俯瞰メルマガ81号 2018年8月8日発行

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◆時候のご挨拶◆

記録的な豪雨、そして危険的な猛暑が日本だけでなく世界中で猛威をふるっています。スウェーデンやフィンランドでも猛暑です。スウェーデンでは山火事が多数発生し、フィンランドでは原子力発電所の冷却に使う海水の温度が基準値を超え、運転停止に追い込まれたというのは驚きです。カリフォルニアでも山火事が猛威をふるっています。それでもトランプ政権は温暖化に対する規制を緩めるというので、カリフォルニア州との争いになっています。猛暑はまだまだ続きます、ご自愛を。

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●トランプ大統領は大丈夫か

●ハードブレグジットになりそうな雲行き

●チキンレースにはしる米国とイラン

●俯瞰サロン:「宮沢和正さんの出版記念パーティ」「第58回俯瞰サロン」

●俯瞰のクッキング“最近の食卓から”

●俯瞰の書棚“最強囲碁AI アルファ碁 解体新書”

●知識の俯瞰 知的腕力を鍛える2

●編集後記

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◆トランプ大統領は大丈夫か◆

トランプ大統領の暴走が止まりません。ヨーロッパ訪問で欧州諸国と対立の構図を強める一方、ヘルシンキでプーチン大統領と会談し協調をアピールしました。そしてなんと「ロシアが先の大統領選挙に介入したと信じる根拠はない」と会見で発言しました。これに対しては共和党を含めアメリカ国内で大きな批判が広がり、慌てて発言を否定しました。その理由がお笑いです。 “wouldn't”と言うべきところを、“would”と言い間違えたのだと説明したのです。

 

さらに最近「ロシア疑惑捜査をただちに中止せよ」とtwitterで発言しました。これは明らかな司法妨害で、大統領弾劾の理由になりますから報道官も慌てて「あれはあくまで意見で、指示ではない」と火消しに走りました。

 

どうもロシア疑惑に関しては、ひたひたと核心に捜査の手が近づいていると怯えているのでしょうか。そしてプーチン大統領への異例なすり寄りは、プーチン大統領に何かを握られていることを示しているのでしょう。大統領になる前のモスクワで乱痴気騒ぎをして写真を撮られ、その写真も公開されています。ポルノ女優との浮気の件も一時メディアに取り上げられましたが、支持率には全く影響がないことから、売春婦との乱痴気騒ぎがプーチン大統領の切り札では無いようです。それ以上の政治的な不都合な証拠を握られているのでしょうか。

 

メディアに対しても相変わらずの口撃を繰り返しています。ニューヨークタイムズの社主や国連からもメディアに対する圧力を止めるように諭されていますが、止められないでしょう。理性的な考えから発言しているのではなく、閃いた瞬間に何も考えずに口から言葉になっている人格ですから。

 

北朝鮮関係も悪い予想が当たり、何も進展がないばかりか、新たに核兵器とICBMの製造を続ける北朝鮮には、完全かつ非可逆的な核放棄の意思は無いようです。中間選挙に向けて、これも焦っているでしょう。

 

トランプ大統領の怖いのは、思いつきでまた何かツイートすることです。すでに米朝会談の前に、終戦宣言や在韓米軍の縮小撤退を口にしていますから。

 

この調子で行くとレッドラインを越えて自滅することも考えられます。大丈夫かトランプ!

 

トランプ氏、ロシア疑惑捜査「ただちに」中止せよと 元側近をギャング扱いと批判

https://www.bbc.com/japanese/45040714 

トランプ、ロシア疑惑「捜査終了」要求でついに墓穴?──司法妨害

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/08/post-10710.php 

国連報告者、トランプ米大統領のメディア攻撃を批判 

https://www.bbc.com/japanese/45054240 

トランプ米大統領、ロシア疑惑でFBIよりロシアを擁護 米ロ首脳会談

https://www.bbc.com/japanese/44855356 

トランプ氏、ロシアの選挙介入について発言修正 言い間違いだと

https://www.bbc.com/japanese/44868457 

ロシア――トランプ氏にどこまでもつきまとう醜聞

https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-39149622 

ロシアがトランプ氏の問題情報を握っている? 今の事態にどう至ったのか

https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-38593177 

 

