤ワイン煮も変身できます。

 

この雑誌には、これ以外にも作ってみようと思う料理がいくつもありました。例えば、いつもはフライパンでソテーしているラムチョップのフライもやってみました。美味しかったです。

 

俯瞰の書棚 先延ばし克服完全メソッド

今回は「先延ばし克服完全メソッド」ピーター・ルドウィグ CCCメディアハウス 2018です。

 

冒頭で、ローマ帝国の哲学者、セネカもこう言っている。 「我々がためらい、先延ばしをして時間を無駄にしている間に人生は過ぎてしまう」から本書は始まります。耳が痛いですね。

 

本書は究極のHow To 本で、その構成は。

最初のセクションでは モチベーション がどのように働くのかを説明し、「自分のビジョン」をまとめるのに役立つツールを紹介する。それによって、あなたは自分自身の中に長期的なモチベーションを維持できるようになる。第2のセクションは、規律がテーマだ。大事なことを日々積み重ね、一定の習慣を守るという規律によって、自分のビジョンに沿った生活ができるようになる。先延ばしと戦う方法、仕事と時間を管理する方法、ネガティブな習慣を断ち、ポジティブな習慣を身につけるための方法を紹介する。第3のセクションでは、自分の行動の 成果 に焦点を当て、幸福感を維持するための方法について説明する。情緒的な安定を高めることに役立つ実用的なツールを紹介する。それによって、外からのネガティブな力に対する抵抗力がつく。

 

最後のセクションのテーマは 客観性 だ。これは、あなたを取り囲む状況と自分自身に関する誤った認識に気づく能力だ。自分の問題を見極めなければ解決は望めない。

です。

 

章末に「ノウハウ・デザイン」というポンチ画の、手書きのイラストで内容をサマリーしていますので解り易いです。私はkindle版で読みましたが紙のほうがいいかも知れません。手書きを著者は強調していますから。

 

最初の部分に「決断のまひ」ということが出てきますが、情報が多くて選択肢が多いとどれを選択するか決められなくて決断を先延ばしてしまうという現象です。

「私たちの問題は、知っていることが少なすぎるということではなく、知っていることの多くが間違っているということだ」第1の問題は、 得られる情報が極めて無秩序な状態で、質も悪いことだ。アドバイスの内容が逆だったりもするです。

 

先延ばしの習慣を変えるエッセンス、キーワードは、自分のモチベーション、 規律、 成果、客観性です。

 

モチベーションを高めることによって、先延ばしは克服できるといいます。モチベーションには、ビジョンが必要です。「行動なきビジョンは白昼夢。ビジョンなき行動は悪夢」ですから、行動を意識したビジョンが必要です。

 

自分がしていること、特に自分がやりたいと思ってしていることに意義を見いだせるとき、最も強力な形態のモチベーションが生まれる。それが「内なる旅に基づくモチベーション」だ

 

規律とは、生産性と効率を確保することです。頭は「はい」と言っているのに、気持ちが「いいえ」と言っているときですが、「象と象使い」という例えで、我々は、感情的な「象」と「合理的な象使い」の組み合わせで、いかに理性で感情を制御するのかがカギです自己統制 は「象」を操る「象使い」の能力だ。習慣化、自分の「象」をどう訓練するか、これはコーチングの基本モデルです。

 

 一流のアスリートや科学者、芸術家、実業家に関する研究は、彼らに共通する要素があることを示している。それは、行動が「フロー(流れ)の状態」になっていることだ。このフローは何かに挑戦しているときに生まれ、自分の強みとスキルが発揮されるようになる。自分がしていることに完全に没頭し、時間が止まったような感覚になる。目標を達成した後の つかの間の喜びの感情とは違い、 フロー状態 に達するとドーパミンの分泌が長く続くようになると、フローの境地を目指さないといけません。即ち、「成功は幸福のカギではない。幸福が成功のカギなのだ。自分がしていることを愛せれば、成功できる」です。

 

以下は具体的なツールを使った助言です。コンサルティングです。

ビジョン作成の準備は、SWOT自己分析:SWOT分析チャートの「自分の 強み 弱み は何か」と自問し、それぞれ5つ以上を挙げる。

自分の業績リスト:自分が誇りに思う業績を少なくとも10項目挙げる。

モチベーションを生む活動の分析:自分を高める活動 後に残る成果を生む活動 関係を構築する活動を列挙する。

 

