俯瞰メルマガ79号 2018年6月2日発行

 

◆時候のご挨拶◆

梅雨の季節になりました。この季節は夏です。気がつくと夜明けが早く、帰宅時の夕刻が明るいですね。 6月が終わり7月になると日が短くなり、 1年の残りがだんだん短くなるのが寂しくなります。年々時の経つのが速く感じられるのは、老化現象でしょうか。 

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目次

●世界がかたずをのむ米朝会談

●国際社会のルールを破壊するトランプ大統領

●日本社会の加齢臭

●今年も東大の俯瞰ゼミ

●第55回俯瞰サロン(6月14日)

●俯瞰のクッキング“油について”

●俯瞰の書棚 “大正=歴史の踊り場とは何か”

●俯瞰学のすすめ12 最終回

●編集後記

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◆世界がかたずをのむ米朝会談◆

予定通り6月12日に米朝首脳会談はシンガポールで開催することが決まりました。

気になることがいくつかあります。まずプロセスの始まりだといい、第一回目の米朝首脳会談では決定的な合意がなされない、それを米朝会談の失敗と言わせない予防線かもしれません。複数回の首脳会談のプロセスで11月の中間選挙にアピールする成果を引き出すのでしょうか。

 

複数回というのはもともと北朝鮮の時間稼ぎの戦術ですから、功を焦るトランプ大統領はすでに敵の術にはまったのか。多分、今現在も核兵器とICBMを国内の地下深くに隠蔽する作業をしているでしょうから。

 

“トランプ氏は、非核化受け入れ後の北朝鮮への経済支援について、近隣の日本や韓国、中国が支援するだろうと述べ、「米国が支出する必要はない」との認識を示した。”という報道があり、日本に巨額の経済支援をさせるつもりのようです。

 

イギリスの投資顧問会社の試算によると日本の負担は5,000億ドルとのことです。これは10年間にならすと日本のGDP 7.3%ということですから、とんでもない額です。むろんアメリカが全額負担する義務はありません、東アジアの情勢を見れば、たとえ北朝鮮が非核化されても日本の防衛費用は減る事はありません。追加負担です。

 

日本の世論から見れば拉致問題の解決が前提の前提ですが、さあどんな話なるか、かたずをのんで米朝首脳会談を見守るしかありません。

 

12日に米朝首脳会談=予定通り開催、トランプ氏言明-正恩氏の親書評価

https://www.jiji.com/jc/article?k=2018060200137&g=use 

北朝鮮非核化の費用はどの国が負担?日本の負担金はいくら?——英投資顧問会社が試算

https://getpocket.com/a/read/2207374480 

 

 

◆国際社会のルールを破壊するトランプ大統領◆

ともかくトランプ大統領は、自分の支持層に対しアピールするトランプファーストで、国際社会が時間をかけて築いてきた国際社会のルールを次々と破壊しています。国際社会の安定や戦争回避など、全く気にしていません。パリ協定離脱など国際社会と人類が共有する環境問題に関する認識も無視です。

 

時間をかけてやっとまとめたTPPもあっさり離脱し、最近ではEUやカナダ、メキシコ、日本といった同盟国にもトランプファーストでWTO違反です。WTOはアメリカ主導で創設されたものですが。

 

中国とは、安全保障による貿易制裁も通商交渉のカードに使うという、理不尽な交渉です。

アメリカ大使館のエルサレム移転、イランの核合意からの離脱は、本当に危険な火遊びです。ともかくイスラエルとイランは直接爆撃やロケット砲での交戦をしている最中ですから。欧州諸国もイラン核合意離脱について必死で説得しましたが、全く聞く耳を持たない状態です。結果として欧州とアメリカは信頼関係を失いつつあります。

 

加えて欧州は、イギリスのEU離脱に端を発して求心力を失い、東欧諸国もEUの規律を守らず、イタリア、スペインなどでEUに批判的な政治勢力が力を増し、この先ユーロからの離脱ということもありえます。

 

難民はともかく、 EUが求める財政規律を無視したバラマキの政策が実行されれば、世界の金融市場に大きな混乱が及ぶ事は必至です。すでにアルゼンチンをはじめとした南米でも金融は大混乱です。

 