◆ハードブレグジットになりそうな雲行き◆

英国のEU離脱の状況が混乱しています。 EUは「合意なしの英国離脱の準備をするように」と域内に要請文書を公表しました。英国の中央銀行総裁も「合意なきEU離脱のリスクは不快なほど高い」と発言しています。ハードブレグジットの可能性が高まっています。

 

その影響はEUと英国の経済を直撃し、その余波は世界経済に甚大な影響を与える事は疑いの余地はありません。 EUのGDPを1.5%押し下げるとIMFは試算しています。

 

伝統的な「物の通商」に関して交渉していますが、情報やサービスについては未だ通商のルールが国際的に確立していませんから、大きな混乱をIT業界は気にしています。

 

そもそも英国民のEU離脱に対する姿勢が中途半端です。最近の世論調査によると、メイ首相が提案した現実的で妥協的なEU離脱の交渉に反対しながら、半数の有権者は、国民投票が再度実施された場合、EU残留を支持すると回答したとのことです。

 

そもそもなぜEU離脱をしなければならないかも曖昧のようで、政治家も国民も自分たちが追及しているコトを正しく認識できていないのでしょう。

 

この欧州の混乱は国際的な安全保障体制にも影響を与えます。確実にロシアの影響力が強くなります。

 

サッチャー政権のもとで、日本の自動車産業は英国国内に大規模な生産拠点を構築し、欧州全体への輸出拠点にしています。関連する企業も多数英国に拠点を構えました。もし英国とEUの間で関税がかかるようになれば、大きな打撃です。その他多くの日本企業が大きな影響を受ける事は間違いありません。すでに金融機関はフランクフルト、ベルリン、パリなどに拠点を移しつつあります。移転先の都市は結果として経済的に潤うでしょう。

 

EU 「合意なし」英国離脱の準備を 域内に要請文書公表

https://mainichi.jp/articles/20180721/k00/00m/030/025000c 

合意なきEU離脱のリスク、「不快なほど高い」=英中銀総裁

https://jp.reuters.com/article/britain-eu-carney-idJPKBN1KO18H 

EU、英国が合意ないまま離脱ならGDP1.5%押し下げ=IMF

https://jp.reuters.com/article/imf-report-on-no-deal-brexit-idJPKBN1K92EL 

英EU離脱でIT業界が憂慮する問題

https://japan.zdnet.com/article/35122384/ 

離脱の場合 日本の企業は 金融機関は

http://www3.nhk.or.jp/news/special/brexit/article12.html 

イギリス国民、メイ首相のEU離脱案に大半が反対

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/07/eu-132.php 

 

◆チキンレースにはしる米国とイラン◆

米国とイランとの間で激しい応酬が気になります。完全にチキンレースの様相です。(相手を屈服させようとして互いに強引な手段をとりあう争い。コトバンク)米国はイラン核合意から離脱し、ドルの力を使った金融制裁をちらつかせて、同盟国へイラン石油の輸入禁止を要請しています。これにはヨーロッパも日本も従わざるをえません。中国は人民元で直接決済するでしょう。

 

米国のイラン核合意の離脱はイスラエル政府の強い要請によるものです。イスラエルは今やイランを最大の敵とみなしています。ですからイランが核兵器を開発すれば既に持っている北朝鮮製のスカッドミサイルで直接核攻撃が可能になりますから、まさに今、日本が置かれていると同じ状況になります。

 

イスラエルとイランは国境を直接接していませんが、イランの非公式軍事勢力のヒズボラがシリアのゴラン高原近く、レバノン、ガザ地区などに展開して、現在イスラエルに対しロケット弾を発射しています。これに加えイスラエルは、スンニ派諸国が支援する武装勢力のハマスとも対峙しています。イスラエルにとっては生存をかけた戦いが続いています。この戦いには米国の支援が必須ですから、トランプ大統領に接近し巻き込んだ結果が、現在の緊迫した情勢を作りだしています。

 

チキンレースをやっていますが、トランプ大統領は、いつでもイランのロウハニ大統領と会うと言ってゲームをしています。

 

実際に米国がイラン制裁を発動すれば、イランはホルムズ海峡を封鎖すると脅しています。日本はそれほどイランの石油に依存していませんが、サウジアラビアを中心とした中東の石油は日本の生命線です。ヨーロッパの諸国も大きな影響を受けるでしょう。その影響はブレグジットどころではありません。

 