そして、自分のビジョンを紙に書いておくと、本当に効果が上がる。いつも持ち歩くこともできるし、どこか目につきやすい場所に貼っておくのもいい「有形にする」「感情的反応を高める」「目標でなく行動に的を合わせる」「『自己2.0』の活動を組み入れる」「バランスとつながり」「アンカーを使う」だ 、「自己2.0」とは、自分のためだけでなく他者のためになることを入れることです。アンカーは、それを見るとビジョンをリマインドするもので、指輪でも、写真でも時々見るものであれば何でもいいです。

 

以下は規律を維持するツールです。

まず、「習慣リスト」:EXCELで列に毎日実行する習慣化の行動をいくつか書きます。例えば、ジョギングとか勉強とか。そして行に達成度を日々一月分記入する表を管理します。

 

次のツールは「To-Do トゥデー」で前日に翌日に何をするか書きます。紙に手書きで。翌日の「To-Do トゥデー」を作るときには必ず、「To-Do」や「アイデア」「カレンダー」の中から仕事を選ぶようにするべきです。「To-Do トゥデー」に移した仕事は、元のリストから抹消するようにします。「To-Do トゥデー」よって、 生産性 効率、すなわち規律 を根本的に高めることができるとの事です。大きな仕事は分割し、小さな仕事は1つにまとめます。

 

そして1日の道筋を決める 最も重要な(おそらく最も気が重い)仕事を朝一番にすることをお勧めするです。

 

そして「To-Do オール」ということで所謂TODOリストです。ポイントは完璧が達成されるのは、もう加えるものがなくなったときではなく、もう削るものがなくなったときであるです。断捨離ということでしょうか。

 

次は「アイデア」マップです。ここに入るのは浮かんだ自分のアイデアです。

最後の部分は「カレンダー」で、人と会う約束や会議など時間に縛られる仕事だけを入れます。

 

To-Do トゥデー」「To-Do」「アイデア」は、それぞれの紙をすべて1つのクリアファイルに入れておくと便利だ。「To-Do トゥデー」をいちばん上にして見えるようにする。今日やる仕事だけが目に入るようにして、すべての仕事の山に気後れしてしまうような状態を防ぐわけだ。このシステムは、カレンダー1つと3枚の紙だけでも成り立つ(「To-Do トゥデー」「To-Do」「アイデア」の3枚)

 

3つの主要なツールを紹介した。 自分のビジョン はモチベーションにつながる。「習慣リスト」は、あなたの「象」を意のままに動かし、意志力の筋肉を強めるのに役立つ。そして「To-Do トゥデー」は、「決断のまひ」をなくして毎日前進していくことに役立つ。これで、あなたの生産性と効率は大きく高まるが、これらのツールを最大限に活用するには、もう1つの極めて重要なスキルを身につける必要がある

 

それは、「ヒロイズム」です。心地よい状態、心地良いベッドからでる、コンフォート・ゾーンから踏み出すことです。その勇気です。心地良い状態からあえて出てビジョンに向かう勇気です。群れを離れる時です。

 

この後は「ネガティブな過去」から「ポジティブな過去」に移る「インナースイッチ」 とありますが。

以下気になった文章は、

「本当に進歩したければ、しっかりした土台の上で自分を高めていかなければならない」

「人生で最も大事なのは、自分自身の人生以上の何かのために生きることだ」

「人間の脳はしばしば、現実と異なることを信じる傾向がある」

ご一読をお勧めします。

 

雑感・私感

以上も雑感・私感ですが、出来る限り参照データを紹介しています。個人のブログは面白いですが個人的な偏りがありますから、できるだけメジャーなメディアを引用しています。

●ISは消滅したことになりますが、トルコ、クルド、シリア、イスラエル、イラン、イラクとグチャグチャです。また、トランプ大統領のゴラン高原のイスラエル主権承認混乱に拍車をかけました。さすがシリア撤退は口にしていません。

経済規模にそぐわないロシアの軍拡、大国風のふるまいはいつまで続きますか。といって北方領土が帰ってくるわけはありませんが。お金は日本もちで共同管理ですか。

中国は5%成長でアメリカを凌駕する超大国になる可能性はあります。先端技術の人材の厚さが凄いです。特許、学術論文を見ればわかります。

直接民主主義は専制政治になりやすいようですね。トランプ大統領、プーチン大統領、エルドアン大統領・・・・

民主主義とは何か改めて勉強しなくては。

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俯瞰MAIL87号(2019325日)

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発行人:松島克守

編集長:松島克守

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