日本も、年金をはじめとした社会福祉のコストも増大が差し迫っているにもかかわらず、財政再建の議論があまりにも少なすぎます。少子化の中で財政再建をし、次世代に大きな負の遺産を残さないことが、緊急課題です。負の遺産の中で貧しい生活を強いられると、将来の日本でも過激な政治勢力が力を増す可能性もあります。

 

森友問題と加計問題で時間をつぶしている国会も、どうしようもないです。このやりきれない気持ちは、多くの人たちが共有していると思いますが。

 

5つの影響 米のパリ協定離脱

http://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-40128839 

トランプ政権 TPP離脱を表明

https://www3.nhk.or.jp/news/imasaratpp/article15.html 

5分で分かる米国抜きの新TPP

https://jp.reuters.com/article/column-redesigned-tpp-idJPKBN1DF09S 

イスラエル、米大使館移転控え記念式典 多数の国が代表派遣見送る

https://jp.reuters.com/article/israel-jerusalem-idJPKCN1IF01I 

トランプ氏の大使館エルサレム移転、和平のためではなく なぜか

http://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-44121374 

トランプ大統領、イラン核合意からの離脱を発表 欧州説得実らず

http://www.bbc.com/japanese/44049644 

トランプ大統領の自動車関税計画、共和党の重鎮上院議員らが非難

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-05-25/P997JG6KLVRF01 

米中首脳ZTE制裁緩和合意 米議会反発「甘い」

https://mainichi.jp/articles/20180527/ddm/008/020/118000c 

米中貿易摩擦と日本の役割https://www.huffingtonpost.jp/nissei-kisokenkyujyo/trade-20180508_a_23428588/ 

 

 

◆日本社会の加齢臭◆

財務省の公文書改ざん、日本大学のアメリカンフットボールの事件、その前のレスリング協会、相撲協会の一連の事件や、東芝不正経理や川崎重工の新幹線台車、素材メーカの検査の偽装といったことを俯瞰的に見ると、そこに日本の社会の加齢臭が感じられます。この20年、成長から取り残されたばかりでなく、日本は加齢の中で芯の部分で腐ってきたものがあると感じます。 

 

過去の延長で発想する改善に埋もれて、世界のイノベーションに取り残されました。現在の利権を前提とした規制緩和では、社会が進化しません。

 

経済界も、依然として古い製造業の集団である経団連が主導する旧態然とした世界です。

 

政治家の世界でも、自民党はほとんどの政治家が「政治が家業の人たち」ばかりです。基本的にはそれをよしとしている選挙民が悪いのですが。停滞と格差固定が日本を芯から老いさせています。

でどうする。やはり若い人が終身雇用で安全を求める人生ではなく、自分自身の才能や努力で新しいビジネスを拓き、成長し、そして連携して新しい経済、社会を作っていくしかありません。しかし、将来に夢を持てない現状が、その足を引っ張っているのでしょう。

 

現役の学生と接していますが、その中では新しい方向を感じさせるものがあります。大企業ではなくベンチャー企業に就職する学生、ベンチャー企業を起こそうとする学生がだんだん増えてきました。成功例がいくつも出ていますので、 いい方向に進む期待も持てます。

 

 

◆今年も東大の俯瞰経営学のゼミ◆

今年も本郷の大学院で俯瞰ゼミをやっています。定年から10年経ちました。単位がつかない俯瞰経営学のゼミを今年もやっています。約30名です。目的は「知的腕力」を鍛えることです。結果としてビジネスリテラシーがついてきます。知的腕力とは、情報の収集、分析、編集を短時間で高い水準で出来る能力です。

 

マーケティングの課題を3回やり、6月の第一週はファイナンスの課題の3つ目の課題です。マーケティングはマーケティング1.0とマーケティング2.0で1回、マーケティング3.0で1回です。ファイナンスは有価証券の見方、企業価値の算定、そしてM&Aの3回です。

 

この後はテクノロジー、技術開発戦略、リーダーシップ、人事管理、戦略論、経営学などの課題が続きます。夏学期の間に14の課題を消化します。例年のことですが、6月なるとぐっと力をつけていきます。このゼミをやっていると、日本の将来あまりに不安を感じません。教師という職業の特権でしょうか。授業参観も可能です。

 

 

◆第55回俯瞰サロン(6月14日)開催案内◆

矢野和男さんに聞く「加速度センサで、ヒトの幸福感を測る」

 