このチキンレースは、イランにとって非常に不利なゲームです。すでにイラン経済は大混乱です。イランの政権は相対的に現在は穏健派ですが、これが保守派になると中東リスクが顕在化することも想定する必要があります。

 

イラン、ペルシャ湾一帯で大規模演習を開始

https://www.cnn.co.jp/world/35123535.html 

火花を散らすアメリカとイランの対立、因縁の歴史をおさらいしよう

https://www.newsweekjapan.jp/sam/2018/08/post-16_1.php 

イランとイスラエルはなぜお互いに「敵」なのか?

https://thepage.jp/detail/20180715-00000003-wordleaf?page=1 

イランの穏健派ロウハニ大統領、通貨暴落と米制裁再開で窮地

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/08/post-10712.php 

トランプ氏、イランのロウハニ大統領と「前提条件なしにいつでも会う」

https://www.sankei.com/world/news/180731/wor1807310010-n1.html 

イラン産原油輸入、自主的に中止も-米国が定めた11月の期限前

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-07-10/PBN2AF6S972901 

 

◆俯瞰サロン◆

8月30日(木)に「宮沢和正さんの出版記念パーティ」を、9月10日(月)に「第58回俯瞰サロン」を開催します。

 

【宮沢和正さんの出版記念パーティ(8/30)】

俯瞰サロンで過去3回にわたって“電子マネーの今”を語っていただいた宮沢和正さんが、『かくして電子マネー革命はソニーから楽天に引き継がれた ―「楽天Edy」誕生秘話と苦闘の歴史 ―』を出版されました。そのお祝いを、立食のパーティ形式で開催いたします。発起人は、伊庭 保さん(元ソニー株式会社 副社長)と松島克守 俯瞰工学研究所 所長です。

 

宮沢さんは、ソニーでFeliCaの事業化を牽引後、ビットワレット株式会社 執行役員、楽天Edy 執行役員を経て、現在、ブロックチェーンのスタートアップとして注目を集めるソラミツ株式会社 最高執行責任者(COO)として、まさに日本の電子マネービジネスの立役者として歩んでいらっしゃいます。

 

このたびの出版は、その道のりを “池井戸潤風にドラマティックに書かれた” とのこと。お話を楽しみにしています。

 

・日時 2018年8月30日(木) 18:30~20:30 (受付開始18:15)

・会場 品川インターシティ会議室5

   東京都港区港南2丁目15−4 B1

・会費 4,500円 (当日、会場にて申し受けます)

 ※お食事とフリードリンク付き

 ※当日、書籍を販売いたしますので、ご希望の方は申込フォームでお申込みください。

・定員 50名

・参加お申し込み締め切り 8月19日(日)15時

★参加お申し込みは、下記サイトから

https://ssl.form-mailer.jp/fms/069936a3569554

※申込締切以降のキャンセルは、大変申し訳ありませんが、運営の都合上、キャンセル料金を頂戴いたします

※お早目のお申込みをお願いいたします

※会場は立食スタイルですが、椅子もご用意致します

 

【第58回俯瞰サロン(9/10)】

「シェアリングエコノミーを考える

今年6月 民泊新法(住宅宿泊事業法)制定

Airbnb 現役ホストさんの体験談から知る、民泊の醍醐味 10か条」

 

シェアリングエコノミーは、車、自転車、家や部屋といったモノや空間から、料理・洗濯・DIYなどの家事や専門技術など、個人の資産や力量の利用を仲介するサービスです。その発祥は、2008年に宿泊施設の仲介サービスを始めた米国のAirbnbと言われています。

今年6月、民泊新法(住宅宿泊事業法)が制定され、日本でも新たなステージを迎えています。

今回のサロンでは、実際にホストとして活動されている「世田谷区おうちホストの会」のメンバーの方々と、ホストから現在ではAirbnb Japanにてホストコミュニテイを担当されている安藤若菜さんにお話を伺います。

 

・日 時: 2018年9月10日(月)18時30分より(18時受付開始)

・会 場: 品川インターシティ会議室3

      東京都港区港南2-15-4

・参加費: 講演会のみ 1,000円 懇親会 3,000円

      当日、受付にて申し受けます。

・定 員: 50名程度

・懇親会:講演終了後に懇親会(有料:3,000円)を開催します。

★お申し込みは、下記の専用サイトからお願いいたします★

   https://ssl.form-mailer.jp/fms/f344e33c538599

 