矢野和男(やのかずお)さんは、『データの見えざる手 ウェアラブルセンサが明かす 人間・組織・社会の法則」』(草思社 2014.7)、『「データの見えざる手」がオフィスの生産性を高める』(DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー論文 2015.3)で知られるAI、センサ、ビッグデータの研究開発の第一人者でいらっしゃいます。

「幸せ」は、ヒトが「大事なこと」に挑戦するための精神的な「原資」であるとして、ヒトのハピネス(幸福感)を測りAIと組み合わせることで、ヒトや社会の幸福を高めるヒントを提供するサービス・システムを開発されています。

 

<講師プロフィール>

株式会社日立製作所 理事 研究開発グループ 技師長 博士(工学)

1984年早稲田大学物理修士卒。日立製作所入社。2003年頃からビッグデータの収集・活用技術で世界を牽引。論文被引用2,500件、特許出願350件。人工知能からナノテクまで専門性の広さと深さで知られる。現在、研究開発グループ技師長。

著書『データの見えざる手』(草思社)は2014年のビジネス書ベスト10(Bookvinegar)に選ばれる。IEEE フェロー。

 

■日 時: 2018年6月14日(木)18時30分より(18時受付開始)

■会 場: 品川インターシティ会議室

      東京都港区港南2-15-4

■参加費: 講演会のみ 1,000円 懇親会 3,000円

      当日、受付にて申し受けます。

■定 員: 50名程度

    (定員になり次第、申込みを締切ることがあります)

■懇親会:講演終了後に懇親会を開催します。

★お申し込みは、下記の専用サイトからお願いいたします★

https://ssl.form-mailer.jp/fms/069936a3569554

※日程・内容は予告なく変更されることがありますので、俯瞰研のHPにてご確認ください。http://fukan.jp

 

 

◆俯瞰のクッキング “油について” ◆

このメルマガで何度か取り上げていますが、食の油についておさらいをしておきましょう。

 

食用油は、大きく分けると飽和脂肪酸と呼ばれる常温で固体の脂質すなわち動物性の脂肪と、不飽和脂肪酸と呼ばれる常温で液体の植物油があります。この不飽和脂肪酸の中に必須脂肪酸と呼ばれる体内で作られない脂肪酸と、体内で作られる脂肪酸があります。

必須脂肪酸はオメガ6系のリノール酸、ほとんどのサラダオイルがこれです。そしてオメガ3系のDHA、EPAという魚の油とαリノレン酸を含むエゴマ油やアマニ油という植物油に分かれます。

 

植物油は健康的と言われてきましたが、単純ではありません。結論からいうと大部分の人は、サラダオイルのオメガ6系のリノール酸を取りすぎて、オメガ3系のDHA、EPAという魚の油とαリノレン酸を含むエゴマ油やアマニ油の摂取が足りません。αリノレン酸を含むエゴマ油やアマニ油は体内でオメガ3系のDHA、EPAに変換されると言われていますが、オメガ6系のリノール酸を取りすぎると、この変換が妨げられるようです。

 

ですから取り過ぎても問題のない、加熱にも強いオリーブ油をサラダオイルの代わりに使うことが勧められています。その有効性は地中海食という健康食でも広く証明されています。オリーブ油はオメガ9系のオレイン酸でカロリーという点を除けば摂取そのものに問題はないとされています。

 

といっても炒めものはともかく、オリーブ油で天ぷらというわけにはいきませんね。高価ですから。市販のサラダオイルはほとんどリノール酸ですが、品種改良された最近のひまわり油は、オレイン酸80%、リノール酸8%と組成がオリーブ油に近い上に特に匂いもありませんから、サラダオイルとしてこれを利用されたらいかがでしょう。品種改良された紅花油もこれに近いですね。また品種改良された最近の菜種油もこれに近いです。

 

ではオメガ3系のDHA、EPAという魚の油ですがどんな魚を取るべきか。

この俯瞰メール37号で紹介しましたが、それをもう一度。

多くは頭や内臓、皮にありますが、殆ど捨てられていますから、可食部の含有量で比較した情報が日本食品脂溶成分表というものにあるようです。

 

EPAとDHAの多い魚は(可食部100gに含まれるmg)

マイワシ     EPA 1381 DHA 1136 計2517

本マグロ(トロ) EPA 1288 DHA 2877 計4165

サバ       EPA 1214 DHA 1781 計2995

マダイ      EPA 1085 DHA 1830 計2915

ブリ       EPA  899 DHA 1785 計2684

サンマ      EPA  844 DHA 1398 計2242

サケ       EPA  492 DHA  820  計1312

アジ       EPA  408 DHA  748  計1156

 

圧倒的に多いのは本マグロのトロですが、これはあまり口に入りませんね。赤身になるとガックリ下がります。あとの魚種、カレイ(計412)、ヒラメ(計284)、マグロの赤身(計142)・・は、かなり落ちます。鮭はこれとは別に強力な抗酸化成分のアスタキサンチンがありますから、積極的に食すべき魚です。特に紅鮭は養殖がなく天然ですから、養殖魚の抗生物質のリスクがありませんね。

 

私は、結果として通年売り場にある天然のブリとイワシが多いですね。天然のタイもよく食べます。秋は秋刀魚が多いです。養殖魚はエサや薬が見えませんから避けています。むろん天然魚も海洋汚染や食物連鎖で安全とはいえませんが。

 

現在の我が家の油は、サラダオイルとしてひまわり油、炒め油としてオリーブ油、αリノレン酸としてアマニ油を手作りの野菜ジュースに大さじ1杯程度入れて毎朝食しています。

 

舌平目のムニエルになるとバターも使います。香り付けとして胡麻油も使います。

よく知られている事ですが、マーガリンは摂取していけない油ですから、植物性で健康的という知識は捨てて、冷蔵庫にマーガリンがあれば、それも捨てたほうがいいでしょう。

 

油のタイプ知り上手に摂取 リノール酸の取りすぎ注意 週3、4回…

https://getpocket.com/a/read/1413919891 

必須脂肪酸とは?種類、メカニズム、摂取方法、注意点などを徹底解説!

https://getpocket.com/a/read/1299150379 

 

 

◆俯瞰の書棚 “大正=歴史の踊り場とは何か”

今回は「大正=歴史の踊り場とは何か 現代の起点を探る」 鷲田清一編 講談社選書メチエ 2018です。

この本はごく最近出版された本ですが、 Amazonでたまたま見つけてすぐ買いました。影が薄い大正という時代に興味を持っていたからです。 1912年から1926年というわずか14年間です。この時代は第一次世界大戦の前後の時代で、ヨーロッパが激変した時代です。

 

第一次世界大戦の結果、オーストラリア帝国、ロシア帝国、ドイツ帝国、オスマントルコというヨーロッパを支配していた大帝国が崩壊し、ロシア革命という共産主義革命が起こり、ヨーロッパでも民主主義が高まりを見せ、それと同じくして日本でも普通選挙の要求が起こり、第一次世界大戦後の処理を誤り世界は第二次世界大戦へと突入していく時代です。

 

明治維新以来富国強兵を唱え、貪欲に欧米の技術を輸入してきた日本は、アメリカ、イギリスと日本の三国で海軍軍縮条約を締結するという列強の一角にのしあがり、富国強兵という悲願を達成した時代です。

 

まさに大正という事態は「坂の上の雲」の雲の中に入った時代です。また明治維新以来貪欲に吸収してきた西洋文化が、日本文化に一定程度定着し浸透していった時代です。日本社会に「西洋」が移植された時代です。

 

そして大正12年すなわち1923年の関東大震災によって、江戸時代からの東京の街は焼失し、欧米と同じ建築が中心部を形作っていった時代です。東京大学の安田講堂を中心としたキャンパスも、レンガ造りのヨーロッパの大学の形式になりました。

その大正時代はどんな時代であったのか、わずかの写真や映画では知ることができません。この本は、その大正という時代の社会や人々の変化を考証して議論していると思います。内容を目次で紹介しておきましょう。

 

序 踊り場の時代に可能性を問う  山室信一 

第一部 現代の起点としての「大正」   

■学区 コモンの成り立つ場所  鷲田清一   

■民生 生存権・生活権への出発  山室信一   

■震災 言葉の崩壊から新しい意識へ  佐々木幹郎   

■趣味・娯楽 民衆文化再編成への胎動  渡辺 裕  

〔踊り場の光景〕

ガール  山室信一  

化粧・衣裳  佐々木幹郎

正調  渡辺 裕  

〔時代を読む視点〕

公設市場  新 雅史  

二重国籍  堀まどか  

観衆  五十殿利治  

鎮守の森  畔上直樹 

 