※日程・内容は予告なく変更されることがありますので、ご容赦ください。

 

◆俯瞰のクッキング “最近の食卓から” ◆

最近作った料理をいくつか紹介します。

 

今は夏野菜の最盛期です。ナス、トマト、ズッキーニ、ピーマンとくると、ラタトゥイユを作ることになります。各材料を別々に炒めて、煮込鍋に入れていきます。特にナスは油を吸いますので野菜とは別に炒めます。玉ねぎとニンニクも別に炒めていきます。塩胡椒で味を整えます。私は醤油を隠し味に入れます。完熟のトマトはザクザク切って炒めた野菜と混ぜます。その上にローレルの葉、タイムを乗せて蓋をして弱火で 30分ほど煮ます。あったかいのも美味しいですが、翌日冷たくなったラタトゥイユもおいしいです。

 

大きい米茄子の真中の部分を3センチ位の厚さに切って、オリーブ油でじっくり焼きステーキにします。塩胡椒でも、田楽味噌でも美味しいですが、ひき肉で麻婆ソースを作り上からかけて麻婆茄子にしました。定番の麻婆茄子も美味しいですが、これはおいしかったです。ナスの両端はサイコロ状に切り油で炒めて味噌汁に入れます。

 

アサリは味噌汁や潮汁にすることが多いですが、思いつきでトムヤムクン仕立てにしてみました。鍋にアサリを入れ日本酒を入れて蓋をして酒蒸しにします。それに人数分の水を入れ、トマトの薄切り、玉ねぎの薄切り、顆粒の鶏ガラスープ、トムヤムクンペースト、生姜のうす切り、レモングラス、コブミカンの葉、レモンの絞り汁、を入れます。タイ料理のハーブは常備してあります。煮立たせて味を見て必要ならば塩を入れます。最後にタバスコで味を整えます。酸っぱくて辛いトムヤムクンスープの完成です。

 

完熟トマトで真鯛のポワレのトマトソースかけを作りました。鍋にオリーブ油とニンニクのみじん切り、赤唐辛子を入れて弱火で香りを出します。ニンニクを焦がさないようにします。ニンニクと赤唐辛子を取り出し、その油で鯛の切り身の皮の方から焼きます。ポワレは難しくて、皮がフライパンに付いてしまうことが多いです。弱火でじっくり、動かさないで焼けとレシピにありますが、これが意外と難しいです。鯛に火が入ったら取り出し、唐辛子とニンニクをフライパンに戻し、ざく切りの完熟トマトを入れて潰すような感じで炒めます。塩胡椒で味を整え、皿に乗せた鯛の切り身の上にかけます。簡単ですが、完熟トマトの美味しさを楽しめます。あればバジルの葉を添えます。我が家はベランダで栽培しています。

 

万願寺も今が最盛期です。縦に切ってヘタと種を取り出し、オリーブ油で炒めます。そこに適当に作った味噌ダレを絡ませます。味噌ダレは日本酒、味噌、 豆板醬、豆鼓醤で作ります。万願寺以外、茄子やピーマン、ししとうでもやります。

 

8月は春の夏野菜を楽しみましょう。

 

 

◆俯瞰の書棚 “最強囲碁AIアルファ碁 解体新書”

今回は「最強囲碁AI アルファ碁 解体新書 増補改訂版 アルファ碁ゼロ対応」 大槻 知史  (著), 三宅 陽一郎 (監修) 翔泳社 2018です。

 

本書は、学術論文として提供されている難解なアルファ碁およびアルファ碁ゼロの仕組みについて、著者がとりまとめ、アルファ碁およびアルファ碁ゼロで利用されている深層学習や強化学習の仕組みについて、わかりやすく解説した書籍です。特にアルファ碁ゼロで開発されたデュアルネットワークは、まったく新しい深層学習の手法で国内外の技術者の関心を集めています。

 

本書を読むことは、最新の深層学習、強化学習の仕組みを知ることができ、自身の研究開発の参考になるでしょう。

 

本書は下記の論文の解説書です。この論文を読んで理解する事は、人工知能の研究者でないと難しいですが、本書は研究者でなくても論文の内容を理解し、最先端の人工知能技術を理解することができます。