第二部 踊り場としての「大正」   

■サラリーマン・職業婦人・専業主婦の登場  山室信一   

■校歌 替え歌の文化が結ぶ共同体  渡辺 裕   

■民衆と詩 文語詩から口語詩への移行  佐々木幹郎   

■地方 学 「 地方」と「 地方」そして「郷土」への眼差し  山室信

〔踊り場の光景〕

文化生活と生活改善  山室信一  

人形  佐々木幹郎  

公園  渡辺 裕  

自由と責任  鷲田清一    

〔時代を読む視点〕

1924年の海戦  やなぎみわ  

結社  佐佐木幸綱  

ミュージックスに託す夢  徳丸吉彦  

座談  鶴見太郎 

消された「社会の踊り場」──結びにかえて  鷲田清一

 

本書の最後に、6年にわたる議論の中間報告とありますが、目次でご覧のように、特に構造化された構成にはなっていません。目次を見ると、色々な人が色々な視点から大正という時代を改めて考証、観察し分析を試みているようです。

 

本書では■のトピックスが主要な論考で、〔踊り場の光景〕が社会や時代の文化の観察のエッセー、そして〔時代を読む視点〕は著者の視座を明らかにした論考のように考えますが,これに関して何も記述がありませんから私の勝手な認識です。

内容について論評はできませんが、ほんの一部内容を紹介すると、

[震災]に、“谷崎潤一郎(当時三七歳) は「しめた、これで東京がよくなるぞ」と喜んだ。しかし二人とも昭和初年代になってから、震災によって江戸文化の余映が消滅したことを悲しんでいる”という記述があります。もう一人は永井荷風です。これも興味深い話です。

 

〔踊り場の光景〕正調では“もともと自然のなかで歌われていたものに手を加えて洗練し、都会人にも歌えるようにしたのが「正調」だ”,“地方に残る日本の「本来」の文化を求めてゆこうとするベクトルと、そこにさらに都会人にも通じる普遍性を付与してゆこうとするベクトルとが、微妙なバランスを示しつつ混在していた。「正調」は、まさにそのようなあり方を一身に引き受ける概念だった”

 

〔踊り場の光景〕文化生活と生活改善では“「文化腰巻」「 文化鍋」「 文化庖丁」「 文化住宅」「 文化アパート」「 文化村」「 文化生活」などの流行に見られるように、内容空疎な事物がもてはやされた軽佻浮薄な大正という時代の風潮を特徴づける言葉として、当時も、そして現在でも受け取られている”、「文化生活」については“「・吾人の生活を旧来の形式より脱し近代的の科学を応用し且つ芸術味を豊かにする生活。・新らしがりをのみ喜ぶ皮相的な西洋かぶれの生活」”、“「 自由恋愛」「 自由学園」、あるいは「 自由画」「 自由作文」「 自由詩」「 自由劇場」が文化運動の標語となっていった”といった記述があります。

 

[結社]では“結社は短歌界の若返りに大いに役立ったのだった。 短歌結社は、明治末から大正時代に一挙に数が増える。「アララギ」「創作」「詩歌」「水甕」「国民文学」「潮音」「多磨」等が次々にスタートした。一般的には会員数は二〇〇〇人以内だが、全盛期の「アララギ」は一万人を越える会員を擁したといわれている”

 

理系ビジネスマンの私は、知識の構造化、言明を書籍に求めてしまいますが、本書の世界の方々は違う世界の住人だと思いました。

 

 

◆俯瞰学のすすめ12 最終回 なぜ俯瞰学かのまとめ◆

俯瞰学とは、目の前に雑然と存在する情報の中から意味ある情報の関連性を抽出し、状況の正しい認識やそれに伴う行動へと繋げる技法である。

なぜ、今、俯瞰学か。1995年以降パソコンが普及し、それがネットワークにつながることによって、発信される情報が爆発的に増えた。そしてその情報がさらに新たなる情報発信を亢進する。加えてスマートフォンに代表される携帯情報端末は、さらに情報の爆発と共有を革命的に加速させている。共有される情報の全体は、巨大で全貌は誰も把握できない。また書籍、記事、研究論文のような論理的に構造化された情報も爆発的に増加している。情報に溺れないために俯瞰学という技法が必要だ。以下、これまでの連載を纏めてみた。