Mastering the game of Go with deep neural networks and tree search

David Silver, Aja Huang, Chris J. Maddison, Arthur Guez, Laurent Sifre, George van den Driessche, Julian Schrittwieser, Ioannis Antonoglou, Veda Panneershelvam, Marc Lanctot, Sander Dieleman, Dominik Grewe, John Nham, Nal Kalchbrenner, Ilya Sutskever, Timothy Lillicrap, Madeleine Leach, Koray Kavukcuoglu, Thore Graepel & Demis Hassabis

https://www.nature.com/articles/nature16961 

Mastering the game of Go without human knowledge

David Silver, Aja Huang et al.

https://www.nature.com/nature/journal/v550/n7676/pdf/nature24270.pdf 

 

アルファ碁を開発したのは、天才デミウス・ハサビスです。8歳の時にチェス大会の賞金で買ったコンピュータでチェスとオセロのAIを開発したとのことです。「人間の脳研究することで人工知能を本質的に理解できると考えて、大学博士過程では認知神経学を専攻したとのことです。そしてdeep mindを設立しました。 GoogleはFacebookに競り勝ってdeep mindを入手しました。彼の才能が欲しかったのです。

 

それまでのニューラル・ネットワークは、2006年のトロント大学のジェフ・ヒントン教授のグループの研究により多層化が可能になり、ディープラーニングに進化して急速に発達しました。そのジェフ・ヒントン教授は2012年からGoogleで働き、今はカナダで研究と人材育成の組織を統括しています。マイクロソフトもモントリオールに人材育成組織を立ち上げています。カナダはAI立国を推進しています。カナダにはコンピュータ・グラフィックスやマルチメディアの産業基盤がありますし、移民に寛容ですから成功するでしょう。

 

私も今、 DMGMORIという企業でAI人材の育成をしていますが、システム開発の環境としてGoogleのテンソール・フローを基本にしています。現段階ではGoogleの人工知能の力が一番だと思っていますから。ただしクラウドコンピューティングは、AmazonのAWSです。この組み合わせが現段階では最強だと思います。 GoogleとMicrosoftそしてAmazon、 Facebookが人工知能の技術の覇権を争っています。日本企業はまったくリングの外です。自動運転技術でも同様ですが。

 

本書の内容は、第1章 アルファ碁の登場、第2章 ディープラーニング 囲碁AIは瞬時にきらめく、第3章 強化学習 囲碁AIは経験に学ぶ、第4章 探索 囲碁AIはいかに先読みするか、第5章 アルファ碁の完成、第6章 アルファ碁からアルファ碁ゼロへ

 

各章の内容をここで解説できませんが、アルファ碁はディープラーニング、強化学習、探索のすぐれた性質を、エンジニアの創意工夫で巧みに組み合わせて作られたものです。そのそれぞれに「機械学習」と言う技術は使われていますが、それは数学的な処理で人間の学習とは全く異なるものです。

 

アルファ碁の成功の要点は囲碁を19×19の碁盤を図形として取り扱うことによってCNN (convolution neural network )というディープラーニングの画像処理技術の応用を可能にしたことです。

 

さらにアルファ碁ゼロは強化学習とゲームの技術を使って、囲碁の知識ゼロで人工知能が膨大な試行錯誤をして、自らその経験を学んでいく強化学習で完成されました。アルファ碁ゼロは全く囲碁の知識がない状態、すなわちゼロから世界一のチャンピオンに勝ったアルファ碁を打ち負かすまでになりました。とんでもない人工知能の可能性です。そして次の一手を探索するのは、非同期方価値更新モンテカルロ木探索という技術です。

 

そしてアルファ碁もアルファ碁ゼロも長年の人工知能の研究者の膨大な成果の統合でもあります。アルファ碁ゼロにはマイクロソフトのチームが開発した画像認識の技術Residual Networkも取り入れられています。Residual Networkでは、残差ブロックとShortcut Connectionを導入することでGoogLeNetの22層をはるかに超えた152層のディープラーニングを可能にしました。

 

アルファ碁ゼロは、人工知能が直感、経験から学ぶ、先読みをする、という能力を人間以上の水準で知識ゼロから獲得できること証明したわけです。といっても例の「人工知能が人々の仕事を奪う」と言う短絡的な話を証明するモノではありません。人工知能ができることはまだまだ限定的です。そしてアルファ碁ゼロの設計図は公開されていますが、必要な大量のCPUと GPUを用意出来るのはGoogleならではで、一般の企業では実装できません。ですから著者の開発したDeltaGoをダウンロードして囲碁AIを体験することを勧めているわけです。

 

本書は、ご一読をお勧めしますという本ではありませんが、プログラミングの経験がある人、人工知能について多少の知識がある人、最先端の人工知能に興味がある人にはお勧めです。基本的に数式による説明ではありませんので、私でも内容を理解できました。

 

ディープラーニングに関してはネット上に解りやすい解説がたくさんありますからそれを読んでから本書を読めば理解の度合いは上がると思います。例えば下記など。

https://udemy.benesse.co.jp/ai/deeplearning.html 

https://jp.mathworks.com/discovery/deep-learning.html 

 

◆知識の俯瞰◆ 知的腕力を鍛える 2

情報を知識に変換する作業

 

人間が行動から得ている情報は、目から入るものを中心に膨大な量にのぼりますが、そのごく一部が脳の中に、認識した情報として記憶されます。全て無意識下に記憶されているという説もあります。しかし、認識できた情報も、その存在すら多くは意識から失われ、必要な時に想起できないのが現実です。

 

情報を知識に変えるには、特別な興味、さらに何かを成し遂げようと目的を持って情報収集して、分析する必要があります。レポートをまとめる、論文を書く、提案書を書く、などは焦点を持った情報収集と分析を必要としますから、この過程で関連する情報は知識に変換されます。これらの知的活動は情報を構造化する作業です。

 

旅行も、なんとなくパック旅行に参加しても良いですが、自分で企画して情報収集して行ってみると、貴重な知識が得られます。この知識は文字的な知識ではなく、画像的な知識と言えますが、ここでは画像は画像という情報にしておきます。触媒的な刺激やプロセスにより脳の中で情報の、組合せと連合がさかんに行われ、新しい意味付けがされ、構造化された時、それはアイディアや知識となります。旅行中であっても仕事や研究のアイディアを思いつきます。むしろそのためにも、非日常的な場所に身を置く旅行は、触媒的な刺激を受ける時間として重要です。

 

膨大な情報が脳に入力されているといっても、それが自動的に知識に変換されるわけではありません。情報を知識に変えるには知的な作業が必要です。

 

脳の中にテーマ別のフォルダーを用意する

私達は情報の洪水の中に生きています。ただ、その溢れるばかりの情報洪水から自分にとって有効な情報を獲得するには、頭の中に情報収納の枠組を用意する必要があります。

 

まず、自分自身の興味と必要な情報を、強く認識していることが重要です。そうすると脳の中にそのタグが付いたファイルフォルダーが用意されます。するとテレビ、新聞、雑誌、書籍、会話、会議そしてWEBの中の価値ある関連情報に対する感度が高まります。独自の関心で設定したフォルダーを脳の中に持つことで、情報洪水の中から有用な情報を効率的に収集できます。新聞や雑誌をめくっていても、記事のほうから声を掛けて来る感じです。本や原稿を書こうとして準備している期間は、この頭の中の関連項目のフォルダーがきちっと用意されているので、驚くほどインターネット、新聞や雑誌やテレビからの情報が生き生きと入って来るのを実感します。出会った情報は、速やかにリアルのフォルダーに収納します。今はEvernoteのようなソフトウェアが利用できます。

 

ただ、そのまま放っておいても知識になることはありません。いつしか消えてくるだけです。頭の中のフォルダーは、情報をせき止めているだけです。ですから、ある程度溜まったら、中を分析整理して構造化する作業が必要です。この作業で情報が知識に変換され、脳の中に応用可能な状態で長期保存されます。あくまで私の認識ですが。

 

特に雑誌や新聞の情報は、日々のニュースを追っているため、時間とともに流れているだけです。加えて1つのテーマについて、複数の視点で報道されます。ですから、あるところでせき止められた情報を分析して、自分の認識という知識に変える必要があります。特に最近はニュースもネットでの情報が多く、きちっとしたメディアの情報でないため結果的に偽ニュースもあります。ますます自分で情報を分析・編集する能力が重要になっています。ブログは要注意です。個人の見解ですから。

 