 

地政学による俯瞰

地政学、すなわち、地理と政治や軍事との関係性による俯瞰は、国際的な緊張や紛争を正しく認識するために有効である。最近ではGoogle earthを使うと、いろんなことが見えてくる。俯瞰学の原点は「鳥の目」である。

 

時系列による俯瞰 

長期的な時系列データは、日常的な狭い視野で失われていた大局的な事実を再発見させ、現在を正しく再認識させてくれる。日本経済について、様々な解説がされているが、1956年から2012年までの経済成長率の時系列データを見ると、日本経済に3つのフェーズがある。石油ショックまでが第一フェーズ、バブル崩壊までが第二フェーズ、そして現在は第三フェーズにあることがわかる。

 

統計学による俯瞰

時系列データも統計学を使って分析すると、俯瞰的な認識が深まる。単に情報をグラフとして見える化による認識よりはるかに高度な俯瞰的認識が可能となる。ビックデータの分析も統計学の俯瞰である。

統計データを地図上にマッピングして全体像を理解するという方法は新しくはないが、数表を直接読むよりはるかに俯瞰的な理解ができる。ただ単に地図上にデータを色で表示するだけでなく、面積や距離でデフォルメしたカルトグラムは色々な俯瞰的な理解を与えてくれる。

 

歴史学による俯瞰 

「現在」が作られた時代を歴史的に俯瞰してみよう。産業革命で先行した英国に対し、新興勢力のドイツが国力をつけ、新世界のアメリカも国力をつけていた。1900年にはすでにアメリカは工業生産では英国を凌駕しており、ドイツも英国には及ばないもののそれに近い工業生産をしていた。そして19世紀末から20世紀初頭にかけて、現在も存続するグローバル企業が続々と設立されている。

 ドイツでは19世紀の後半から20世紀に至る間に、電機のシーメンス、化学染料のヘキスト、アスピリンのバイエルそして化学のBASFなどが設立された。鉄鋼と兵器のクルップはこれに以前に設立されている。自動車のダイムラーとベンツもこの時代に設立された。アメリカではこの時期GE 、ダウケミカル、 AT&Tが設立されている。火薬製造のデュポンはもっと以前に設立されている。そして20世紀に入るとUSスチール、フォード、 GMが設立されている。ボーイングもこの時代の設立である。実は日本の明治維新は1868年で1871年のドイツ帝国の成立より先んじている。日本の大企業もこの時代に創設されている。

ドイツの台頭は第一次世界大戦を引き起こし、その終結で巨大な帝国が四つ崩壊した。この結果、多くの国々が独立したが地政学的には均衡がとれたわけだけではなく、むしろ不安定な状態になっていった。この時代に形成された地政学的な世界はすでに存在しないがこの時代に形成された国際社会は「現在」の基層となっている。

「現在」のひとつ前の世界は第二次世界大戦の終結から始まる。ヤルタ会談そしてポツダム宣言で第二世界大戦は終わるが、その瞬間から東西の冷戦が始った。冷戦に対処するため、ヨーロッパの復興を推進するマーシャルプランが始まり、NATOも創設された。

戦争中の英国の三枚舌外交の結果、イスラエル建国とそれに反対するアラブ諸国の間で第一次中東戦争が勃発し、その後2回の戦争を経て現在も平和解決は遠い。

中国では蒋介石の国民党政権が毛沢東の中国共産党に敗北し、台湾に逃げ込み、中華人民共和国が成立した。

 

歴史の俯瞰で見えた「現在」の世界

「現在」の世界は1990年から始まった。そして2000年前後で変曲点があった。1990年にドイツが再統一し、1991年ソ連が崩壊し冷戦が終結した。 日本ではバブル崩壊し、今日までデフレと低成長の時代が続く。 1992年に鄧小平が南巡講話を始め資本主義的な成長を主導した。そして世界第二の経済大国になった。

1994年には1つのヨーロッパを目指してEUが発足した。いま話題のNAFTAもこの年に成立した。

産業界ではAmazonが設立され、スティーブ・ジョブスがAppleに復帰した。1995年にはWindows95が発売されインターネットの普及が進んだ。そして1998年にはGoogleが設立された。現在シリコンバレーで世界経済を牽引するメンバーが始動した。

GAFMAと呼ばれるGoogle、Apple、Facebook、Microsoft、Amazonを合わせた時価総額はゆうに300兆円を超えており、英国のGDPを超える。

一方アメリカ製造業のリーダーであるGEは30兆円に満たず、日本最大のトヨタも18兆円である。GAFMAが産業界の主役になり、1900年前後に創設された企業は退潮し、産業構造は完全に改新された。即ち、アメリカでもGE、GM、IBM、HP、コダック、ゼロックス・・・という旧い企業は淘汰された。日本の産業構造はソフトバンクを除けば、旧いままで現在に至る。日本は1990年から2010年の産業革命の不連続的な変化についていけなかった。これが「失われた20年」である。

 

記事から俯瞰をする

目の前に雑然と存在する情報の一つが、新聞記事や雑誌の記事であるが、特定の視座があれば重要な情報を抽出できる。日々飛び込んでくるニュースを単独の記事ではその意味を理解しようとしても難しい。関心のある特定のテーマについて、記事をまとめて一度に読むと時系列的な変化や相互の関係性が見えてくる。あえて一度堰き止めて、時系列的な変化や相互の関係性を分析する技法である。

雑誌や新聞の記事ではないが、 NHKのBSのドキュメンタリーは連続何回かで放送されるが、なかなか毎回続けて視聴することは難しい。録画しておいて数回の連続を一度に見ると全体が頭に入る。

 

そして未来を俯瞰する

未来を俯瞰することは非常に重要である。単なる未来予想では無く、思い込みでもない俯瞰的な認識である。実は、近未来については予測しなくても“既に起きている未来”を認識すれば、それは「未来の俯瞰」になる。今ではいえば人工知能、自動運転、EV、IOT、ブロックチェーン、ドローン等である。これらを俯瞰的に理解すれば2020年以降の世界が見えてくる。

この「未来の俯瞰」は今現在何をすべきか、何を選択すべきか、という意志決定に欠かせないので極めて重要である。これ無しに企業の中期計画などあり得ない。現在の外挿では変革の時代に敗者になる。

繰り返すが、俯瞰学とは、目の前に雑然と存在する情報の中から意味ある情報の関連性を抽出し、状況の正しい認識やそれに伴う行動へとつなげる技法である。といっても技法が体系化されているわけではなく私が普段やっている事を紹介しただけであるが、ご参考になれば幸いである。

 

この記事は「産業新潮」に連載された記事を少し手直ししたものです。文体もメルマガとは異なります。

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◆編集後記◆

●米朝首脳会談は検証可能で、不可逆的な核放棄であれば、まさに歴史的な快挙でノーベル平和賞でしょうが、予断を許しません。

●アメリカが時間をかけて築いてきた国際社会の信頼と影響力を、いとも簡単に毀損し、自分の支持基盤に実績をアピールしようとしているトランプ大統領ですが、国益を毀損し支持者以外に多大な負担を強いる行動は、国民から指弾されるでしょう。

●中東の火遊びは本当に危ない。あの地域の地勢が完全に流動化してしまった。IS亡き後の危険勢力はアメリカになってしまった。

●一つの嘘が百の嘘に繋がることを、全国民に知らしめているのでしょうか。国会の答弁で霞が関の闇がさらけ出ました。中継を見ていると何か憐れみを感じます。

●最近つくづく感じるのは、G2の時代、米中の冷戦構造、そしてアジアにおける中国の覇権の確立です。日本も南シナ海について沈黙しています。日中関係改善という実利をとるのは、やむをえませんが。

●通信技術、スマートフォン、EV、AI・・次々と日本企業が中国企業の背中を追う時代になりつつあります。

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◆内容・記事に関するご意見・お問い合わせ/配信解除・メールアドレス変更は下記までwebmaster@fukan.jp

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◆俯瞰MAIL 79号 (2018年6月2日)

発行元:     一般社団法人 俯瞰工学研究所

発行人:   松島克守

編集長:   松島克守

配信人:   石川公子

URL:      http://fukan.jp

 

 

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