私は、ニュースは極力デジタル情報で収集し、 Evernoteというソフトウェアに収納しておきます。そして月に1度くらい特定のテーマについて全体を俯瞰的に読み、補足すべき情報を再収集し、編集して、俯瞰工学研究所の俯瞰メールという形で発信しています。情報発信のために作業しているわけではなく、自分自身の情報を知識に変換する作業です。それをメールマガジンの読者と共有しているわけです。ご興味ある方は俯瞰工学研究所のホームページの右上から申し込んでください。

 

本を選んで精読する

きちんとした書籍は、すでに著者が情報を構造化して知識に変換してありますから、直接知識を獲得することができます。しかし、ただ流し読みでは知識として獲得できない可能性があります。断片的な情報の収集になってしまうでしょう。とすると、もう一度知識に変換しなければなりません。たくさんの本を読んでいてもアウトプットが少ない人がいます。

 

知識を獲得するためには精読が必要です。私は蛍光ペンを持って読書し、知識として獲得すべき部分はマークします。脳にこれは知識だというメッセージを送る気持ちです。そして内容の要約をします。そして先に述べたメールマガジンの「俯瞰の書棚」に書きます。書評の部分はわずかで要約が大部分です。これも書籍から得られた知識を脳に固定するためです。現在はKindleで読書しますから、ハイライトの機能を使います。マークした部分を抽出して、リストアップできます。紙では出来ない機能です。

 

知識を自分の脳に固定する方法はいくつかあるでしょう。そのことを人に話すと、脳に固定することができると思います。口に出して言ってみる、これが効くようです。ノートに書き留めておいても、そのノートをいつ見るのでしょうか。ましてや紙のノートでは検索ができませんから、ほとんど再利用されていないでしょう。ただ大学受験で作るような整理されたノートを作れば、それを繰り返し見ることで、強く知識が固定される事は多くの方が体験済みです。

 

知識を構造化して出力する

原稿を書くという作業は、まさに知識の構造化です。そして改めて追加の情報収集と分析が必要になります。特定のテーマに沿った情報を集めることになりますから、この過程では情報は質の高い知識になります。収集しておいた情報も、この時に活用できます。 Evernoteに収納されている情報は、Googleの検索でもひっかかります。これで埋もれていた情報も活用できます。

 

講演のためにプレゼンテーションを作りますが、これも強力な情報の分析・編集作業になります。プレゼンテーションは図表やグラフを使いますから、数字で記述された知識も頭に入ります。プレゼンテーションの作成は、情報の収集、分析、編集という情報を知識に変換する知的作業です。

 

ワードで原稿を書くとき、アウトラインの機能を使って原稿の基本構成を作り、それをさらにもう1段展開して、その項目で原稿を書いていくと、論理的で構造化された文章になります。卒業論文や修士論文では必須の技法です。

 

私はその上で、あえて印刷して紙でチェックします。パソコンの画面を離れることで、追加や修正の気づきが出てきます。少なくとも数回は、これを繰り返します。別な場所に脳を移動すると違った発想が出てきます。

 

パワーポイントのスライドも、アウトライン機能でプレゼンテーションの流れをチェックすると論理的な構成ができるとともに、論理展開の不連続点が判り、追加すべきスライドが見えてきます。その上でスライドショーの機能で何度もチェックすると、言葉を始めとして修正のポイントが見えてきます。知識が強く固定されます。なぜかスライドショーでは、それまで気づかなかったものが見えてきます。

 

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◆編集後記◆

●猛暑の都会から避難する避暑の必要性が高まりました。

●トランプ大統領を支援する人達は、まだ地球温暖化は虚構と信じているのでしょうか。進化論を否定する人達ですか。

●欧州が混乱して、米国と対立関係になり、国際政治に対する影響力を失っています。シリアは、ロシア主導で内戦前のアサド政権の統治になります。トランプ政権は黙認です。

●中東の情勢は異常です。チキンレースが、ゲームではなくリアルになるリスクがあります。

●北朝鮮はしたたかです。核実験をしない、実験場を破壊、ICBMの実験をしない、発射場の解体、朝鮮戦争の遺骨返還をやりました。しかしICBMの生産、核燃料の生産はします。

 

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◆内容・記事に関するご意見・お問い合わせ/配信解除・メールアドレス変更は下記までwebmaster@fukan.jp

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◆俯瞰MAIL81号(2018年8月8日)

発行元:一般社団法人俯瞰工学研究所

発行人:松島克守

編集長:松島克守

配信人:石川公子

URL:http://fukan.jp

 

 

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